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4話 到着



「これに乗って。

目的地を教えてくれれば送るから。」


俺が創ったのはただの自動車だ。もちろん、ここは山の中なので平地ようの自動車ではなく、足が長い山で動くようの自動車である。これはその細長い6本の足で歩きながら進むようになっている。


「馬鹿言うな。こんな巨大なものすぐに敵に気付かれるに決まっている。」


確かに今日は満月でそれなりに明るい。そのまま動いたら目立つことこの上ないが………


「これなら大丈夫だろう?」


俺が指を弾くと、自動車は見えなくなった。この自動車にはステルス機能を搭載させているので消えたように見せることが可能だ。これならナデアも文句あるまい。


「カオル様。」


どうやら俺がこれを出したのに気がついたらしくフィオルが子供達を連れてやってきた。

子供達の表情をみる限りフィオルは上手いことやってくれたようだ。


「移動なされますか?」


「あぁ。ナデア達の……あ〜、ナデアってのはこの子の名前なんだけどさ、で、ナデア達の故郷に行こうかと思ってる。」


「分かりました。」


そう言うとフィオルは子供達を先導して自動車の真下部分に向かった。すると自動車からリフトが降りてきてフィオル達を自動車内部へと連れて行った。

ちなみに、今は子供達がリフトでの移動中怖がるといけないのでステルス機能は解除してある。

まぁ、巨大な金属の塊がある時点で恐怖だとは思うが。そこはフィオルが上手く宥めてくれている。


「ま、待て。カオル達には関係ないことだ。これ以上関わるな。」


「言いたくは無いけどね、ナデア、子供達の顔を見た?

ナデアが悲しむのと同じくらいにいや、きっとそれ以上に子供達だって悲しみに暮れていたんだ。本来はそれをどうにかするのはナデアの仕事だった筈だ。だけどナデアがあの調子だったから、その役目は変わりにフィオルがした。

別にフィオルが悪いとは言っていないよ。心というのは完璧じゃないからね。

だけど、俺達を頼ってしまったのは客観的な事実だろう?

そしたらもう無関係なんてことは無いよ。」


俺の言ったことに思うところがあったのだろう。ナデアは自動車、いや自動車の中に入っている子供達へ向けて申し訳なさそうな視線を送っていた。


「でも、だったら尚更これ以上カオル達に迷惑はかけられない。」


なかなか折れてくれないナデア。しかし、顔は思案顔であることから、もう少しだろう。


「ナデア、俺達は君達の命を救った。言わば命の恩人だ。だから、君達は俺達に飯の一つでも奢る義理があると思うんだよ。な?」


俺が横暴とも言える駄目押しで、ナデアは諦めたかのような溜め息をついた。


「確かに。助けて貰ったのは事実だしな。

分かった。レクレスに案内しよう。ただ、申し訳ないが急いで貰えないだろうか?」


レクレスってのがナデア達の住む場所らしい。


「了解。じゃあ、さっそく行こうか。」


俺はナデアの手を引き自動車まで連れて行った。


全員が乗り込んだのを確認し、自動車を発信させる。自動車は長い足を歩かせ始めた。しかし、エネルギーがそこまで無いので全速力という訳にはいかない。もちろん足で行くよりは速いのだが。




車内では最初は困惑気味だったナデアが今は子供達のメンタルケアに当たっていた。

よっぽど俺に言われたことがこたえたのだろう。


「で、何があったか教えてくれない?」


ナデアと子供達の話が一段落ついたところを見計らって俺はナデアに訊いた。


「待ってくれ、もうレクレスについてしまう。

必ず説明はするから先にやらねばならないことをやらせてくれ。」


どうやらレクレスはそんなに遠い訳ではなかったらしい。ナデアに方向だけ教えてもらい、その方向に走らせていただけなのだが20分程でついてしまった。


「しかし"カガク"というのはすごいのだな。どこの流派の魔術なのだ?」


う〜ん、科学とは言ったが説明はなかなかに難しい。そもそもで魔術というのがどのような技術か分からない。


「まぁ、その辺は秘密ということで。」


「なるほど、確かにここまでの魔術の情報だ。簡単に他人には言えないか。」


ようは技術の秘匿みたいなものだろう。この星には技術の特許などないだろうからな。


「カオル様、村のようなものが森の中にありますが。」


俺達がお喋りをしていたところでフィオルの報告が入った。

因みにナデアはご立腹なのか目つきが妙に鋭い。


「それがレクレスだ!

カオル、早く私を下ろしてくれ。」


レクレスが近づくにつれナデアは目に見えて落ち着きが無くなっていった。





「着きましたよ。」


俺達はレクレス近くの森に待機している。レクレスは周りを背の高い深い森で覆われており、しかもその森を強力そうな魔物が闊歩しているので天然の要塞のようになっていた。俺達も自動車に乗っていなかったらなかなかに面倒な道のりになっていただろう。



「じゃあ、ここに乗ってね。」


俺は自動車の出入り口であるリフトにナデア達を案内した。ナデアはさっきから集中力が欠けており、慌ただしい。


「早くしてくれ。」


このセリフも今ので7回目だ。


「もうすぐだから。」


リフトがゆっくり下がっていき、地面に着いた瞬間にナデアは超ダッシュでレクレスに向かっていった。

入り口に立つ見張りのように見える者も事情が分かっているのか、ナデアともにレクレスの奥へと消えていった。


「よっぽど、切羽詰まっているのですね。」


フィオルの言う通り、何か一刻を争う事情があるのだろう。


「あのね、フィオル様はクレシア様の病気を治す為のお薬を持ってきたんだよ。」


答えてくれたのは、フィオルの隣にいた女の子だ。


「どんなお病気だかわかるかしら?」


フィオルはしゃがんで女の子に目線を合わせている。さすが、子供の扱いが上手いな。





「まずいですね、カオル様。」


女の子の話を聞いたフィオルは顔をしかめた。どうやら思っているよりも事態は深刻らしい。


「何か分かったのか?」


「おそらく、クレシアという人物は毒に侵されています。しかも、もう先は長くない。一刻を争います。」


なるほど、どうりでナデアが焦る訳だ。


「フィオル、治せる?」


俺がそう質問すると、フィオルは微笑みながら、


「私を誰だと思っているのです?」


と答えた。

それはかつて"甘美な蠱毒"と言われたフィオルの言葉だ。













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