トワイライト
黄昏の光。
彼女の第一印象はこの一言に尽きる。
花の薫りを纏わせ靡く髪は赤々と燃え、光り輝き
竜族特有の黄金の瞳は彼女の存在感を引き立たせ、こちらが可哀想にと愛でる必要など無いような、好戦的な色を放っている。
(…とんだ野花だな。)
「…姉上、お待たせしました。そちらに居られるのが竜国の姫君ですか?」
「まぁエドウィン!!ようやく来たのね!!私もリオナも待ちくたびれてしまったわよ?」
ふくれる姉上は俺の4つ上だとは到底見えない。
人形のようにただ黙っている隣の姫君の方が、歳上のように思えた。近くで見ると頭1つ分違うためか瞳が少し隠れてしまっている。
「すみません姉上、ランスロットからの報告を受けておりましたので。…ところで姉上、早く僕にそちらの美しい姫を紹介してくださいませんか?」
俺の称賛に眉をピクリと動かした姫君は、何処か嫌悪感のようなものを漂わせている。
…ちゃんと感情はあるのか。
というかなんだコイツ。誉めてやったんだろうが。
「…それもそうね…こほんっ!!こちらに居るのが、竜国の姫君リオナ=ドラグーン、リオナ姫よ。ほら、リオナ、この子が話してた私の弟兼、貴方の婚約者よ。エドウィンっていうの、仲良くしてあげてね。」
俺の紹介の適当さに、顔がひきつるかと思ったが、長年鍛え上げた表情筋は耐えることができた。
俺の斜め後ろから笑いを噛み殺しているような音が聞こえる。
発生源はどうせ、庭園の入り口に立って警備しているデュークとロランであろう。
(…あの色欲魔と無気力中年が。)
「……エドウィン=フォン=ラグナロクと申します。出逢えて嬉しいです。黄昏の光かと見間違うほどの輝きですね。」
優しく微笑んで姫の様子を伺う。
…と、先程よりも益々歪めて睨み付けているではないか。ようやく見ることのできた瞳がこの表情では魅力半減である。
なんだこの顔は。
初対面の相手に、しかも一国の王子でこれから婚約するかもしれない相手に向ける顔か?
脳内でピシッと何かにヒビが入るような音が聞こえる。
隣の姉上はニコニコと微笑み、俺と姫を交互に見ているだけで、何も言わない。
早くも会話が途絶えそうになり、何か話さなくてはと口を開きかけた瞬間、姫の表情が一変して笑顔になった。
…国が滅びたことによる情緒不安定か?
「あの、姫ぎ」
「わたし、アンタ嫌いだわ。」
…………………ア“ァ?
今何て言ったこの女。
昨夜立てた脳内計画が、ガラガラと音をたてて崩れて苛立ちとともに散らばっていく。
『ぶふぁっ!!…っくく』
今度こそ堪えきれなかった笑い声が3つ、盛大にぶちまけられた。
…姉上まで笑うとは。本当何なの腹立つ。
休みが今しか無いので、今のうちに更新。
1つ1つが短いですかね…すみません。