あなたに手紙を2(ティーア&エディ)
闇に慣れた眼球が徐々に室内の様子を捕捉しはじめた。玄関ホールのような場所に、ティーアたちは立っている。右手側には扉。正面には階段、そして左手側には廊下が広がっている。階段の踊り場の上にある窓はそれなりに大きなものだが、半分以上が蔦に外光を遮られている。
室内を見聞していて、ティーアはやっと気がついた。何も、この屋敷の中にいる必要はないのだと。すぐに入ってきた扉に近づき、力を加える。びくともしない様子に眉を寄せるが、何の事はない、入る時に押したなら出る時は引くものだ。そうしてティーアは大きなドアノブを引っ張ろうとするのだが、まるで最初からそんな機能は持っていなかったかのように、微塵も動かない。
「開か、ない……?」
うろたえるティーアとは対照的に、エドゥアルトはただ眉を持ち上げるのみ。何を言われてもさらりと躱してしまう普段通り。
「……閉じ込められちゃった?」
顔を上げたティーアの不安そうな顔に、エドゥアルトは彼も扉を開ける努力をするべきだと感じたらしい。立て付けが悪くて開かないドアが、女の子の力では動かないだけかもしれないのだから。
しばし彼らは大きな扉相手に格闘したが、諦めざるを得なかった。男の力でもってしても、扉は開かない。
本当に閉じ込められたのだとしたら、一体誰が、何のために。こんな人のいる気配のまったくない、屋敷に何故――。
背筋から心臓にまで寒気が届きそうだった。ティーアは、考えるべきはそこではないと思い直す。入ってきた場所から出られないのなら、他の出入り口を探すだけだ。
「どこか、他のところから出なくちゃ」
ほとんど相手の答えを待たず、ティーアは歩き出した。右手にある扉ではなく、反対側の廊下に向かう。ティーアの言い分に反対する理由はなかったので、エドゥアルトは彼女の後に従った。
「外から見た感じだと、立派な鎧戸がおろされてたけどなあ」
頑丈そうな、木で出来た板が窓には打ち付けられていた。あれは開閉するのが普通だろうが、入ってきた扉が開かないのを思えば、簡単に開きそうな気がしない。エドゥアルトの言葉を無視して、ティーアは廊下の先をゆく。
廊下は、ティーアから見て左側に窓が五つ、反対側にはドアが均等に三つ並んでいた。逐一窓を開けようと試みるものの、出入り口の扉と同じく、びくともしなかった。
おかしいと感じるよりも、ティーアは焦れてきた。暗いというだけで、彼女を落ち着かなくさせる。窓から僅かに差し込む外光すら届かない、廊下の隅に凝る闇から、今にも何かが飛び出してきそうで。
まさか、永遠にここから出られないのでは。
触れられないのにまとわりついてくる薄暗い空気と、低い気温が、ティーアに身動ぎをさせる。
「さ、寒いですね」
口にしてしまう事でティーアは更に寒気を感じるようになってしまった。心臓が脈動するより早く、手が震えてしまっている気がしてならない。
低温が理由ではないと、わかってはいた。背後にいるのはエドゥアルトと知っているのにカタンという小さな音に、ティーアは息を呑む。今の音は、エドゥアルトがいるより向こうから聞こえなかったか。気のせいではなかった。エドゥアルトは、ティーアから一歩か二歩しか離れていない。
それとも――本当にエドゥアルトは、ティーアのすぐ近くにいるのだろうか?
彼女がそうと思い込んでいただけで、背後には誰もいないのでは?
あるいは、他の誰かが――
勢いよく振り返ったティーアの目には、薄暗くともそれと分かる表情が飛び込んできた。
「寒いなら、あっためてあげようか? ヒトハダで」
口の端っこだけ持ち上げた、軽薄そうな笑みに加えて、下心のにじむ目つき。エドゥアルトの表情は、たらした釣り糸に大物が引っかかった釣り人のものだった。片手をそっとティーアの背に回して、そのまま抱き寄せようとしている。
「ふざけないでくださいっ」
一瞬でも彼がいなくなってしまった事を心配した自分が馬鹿だった。ティーアは怒気をあらわにして拳を握る。本当はそのままの勢いで蹴り上げでもしたいくらいだったが、エドゥアルトが反射的にティーアから手を離していたから、それを相手の降参と受け取り、唇をとがらせる事で我慢した。
どうせ、そんなつもりなかったくせに――。
ティーアは、あのまま抱きしめられても戸惑ったはずなのに、すぐに両手を上げて降参してみせるエドゥアルトに、不満を感じてもいた。
ちょっと踏み込むと、引いてしまう。彼はいつもそうだ。自身でそうしたのであっても、エドゥアルトはすぐに身をひるがえす。時折、ティーアにはそれがひどく……。
「それなら、飴ちゃん、要る?」
「子どもじゃないって――」
「いや、単に小腹がすいてないかと思って、だったんだけど」
何を唐突に、と思ったがまたいつもの子ども扱いかとティーアは眉を寄せる。しかし彼にもそれなりの言い分があったようで、ティーアは配達で歩きまわってお腹がすいていた事を思い出した。ちょうど、エドゥアルトに会った時も疲労感と共に何かを食たいという気持ちを持っていたのだ。不思議なもので、思い出すとそれは確かなものに変わる。
けれど一度不満げな声を上げた手前、ティーアはちょうだいとは言えなくて、しばしの逡巡の後、ゆっくり手を伸ばした。
広げた手の平の上に、ころんと小さな飴が転がり落ちる。黄色の包みの中身は、甘酸っぱいレモンの味だった。
なんだかエドゥアルトの顔が上手く見れなくて、ティーアは視線をうろうろと下方にさまよわせていた。
何でこの人はこんな状況なのに、いつもと変わらないんだろう。ティーアは、小さな音にまで警戒してびくびくしていた自分が間抜けに思えてきた。思えば、この屋敷に閉じ込められてから、ティーアばかりおどおどしている。いくら大人だからって、エドゥアルトの余裕たっぷりな様子は、ずるすぎる。暗闇なんていうものは、本能的に人間を脅かすものなんだから、もっと彼も落ち着きをなくしてもいいのに。反面、エドゥアルトがここまで普段通りだからこそ、ティーアもこんな時なのに飴なんか舐める気になったのかもしれないが。
くやしい。けれどティーアだって、やっと平常心を思い出す事が出来た。甘いものを食べて、脳に影響を与えたのかもしれない。毅然とした態度がよみがえってきて、ティーアはまた歩き出した。
「上の階にも行ってみましょう。他の出口を探さなきゃなんですからね」
「そうは言っても、二階からじゃ危ないだろ」
「私はヘイキです」
「君は、そうだろうけど」
ティーアはかつて、曲芸師として幼いながらに活躍していた。木登りや宙返り、高所にての芸などはお手の物。彼女であれば猫のようにしなやかに、二階から一階へと飛び降りる事が出来るだろう。面倒くさがりで痛いのが嫌いなエドゥアルトとは違って、気持ちの面でもそういう事を厭わない。
階段をのぼりながら、ティーアはくすっと笑った。
「それじゃあ、エディさんだけ何か紐状のもの伝っております?」
「それも嫌だな。疲れそうだし」
「じゃあ置いて行っちゃいますよ」
「……ひどいな。君はいたいけな大人を一人置き去りにしちゃうのかい?」
エドゥアルトならロープでおりる選択肢をすぐに選ばないだろうと分かっていながらのティーアの問いだった。実際にはそれを選ぶかもしれないのに、口では面倒事を避けてしまう。
置いて行ったりしないのに、ティーアはちょっとだけエドゥアルトを言い負かしたような気分になり、階段をのぼる足が軽くなっていった。
三階建てとはいえ、屋敷の各階の天井はとても高い。二階の窓から見下ろした地上は、庶民の建てる小さな二階建ての家よりも離れた場所にあった。この窓は縦に長い造りをしていて、とても人が通れそうにはない上に、はめ殺しになっていた。窓ガラスを割ったところで、小さな子どもでも顔を出せやしないだろう。その上、飛び降りた先は茨ばかりの庭だった。ため息をついて、ティーアは違う出口を探す。
二階に至っても、この屋敷は扉も窓も開くようにはなっていなかった。扉なら鍵が閉まっていると納得出来るのだが、窓は鍵をいじってみても、それさえ動かなかった。
先程見た二階部分の高さからすると、三階から飛び降りるのは、さすがにティーアでもはばかられるが、行く先がなくて彼らは三階へと向かって行った。
「本当に、なんで……」
出る事が叶わないのか。何故誰もいないのか。屋敷内は思っていたよりは荒れておらず、薄暗く掃除が行き届いていないものの、少し前までは人がいたのだろうと感じられる。こうして歩いている絨毯だって、まだ虫食いのような傷みの少ないもの。ゆえあって帰れなかった家人が戻ってきても、おかしくはないかもしれない。
最後の段をのぼって、三階にたどり着いたその時、ティーアは何か違和感のようなものに気がついた。うなじのあたりが、ちりちりと痺れるような寒気を訴えたのだ。
それが何かを探るように、一歩一歩、歩き始めるが――今度こそ、冗談抜きで心臓が飛び出るほどの驚きに目を見開いた。
人の姿に近い何かが、白い光のようなものを発しながら、ゆらゆらと揺れている。
あれは、だめだ。近よっちゃ、いけない。理由もなくそう感じた。
ティーアは、逃げなくてはと本能が警鐘するのに従えないでいた。
動けない。叫びだそうにも、舌まで痺れたように、動かせないでいる。
エドゥアルトにもこれが見えているのか。それともティーアにしか見えないのか。どうしたらいいのか、分からない。
気がつくと、白い“それ”はティーアの少し前にまで迫っていた。
「……いやっ!」
弾かれたようにティーアは床を蹴った。白いものの横に移動してしまったと気づかないうちに、彼女は蹴りを繰り出した。“白いなにか”を視界からどかすつもりが、ティーアの足は目標をすり抜けてしまう。反射的にもう一撃を与えると、今度は何かにぶつかる感覚があった。
「ぶっ」
奇声に聞き覚えがあるような気がしたが、目をつぶって白いものを見ないようにしていたティーアには、自分が誰を蹴ったのか分からなかった。白いなにかを怯ませる事が出来たなら、後は逃げるだけ。
前後不覚に陥ったティーアは長い廊下を駆け出した。
少女は簡単に行き止まりに追い詰められる。廊下の先には、開かずのドアしか存在せず、それは最早行き止まりと同義だった。駆け出す前にすぐ近くにあった階段をおりればよかったのだが、もう遅い。
そして傍らにエドゥアルトがいない事に気づく――。
既に青ざめていたティーアの顔が、更に青白いものになる。彼を、置いてきてしまった。そんなつもりはなかったのに。そんな事してはいけなかったのに。
寒気が、冷気が、ティーアの何もかもを凍らせる。
今、彼はあの気味の悪い白いものの近くで、命を脅かされているのだ。そう想像したティーアが顔を上げた瞬間、“それ”はもう目の前にまで接近していた。
「やっ……! やだやだ、誰か……っ!」
わけがわからない。こわい。きみがわるい。
人のカタチをした何かは、人の声みたいなものを発していた。少しこもった男性の声。尻餅をついて震えるティーアの耳には、届かない。
「助けてっエディさん!!」
訳も分からず、涙が出た。
「呼んだか?」
存外すぐに応じる、緊張感のない声。今はそれが妙に懐かしかった。ほとんど這うようにして移動を試みていたティーアの体を支えて、エドゥアルトはひどく生真面目な顔をしてみせた。
「幽霊だか何だか知らないけど、こちらのお嬢さんに何かされちゃ、困るな」
エドゥアルトが白いものに何かを訴えていたが、ティーアは人の持つ体温に触れて、ただそれにしがみついていればいいのだと理解した。
もう、大丈夫だ。
まだ心臓はすごい勢いで脈動していたけれど、ティーアはもう逃げ道を探さなくていいのだと目を伏せた。
「……大丈夫か?」
近くで聞こえる、ひとの声が耳に心地よい。ティーアは、右手を動かして何かを掴もうとした。
『……て、がみ……』
エドゥアルトのものではない声に、ぴくりとその腕を持ち上げるのをやめる。
『……てがみは、……ないか……?』
どこかで聞いたような声だった。くぐもって、低い、若くはない男性の声。明るい声とはとてもいえないが、何かに憤っても聞こえない。そろそろとティーアは瞳を開け、その声の主を探した。
やはりだ。あの、輪郭もおぼろにゆれる白い何かが、そこにはある。
「手紙?」
つぶやいたのはエドゥアルトで、ティーアの腰にある鞄を見下ろした。彼女も、まさかと思って、あの血のり風封筒の手紙を取り出す。
白い人影は、見せて、というように手をさしのべてきた。びくりとティーアが体を跳ねさせたので、エドゥアルトがその手紙を取り上げると、立ち上がった。
近づいたエドゥアルトの目には、相手の顔立ちまで見えていた。けれどそれはすぐに陽炎のようにゆらぎ、本当に存在するのか疑わしく思えてしまった。
『……あいつは、またこんなふざけた封筒……』
手紙を受け取った男性は、手の中の趣向を凝らした封筒に、かすかに微笑んだようだった。封筒から中身を出して、細めた目のままそれを読む。
少し離れた場所で目を奪われていたティーアにも、今度こそにっこりと笑みを深める初老の男性の姿がはっきりと見えた。
『……ありがとう……郵便屋さん』
風に吹かれた細い煙みたいに、男性の体がぐにゃりと揺れた。
「えっ」
目をはなした瞬間はなかったのに、煙が溶けたみたいに男性の姿は消え、虚空に封筒と便箋だけが浮かんだ。くしゃっと紙を丸めたような音がして、手紙が小さな小さな紙片になって空中に舞う。
まるで空から降る雪のように、ひらひらと。
『旦那様、お手紙です』
廊下を歩く規則正しい音。
『驚いた……こんな封筒見た事ない』
窓を開ける音に、鳥の声。
『ああ、そうだこの手紙を――あいつに』
食器がお盆にぶつかる音。
人がこの大きな屋敷にたくさん出入りしていた時の音が、一気に押し寄せた。幻のようなそれは、突風によって巻き上げられる。雪と共に。
ティーアもエドゥアルトも思わず目をつむってしまった。風の感覚だけは確かにあった。逃げ道を探すかのように、風が屋敷中をかけめぐる。
何かを叩きつけるような大きな音が、二人の鼓膜の奥まで振動させた。
風も止み、しばらくは世界から音がなくなってしまったかのようだった。ちちち、と遠くから鳥の声が聞こえてくるまでは、彼らは動けなかった。
目を開けた先には、白い老人の姿も、白い雪のような紙切れもなく、屋敷に人がいた気配など、少しもなくなってしまった。
「……今のって」
エドゥアルトと顔を合わせたティーアは、さすがの彼も、驚きを禁じ得ない顔をしているのを発見した。
最後に聞いた音は、屋敷中の扉と窓がすべて開いた音だったようで、ふしぎな事に頑丈な鎧戸までもが開放されていた。やっと彼らは開かずの扉ばかりの屋敷から出る事が出来た。
外に出ると、空気のこもっていた屋敷内にはなかった、新鮮な風の運ぶ空気がティーアを穏やかな気持ちにさせた。
空は変わらず雲が多かったが、東の空が明るくなっていた。もう夕方だから、青い空は薄い色だが、まるで屋敷からの風が、雲をも動かしてしまったかのようだった。強い風はないが、時折木々が小さくゆれる。
「……あの人、手紙を、待っていたのかな……」
最後はふしぎとこわい感じはしなかった。けれど何を言ったらいいかはわからない。だからティーアはただ屋敷を振り返った。
「はっきり思い出したよ。この屋敷の主は、年老いて長い間寝たきりだった。家族もいないから使用人の人数も減らして、あまりに静かなために幽霊屋敷の噂ができた」
エドゥアルトは町のお役人。けれど彼は町を歩く人の話に耳をかたむける。ただのお役所仕事ではなく、人と接する事をいとわない。町の噂話に詳しいのも、ただ彼がデスクワークを嫌っての事ではない。
「それから?」
幽霊屋敷といわれるこの建物は、今でも普通のお屋敷よりは、奇異に映るけれど、ティーアはもう不気味とは思わなかった。窓はすべて開いて、室内の暗い様を見せつけているけれど、未知の恐怖はもう訪れない。
「……さあ。それぐらいだな、知ってるのは」
両腕を頭の後ろで組んで、エドゥアルトは歩き出した。ゆっくりと。そんな彼に視線を戻して、ティーアもまた、屋敷に背を向けて足を動かした。
「想像なら、できる。きっと屋敷の主は遠くにいる家族か友人と手紙でやり取りしてたんだろう。いつも、郵便屋さんの持ってくる手紙を待ちわびて」
あの白い男性は、最後にはとてもうれしそうに笑っていた。
ティーアの仕事は、待つ人がいるところに大切なものを届ける仕事なのだ。
彼にも、大切なものを届けられたのだろうか。
「君の仕事は素晴らしい仕事だ。幽霊まで笑顔にさせる」
言うなり、エドゥアルトはぐっと顔をティーアに近づけてきた。ティーアの耳の上の髪にくっついていた、小さな白い塊に気づいたからだ。あの幽霊に宛てられた手紙の一部だろうか。ティーアの菫色のやわらかな髪に触れないようにと気遣って、その紙片をとってやる。途端に、エドゥアルトの指が持つ体温が雪を溶かしたかのように、それは消えてなくなった。
本当に雪のようだった。常春の国には降らない氷の結晶。百年に一度の奇跡。特別なユルナリアの日が降らす、雪の奇跡。なんて考えるほど、エドゥアルトはロマンチストになりきれなかったけど。
「え……?」
目の前で、邪気もなく穏やかに微笑むエドゥアルトに、ティーアは我を忘れた。彼の瞳がとても優しくて、キスが出来そうなほど近くにいるという事に警戒も忘れた。
今更ながら耳の上に触れた彼の手つきが、壊れ物を扱うみたいに丁寧だったと知り、ティーアは顔に血が集まるのが分かった。心臓が、どんどんと顔にばかり血液を流す。それも素早く。
「な、んで、こんなに近……」
心の中で思った事を、そっくりそのまま口にしていると気づかないで、ティーアは想像してしまった未来に、ぎゅっと目をつぶった。
「ん? 髪の毛に葉っぱついてた」
予想していたそれとははるかにかけ離れた返答。相手の気配まで、離れていった。少女は思わず瞼を上げる。
「何か、もっと違うコト考えてた? もっと、大人がするような――?」
人の脳の中まで見透かすような、エドゥアルトの瞳。それでいてどこかからかうような、勝ち誇った笑み。そして少々のいやらしさを加えれば、いつもとほとんど変わらぬエドゥアルト・クレヴィングの出来上がり。
ティーアが勘違いをしていたと分かっていてわざと、ああいう顔をする。それは彼が、ティーアを遠ざけるためと心のどこかで分かっていたはずなのだが、悔しくて。
「……もう、エディさんなんか、知らないッ!!」
咆哮を上げた。
ユルナリアの夜がはじまる。
人々は特別なケーキを食べ、豪華な食事をいただき、お酒をあおる。
広場には焚き火がたかれ、歌が聞こえるようになる。
子どもたちにプレゼントを贈る妖精ナターレの到来も、もうすぐだ。
暮れはじめた空が、ゆっくりと雲を追い出していくのに気がついた者は、まだ誰もいない。
このお話は、ティーエディが書きたかったけど、どうしたら二人はいい感じになるんだろうかと悩んで書いたものでした。
書き始めたのは去年のクリスマス。丁度時期だし、ロマンチックになるかなあと。
しかし幽霊屋敷。
ロマンチックな季節に幽霊、というギャップがやりたかったのだと思われます。
でもあんまりユルナリア関係なかっ(自重
ちなみにエディさん、ティーアちゃんに一回蹴られてます(笑)
ティーエディの参考に改めてみうさんのお話読んだら、やっぱり私はこの二人のやり取りが好きだと改めて思いました。
すごく萌えます。