長い間のロマンス2(ビアンカ&……?)
食堂に小さな子供――彼をフェッロと呼ぶのは何故かはばかられた――を連れて行くと、少し前に見かけた食事がまだ残っているのでそれをあげる事にした。ビアンカも少し空腹感を覚えていたが、自分はパンを一つ頂戴するだけにとどめた。
少年はよっぽどお腹がすいていたのか、子供らしくわき目もふらずにパンにかじりつく。
どこかで見た光景だ。思えば、はじめてフェッロと会った時もこんな風に空腹の彼をこの食堂へ連れて来たものだ。小さな少年があまりにも夢中になって食器を引き寄せるので、ビアンカはついつい声をかけたくなってしまう。
「……おいしい?」
「うん」
こくんと首を落とす小さな子供。
(かっ、かわいい……っ!)
元々子供好きなビアンカだ。大人よりも背が小さく手足も短く顔も小ぶり、全体的にすべて小さいというだけで、どうして人はこうも幼子に可愛らしさを感じてしまうのだろうか。そのあどけない仕草にも、ちまちました行動にも心を持っていかれそうになる。しかも密かに心を寄せる相手の幼い姿にそっくりなため、彼の幼い頃なのではと思うと微笑ましさが増す。相手が孤児院の子なら抱きしめていたところだろう。
しかしながら。本当に彼は一体何者なのだろうか。実際にフェッロ・レデントーレとただの同性なのだとしたら不思議ではあるがそういう事もあるのだなと納得がいく。さっきは同姓同名かと疑ったが、そういえばまだファミリーネームを聞いてはいない。
これで小さな子供のファミリーネームが“レデントーレ”だった暁には――ビアンカはどうしたらいいのだろう。聞こうにも聞けなくて、ビアンカはとりあえず少年の正体をさぐるのは後回しにした。
料理はいくらか残っていたものの、少年は食器から顔を上げていた。四歳くらいの幼い子供には多すぎる量だったのだろう。いい機会だとビアンカは、彼が同行者とはぐれたのかと尋ねる事にする。
「今日は、お母さんとお出かけしてたの?」
少年はビアンカを一瞥すると、水の入ったコップに手を伸ばして、両手でそれをあおる。それから水に映る自分の顔を眺めるかのように、コップに視線を落とすと小さく言った。
「……お母さん、いなくなっちゃった」
ゆっくりと話してはいるが、自分の身に起きた不幸を理解しきっていないような、どこか途方に暮れた声。
「ええと、一緒にお出かけしたのに?」
子供はふるふると首を横にする。
「この前から、いないの」
今度こそ声は沈んでいて、幼い少年の表情も暗くなる。
「……そう、なの……」
もしかしたら、この子は母親を亡くしているのかもしれない。そう思うのは早計だろうか。小さな子供にとって両親は世界のすべてだ。それが失われたという事は、母親は病気か何かでどこかに療養のために行ってしまったか、夫との折り合いがつかず家を出てしまったか、やはり亡くなってしまったか――。自分の家族がそうなりかけたために、あるいはビアンカが孤児院の管理者であるがために、家族の離別の理由をすぐに思いつけてしまった。
いずれにせよ、こんな小さな子供が母親の不在を知るというのであればやはり、何かがあったのだ。
「それなら、お父さんは?」
少年はコップを机の上に置く。
「おしごと……いそがしい、って」
家族に顧みられないこども。まるでかつての自分のように見えて――ビアンカは胸がしめつけられる思いだった。こんな小さな子供が。幼い時間はあっという間に終わってしまうのに。親はどうして子供を手放してしまうのか。両親が世界の全てで、子は親を頼るしか術がないのに。
本当にビアンカはこの子供を抱きしめてやりたくなった。心配はないよと、教えてやりたかった。それが真実とはいえなくとも、少しの間だけでも彼を安心させてやりたいのだ。
「なんでここに来たのか、わかんない。ここの家も、見たことない」
幼い少年は自分の状況を説明するくらいは出来るらしく、ぽつぽつと語り出す。
「お姉ちゃんも、知らない。だあれ?」
今更だったがビアンカは確かに自分の名前を教えてはいない。
『まだ名のっていませんでしたね。私は、ビアンカ・ボードワンと申します』
繰り返す、過去の日を。
だが今のビアンカにはそんな事はどうだってよくって、この子を少しでも笑顔にしてやれるように心を砕かねばならなかった。
「私は、ビアンカって言うの。この寺院の修道女をしていてね。えっと、修道女っていうのは――」
幼い子供と話をするというのは、大人相手よりも頭を使う。子供は言葉を知らない。分かりやすいようにものを教えるのには、相手を気遣った説明と、子供にも通じる用語選びが必要となる。ビアンカは普段からこの子ぐらいの年の孤児たちを相手にしているが、それでも彼らは寺院の事には慣れている。寺院に不慣れな子供に一から説明をするのはやや難しかった。
それでも彼らは話をした。互いの事を少しずつ話し、特にビアンカは少年が楽しい気分になれるような話題選びをした。
そのうちに、頭が重くなってきた子供に、ビアンカは呼びかける。
「眠いの?」
「うん……」
満腹感を得ると、人はどうにも眠くなる。小さな子供なら尚更眠気には抗えないはずだ。くすりと笑うと、ビアンカはまた少年に少し目線を合わせる。
「ちょっとだけなら、お昼寝してもいいのよ」
この子の父親が彼を探しているのなら、ゆっくりしている場合ではない。だがこっちが無闇と歩き回ったからといって親が見つかるのでもないだろう。少し子供を寝かしてやって、その間に騎士団か誰かに相談すればいい。
ビアンカは子供が椅子から降りるのが大変そうにしているので、手助けをしてやる事にした。小さな体を抱き上げると、彼はそのまま安心してビアンカに寄り添ってくる。目を伏せて、すっかり寝入ってしまった小さな子供。
サン・クール寺院には客間がある。そこにしばらくこの少年を寝かせる事にして、ビアンカはそっと食堂を離れた。
子供を客間の寝台に寝かした後、年長組にも話をしてから出かけた方がいいと考えてビアンカは寺院内を歩き回った。彼らは数人で集まって一つの部屋で休憩をしていた。茶菓子などを片手にくつろいでいる。中でもやはり気さくなアンガスが立ち上がってビアンカに対応してくれて、事情を説明してから少しの間出かけると伝えた。
「子供が寝てるなら、あんま騒がしくしないよう気をつけるっす」
そう請け負ったアンガスに頷くと、ビアンカは寺院を出た。
広いティル・ナ・ノーグのいたるところに、騎士団の小さな詰め所がある。ティル・ナ・ノーグ天馬騎士団の仕事は様々で、行方不明者の捜索も行っている。いつか別の人を探して、ビアンカも騎士団を訪ねた事がある。今度は子供の親を探している訳だが、今度もまたフェッロに似たひとが関わっている、という訳だ。そして本人も未だサン・クール寺院に戻っていない。
そうなのだ。小さなフェッロという少年に気をとられていて忘れそうになったが、大きなフェッロ・レデントーレもまた捜索願いを出さなければならないかもしれない状況にあるのだ。
あっちもこっちも、フェッロという名を持つ人間はビアンカを忙しくさせる。大人のフェッロがいつ帰ってきてもいいように、ビアンカは急がねばならない。
町を巡回する騎士の一人に偶然出会う事が出来、ビアンカはさっそく迷子の子供の話をして、それを探す親はいないかと問いかけた。残念ながらそういった話は聞いた事がないとその騎士は告げ、ビアンカはやや落胆しながらも今後の話に転換させた。
他の騎士に聞けば話も違うかもしれないと言われ、ビアンカもその騎士も何かあれば互いに連絡を取り合う事を決め、ビアンカはひとまず寺院に戻った。アンガスたちに時々小さなフェッロの様子を見に行ってくれとは頼んだが、迷子のあの子は目覚めて心細くなっているかもしれない。それでなくとも、目を離すとどこかへ飛んでいってしまう年頃の子供だ。危ないところに行ってしまわないとも限らない。
少し急ぎ足でサン・クール寺院に帰ってみると、ビアンカが出た時と変わらぬ様子で静けさを保っていた。ホープが連れ出した年少組はまだ戻っていないようだし、参拝客もいない。小さなフェッロが大声を上げてビアンカを探すような状態にもなっていないようだと安心する。
ほっとしながら寺院の中に進むと、どこかから年長組の話す声が聞こえた。彼らはまだまだ建物の傷みを直す作業をしているようで、何か起きて困ったようではない。
何も変わらないいつもの寺院に、ビアンカはゆったりとした足取りになって客間に向かう。食堂の前を通った時、ビアンカはどしんと何かにぶつかった。というより、ぶつかって来られた。
それは小さな塊で、白いきれいな髪を持ち、小さな小さな両腕でビアンカにしがみついていた。幼い少年に抱きつかれたと知って、ビアンカはそれを優しく受けとめる。
「どうしたの? 誰か知らない人がいた?」
迷子になったこの子供は、ビアンカが危惧した通り目覚めてから誰もいなくなったと知って、不安になったのだろう。あるいは見知らぬ寺院の人間に出会って、怖くなったのかもしれない。正面からビアンカをぎゅうと抱きしめたまま、何も言わない幼い子供。小さな腕がふるえているのは、気のせいだろうか。
ビアンカは膝を落として少年の体を抱きとめた。こんなにも小さな体で、大きな大きな不安と戦っていたのだろう。
母親と会えなくなってしまい、父親は私生活を優先しない仕事人間。そんな家庭から放り出されて、突然見知らぬ土地で迷子になったのだ。心細くなるのは当たり前だ。ビアンカは子供の小さな頭を撫でてやる。指を通すと細くてやわらかい髪がビアンカの心までくすぐった。
「どこにもいかないで」
くぐもった子供の小さな声。やはり、一人にするべきではなかったのだ。
「分かったわ。どこにも行かないわ」
少年は顔を上げる。灰紫色の瞳は未だ寂しげに揺れていたけれど、懇願を強く宿していた。
「やくそくだよ」
小さなお願いは、声こそ淡々としたものだったけれど。その瞳を見た後では少年の願いが痛いほど理解出来た。
「ええ、約束するわ」
言えば、少年ははにかんだように微笑んだ。控えめな笑みだった。けれどとても可愛い幼子の笑み。
たとえ現実的には難しいと分かっていても、ビアンカはこの子供との関係を断とうとはしないだろう。遠い土地が住まいだったとしても、きっと何らかの形で少年の支えになろう。そう、思った。
いつしか子供の体が少し重くなったように感じて、ビアンカは腕の中を見下ろした。頼る人を見つけられて安心したのか、また少年は眠ってしまった。やっぱりまだまだ子供なのだ。今度こそこの子が起きるまで側にいてあげよう。
そうしてビアンカは再度客間に戻り、またもや少年の体を寝台におろす。子供に薄い毛布をかけてやり、さて自分は何をしようかなと考える。
本来ならば昨日の嵐で滞った仕事が他にある。年長組の手伝いやねぎらいもしてやりたいし、洗濯物の続きもしなければならない。そういえばまだ濡れたままの洗濯物がどこかでビアンカの帰りを待っているはずだ。乾いた洗濯物を外して新しいものを干さなければならないし――
やるべき事は山ほどあったのだが、この子を一人にはしておけない。無垢な寝顔を見ていると、本当に誰かに似ていると思えた。いつか商人のゾロの発案で、星を見に様々な顔ぶれで夜出かけた事があった。その日フェッロは睡眠不足で、そのうち木に寄りかかって眠ってしまった。あの時見た彼の寝顔に、とてもよく似ている。
そういえば、あの時もこんな風に傍らにいて――いつの間にか、ビアンカも眠ってしまったのだった。思い出しながらも、ビアンカはうとうとしはじめてあの日と同じ事を繰り返していた。
繰り返す。
似た日々を。
同じような経験を。
繰り返される日常は、しかし二度と戻らないし、同じ時はひとつとしてない。
だからビアンカは小さな出会いも一瞬のものだとは思わない。あの日出会った事も、今日出会った事も、みんな同じ大切なものに思える。
そう、だから今は――
長い間、夢を見ていた気がする。ビアンカは目が覚めると夕暮れの光が室内に降り注いでいるのに気がついた。すっかり夕方になってしまったらしい。眠ってしまったのはいつからだったろうか。随分と前に寝入ってしまった気がしたが、ついさっき眠ったばかりのようにも思える。
まだ鈍くて働かない頭を持ち上げると、自分が寝台の前に座り上半身だけ寝台にあずけていたと知る。という事は、誰かの添い寝をしていたのだろうか。孤児院においてビアンカが添い寝をするというのは珍しい事ではない。その相手が誰かすぐには思いだせなくて、周囲を見渡す。
誰もいない。ここが客間なのには気付けた。だがビアンカ以外に人の気配はなく、寝起きではっきりしない頭では、怪訝になるだけだった。
はっとなってビアンカは客間を飛び出した。あの少年がいない。四歳くらいの、迷子になった小さな子供。あの子の添い寝をしていたはずなのだ。あの子がいなくなってしまった!
ビアンカだけが出かけた先ほどとは違い、今度はあの子が一人で客間を出たのなら、ちょっと用を足しにいったとか、喉が乾いたとか、年長組の誰かが声をかけたからという可能性もあった。それなのにビアンカは焦っていた。
小さなあの子に何かあったら。どこにも行かないと約束したのに。
回廊を駆け、廊下を駆け、食堂内を確認しても小さな子供の姿は見つからなかった。
洗濯物のはためく庭を横切って、寺院入り口まで向かったところ、ひとつの人影に出会った。
長い前髪の、白いぼさぼさ頭。僅かに覗く瞳は何を考えているのか分からない、感情の読めないもの。画家のくせに帯剣して、いつもと変わらぬ姿の青年。
「あっ、フェッロさ――」
小さな子供を見なかったかと問いかけようとしてビアンカは我に返る。
嵐の夜に帰らずに、翌朝になっても姿を見せずに寺院の人間を心配させた存在。その張本人の帰宅だった。子供の事も気になるが、フェッロが帰ってきた事も見過ごせない。駆け寄って思わず、その存在が本物かどうかを確認したくなる。幼いあの子がしたみたいに、子供のようにしがみついてしまいそうになってビアンカは慌てて体の動きを止める。
「ど、どこ行ってたんですか……!」
熱のようなそれを憤りに変えて、ビアンカは声を荒らげる。安堵こそすれ怒る必要などなかったが、ビアンカはちょっと不機嫌になった自分を演じなければ、変な行動を取ってしまいそうだったのだ。小さな子供みたいに抱きつくなんて、大それた事を。
余計な事を考えたせいで頬が熱くなった。それを隠すためにビアンカはフェッロから顔を背ける。そんなビアンカを不思議そうに見ながらも、のん気な事を言う男の声。
「出かけた先で嵐が来たから、しばらく大人しくしてた」
あの小さな子供とは違う声の低さ。どこか要領を得ない内容。前髪をくしゃりと撫で上げる無造作な行動。
けれどやっぱり声も少し似ている。一体、どういう事だろう。
フェッロによく似た子供はどこへ行ってしまったのだろう。念のためと彼にも小さな子について尋ねてみたが、見覚えがないと言われる。
彼らは少し話をして、互いに嵐の夜をどう過ごしたか説明し合った。なんとなく、日常が戻ってきたような気がした。
ビアンカはちょうど近くにあった洗濯物の籠に目を落とし、こんなところに置き忘れたのかとそれを持ち上げる。それなりの量があり、水分を含んでいるためにけっこうな重量だったはずが、しばらく放置していたために水分がいくらか蒸発して軽くなっていた。
「持つよ」
と、その重みがなくなってビアンカは顔を上げる。フェッロが洗濯物籠を取り上げたのだ。今や大した重さではなかったが、こんもりと積もる洗濯物が持ち運びには大変そうだと思われたのだろう。大丈夫だったのにと思ったが、ビアンカは彼の好意を素直に受け取る事にした。ありがとうございます、とぼそぼそ言う。
とりあえず洗濯物を一度室内に置いておこう、という話になってビアンカたちは歩きはじめる。
「……ビアンカ、何か前に約束してなかったっけ」
突然フェッロが妙な事を言い出した。
「え……?」
約束。つい最近聞いたばかりの言葉だ。フェッロによく似た顔の小さな子供の口から。
まさか。
まさかあれは、フェッロに似た姿の子供は――もしかして。
見上げたフェッロから、目がはなせなくなる。
「――ごめん、違ったかも。気にしないで」
先ほどかきあげたためフェッロの長い前髪は半分顔から撤退していた。だから彼が今どこを見ているのかが、よく分かる。
フェッロの側にいるビアンカを一心に見つめる姿は、まるで隠していた大切な事を伝えなくてはと思っているかのように見えて――ビアンカは思わず息を飲む。
でも、あのとき、本当に……。
小さな小さなつぶやきをしたその人は、ビアンカではなくてその向こうにいる誰かを見ているかのようだった。遠い昔を思い出す老人の瞳にも似て、ビアンカは落ち着かなくなった。また彼がどこかに行ってしまうような気がしたからだ。
「ほんと、なんでもない」
ふいと顔を背けるとフェッロは先に歩いて行ってしまった。
いつもこうだ。フェッロは勝手にビアンカを戸惑わせ、すぐに去って行ってしまう。それでもビアンカは彼を置いてはいけない。そう、約束したのだから。
困ったように笑いながら、ビアンカは彼を追いかけた。
「待ってください、フェッロさん。私も一緒に行きます」
距離はさほど開けていなかったのに、少しだけ駆け足になって追いかけてくるビアンカを、フェッロは振り返る。誰かの浮かべた控えめな笑みとおんなじものを作って。
不思議な事が世の中にはあるもので――ビアンカは後になって、自分が出会った少年が幻だったのではないかと戸惑う事になる。
フェッロが無事帰ってきた事は喜ばしいが、フェッロによく似た少年の行方はまた分からなくなっていたのだ。それをアンガスなど寺院に残っていた年長組に問いかけると、彼らは首をかしげてビアンカを見た。
“そんな話は聞いていない”と言うのだ。フェッロに似た子供の姿は元より、ビアンカの姿も昼間ほとんど見ておらず、昼食の件でアンガスが話をしたぐらいだと言われた。アンガスには小さな子供が迷いこんで来たから、しばらく寺院にいさせる事にしたと言ってあったのに。彼は子供が寝てるなら騒がないと言った事も覚えていないようだった。
小さな迷子について問い合わせた巡回中の騎士を探そうかとも考えたが、無駄な事のように思えた。
一体、どこからどこが夢で、どこまでが現実だったのか。
ビアンカは本当に、あの子供に出会ったのだろうか。
ただ夢を見ていただけなのだろうか。
しばしうたた寝をしていたのは確かなのだ。自分が現実だと思っていた事はもしかすると――。
けれどそれは、抱きしめた時のぬくもりと共によみがえる。
どこにもいかないで
同じ年頃の子供を見ると時折思い出す、あの小さな子供の笑顔。
それを失いたくなくて、ビアンカは彼の側にいる。
大人になったフェッロの隣に。
やくそくだよ
ええ、約束するわ
ずっと一緒よ
これにてこの楽園ハイブリッドはひとまず完結です。
最後までおつきあいくださり、ありがとうございました。
フェッロとビアンカの今後は本編(楽園をふちどる色彩)の方でもやっていく予定ですので、そちらも合わせてご覧になっていただければうれしいです。
ただこの短編集は今後またお話が生まれたら、投稿したいと思っています。
それがいつになるかは分かりませんが、その時またおつきあいくだされば幸いです。
では、改めましてこのお話を、企画の主催者であるタチバナナツメさんに、そして短編集でキャラを借りた親御さんに捧げます。
それでは、またどこかでお目にかかれますよう。
伊那