プロローグ
※基本ラブコメ調、根底にはシリアス
初めて小説書きますので、お見苦しいところもあるかとは思いますが、よろしくお願い致します。
これから試行錯誤しながら書き進めていこうと思っているので、書きかたが変化したりしてしまうかもしれませんが、ご了承下さい。
更新は亀であります。
残酷な程澄みきった空の日、優しいあの人が死んだ。
俺が四歳の時だった。
少しの断片的な記憶と、沢山の思い出の品達で構成されている俺の中の彼女。
記憶といっても、床に伏す彼女の姿しか蘇ってこず、その姿もベットに根付いた彼女を遠目から見たものでしかない。
俺を産んでから病弱になってしまったため、近づいて話しかけることは許されなかったからだ。
長年彼女と人生を共にした家具達の方が、俺よりも記憶しているに違いなかった。
しかし、たった一度、会話をしたことがあった。
何がきっかけか、どうして近づいてしまったのか、彼女と逢わなかったこの四年間を振り返ってみたところで、分からなかった。
そうして、初めて会話をした次の日、彼女は死んだ。
俺は、そのたった一度の日のことでさえも思い出せない。
何を話し、どんな表情、声、眼差しであったのか。
棺の中で沢山の花と共に眠る彼女の顔は、あの初めて会話した時と同じなのだろうか。
王宮から続く長い列の先頭を歩きながら、厳かに行われる葬儀をふんわりと傍観したが、隣で泣く姉様のようにはなれなかった。
赤の他人である国民達のうちひしがれる様を背景にしても、肉親の俺は涙が出なかった。
床に伏す彼女の姿しか憶えていないからだろうか。
眠る彼女は遠目で眺めた姿と相違なかった。
彼女は、自分という全てが霞の彼方に逝ってしまった最期の時、苦しんでいたのだろうか。
己の身体を壊した原因である俺と会ってしまったことで、苦しんでしまったのだろうか。
それでも、あの日の彼女は優しかったはずだ。
否、優しかったことだけは憶えている。
他に彼女のことは思い出せないが、その事実だけは確信めいたものがあった。
俺の母親とは、それだけの存在だった。
だったはずなのに俺は彼女に囚われた。
寂しいからではなく、彼女の死に顔を見ても何も感じなかったからだ。
自分を産んだ実の母親が死んだのに何も感じない俺は何だ。
幼いながらに自分が気持ち悪かった。
人として、破綻しているのだろうかと。
愛していなかったのかと。
いいや、違う。そうではない。
生まれ育ってから、片時も存在を忘れたことなど無かったはずだ。
俺は彼女を、母親というものを愛していたはずなのだから。
それを証明したくて彼女の姿を探し、それと似た者を求めては優しくし、やはり違うと気づくと傷つかないように捨てた。
それらを捨てるたびに
彼女を病弱にさせたのは、
彼女を死に追いやったのは、
彼女の中から産まれ出た俺のせいだと、そう思わずにはいられない。
その想いをおくびにも出さず、吐き出しもせず、完璧なる王子を演じる俺は息をしている。
俺が止めてしまった、彼女の分の息も、一緒に。