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戦利品の花嫁  作者: 37号
2/7

プロローグ

※基本ラブコメ調、根底にはシリアス


初めて小説書きますので、お見苦しいところもあるかとは思いますが、よろしくお願い致します。

これから試行錯誤しながら書き進めていこうと思っているので、書きかたが変化したりしてしまうかもしれませんが、ご了承下さい。


更新は亀であります。

残酷な程澄みきった空の日、優しいあの人が死んだ。



俺が四歳の時だった。


少しの断片的な記憶と、沢山の思い出の品達で構成されている俺の中の彼女。



記憶といっても、床に伏す彼女の姿しか蘇ってこず、その姿もベットに根付いた彼女を遠目から見たものでしかない。

俺を産んでから病弱になってしまったため、近づいて話しかけることは許されなかったからだ。


長年彼女と人生を共にした家具達の方が、俺よりも記憶しているに違いなかった。




しかし、たった一度、会話をしたことがあった。

何がきっかけか、どうして近づいてしまったのか、彼女と逢わなかったこの四年間を振り返ってみたところで、分からなかった。







そうして、初めて会話をした次の日、彼女は死んだ。






俺は、そのたった一度の日のことでさえも思い出せない。

何を話し、どんな表情、声、眼差しであったのか。



棺の中で沢山の花と共に眠る彼女の顔は、あの初めて会話した時と同じなのだろうか。





王宮から続く長い列の先頭を歩きながら、厳かに行われる葬儀をふんわりと傍観したが、隣で泣く姉様のようにはなれなかった。


赤の他人である国民達のうちひしがれる様を背景にしても、肉親の俺は涙が出なかった。




床に伏す彼女の姿しか憶えていないからだろうか。

眠る彼女は遠目で眺めた姿と相違なかった。




彼女は、自分という全てが霞の彼方に逝ってしまった最期の時、苦しんでいたのだろうか。


己の身体を壊した原因である俺と会ってしまったことで、苦しんでしまったのだろうか。


それでも、あの日の彼女は優しかったはずだ。

否、優しかったことだけは憶えている。

他に彼女のことは思い出せないが、その事実だけは確信めいたものがあった。








俺の母親とは、それだけの存在だった。







だったはずなのに俺は彼女に囚われた。

寂しいからではなく、彼女の死に顔を見ても何も感じなかったからだ。



自分を産んだ実の母親が死んだのに何も感じない俺は何だ。




幼いながらに自分が気持ち悪かった。


人として、破綻しているのだろうかと。


愛していなかったのかと。






いいや、違う。そうではない。



生まれ育ってから、片時も存在を忘れたことなど無かったはずだ。


俺は彼女を、母親というものを愛していたはずなのだから。




それを証明したくて彼女の姿を探し、それと似た者を求めては優しくし、やはり違うと気づくと傷つかないように捨てた。



それらを捨てるたびに


彼女を病弱にさせたのは、


彼女を死に追いやったのは、




彼女の中から産まれ出た俺のせいだと、そう思わずにはいられない。


その想いをおくびにも出さず、吐き出しもせず、完璧なる王子を演じる俺は息をしている。






俺が止めてしまった、彼女の分の息も、一緒に。

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