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2話 未知との遭遇


「未知の世界へ出発しますかね。まずはこれ消しちゃって。」


フィオルにそういうとフィオルはスペースシャトルに手をかざした。そして彼女の手を中心とし、スペースシャトルが溶けて無くなっていった。フィオルの毒は例え金属だろうと侵しつくすことができる。

何でスペースシャトルを破棄したかというと、グリジオンの奴らに悟られないようにする為だ。



「差し当たって必要なのは食料か。」


俺達が今いるのは森だった。食料に関しては問題ないだろう。


「捕って参りますのでカオル様はここでお待ちになっていて下さい。」


そう言い残してフィオルは凄い速さで森を駆け抜けていった。どうやら獣を狩りに行ってくれたようだ。






カサカサ カサ カサカサカサカサ


しばらく横になって待っていると物音が聞こえてきた。最初はフィオルが帰ってきたのかと思ったが違う。俺の聴覚に届いた音から判断するにもっと巨大な何かが近づいてきている。


「まいったなぁ、もう俺の生命エネルギーも限界なんだけど。」


生命エネルギーがなくなれば勿論、俺は死ぬ。

で、今襲われたら間違いなく生命エネルギーが枯渇して死ぬ。

案外、今の俺は生まれたての赤子と大差ないのだ。つまりは絶体絶命。


「$&#%£※!!!!」


現れたのは巨大なワニの顔を持った(さそり)のような生き物で俺を簡単に丸呑みできる程の大きさを誇っている。


「真面目にヤバいかな。」


こんなことなら超振動ナイフくらい持っておけばよかった。体を動かすのがやっとの俺にこいつをどう対処しろと?

昨日ハッスルし過ぎたのは失敗だった。アレに体力を使い過ぎたようだ。


「$&#%£※!!!」


一直線に襲い掛かってくる怪物。それを見て俺は、まぁ、無駄に体は丈夫だし消化もされないから機能停止にして大人しく食べられた方がいいかな。なんて思っていた。


「カオル様!?」


そんな風に思っていたところで視界に何やら大きめの動物を持つフィオルが映った。


「たすけ……」


ガブ


たすけを呼び終わる前に俺の視界は真っ暗になる。どうやら食べられたらしい。怪物の腹の中は暖かくてかなり臭い。

少しの間、時間にして一秒くらいして、光が差し込んだ。フィオルが腹を真っ二つに切り裂いたようだ。


「カオル様!?」


泣きそうな顔をして近付いてくるフィオル。

昔からフィオルは心配性なところがあるからな。まぁ、俺を心配してくれるような奴はフィオルだけなんだけどね。


「大丈夫、どこも問題ないよ。」


フィオルを安心させようと笑いながら話かける。


「本当ですか?」


目をウルウルさせて上目使いでそう訊ねるフィオル。いつもクールな彼女とのギャップが凄く可愛い。


「少し匂うから分解してくれない?」


「分かりました。」


彼女はそう言うと口から臭いの成分を化学変化させて無臭に変える為の成分を吐く。

毒というのは化学成分の合成による物も多い。その為、フィオルには化学変化を本能的に感じることができるようで、今のようなことも苦もなくこなせる。


「ありがとう。」


「本当に申し訳ございません。カオル様がそこまで弱っているなど露ほども思っておりませんでした。なにしろ、昨日アレほど私をお求めになられたものですから当然、生命エネルギーにもまだ余裕があるものかと。」


性行為は生命エネルギーの活性化を促してくれはするが、性行為の際生命エネルギーを消費する。

最終的には性行為をした方が生命エネルギーは多く得られるのだが、今のような緊急時に性行為は自殺行為以外のなんでもなかったりする。


「フィオルが可愛い過ぎるのがいけないな。正に美しさは罪なのだよ。」


「くっ、今腕を切り落としたらおそらくは本当に死にますよね?」


そう最早、体の再生機能を使えない程に俺は弱っていた。だから、お仕置きができないと踏んで、軽口も叩けたのだ。


「たぶんね。」


「あぁ〜もう、とりあえず早くこれを食べて下さい!!」


フィオルが差し出してきたのはサイのような生き物。俺はそれを生のままガツガツ食べる。

本当は焼いたり料理したりした方が美味しいのだが、今は緊急事態のため、生で食べている。と言っても生肉もそれなりに美味しくはあるのだが。それに俺は機械の為、腹を壊すということが無い。だから安心して生肉に限らず腐肉ですら食べることができる。


「ふぅ〜、美味かった。」


俺はサイのような生き物を骨に至るまで全て食い尽くした。


「それは良かったです。

で、今後の方針はどうなさいましょう?」


流石に今のだけで生命エネルギーが満杯になる筈もなく、5%程度が回復したくらいだ。かと言って食べ続ければ良いという物ではない。一度に変換できるエネルギーには限度がある為、今日のところはこれで終わりだろう。

5%もあれば、賢者の石から相当なエネルギーを得ることはできるが、そもそもで生命エネルギーが残り5%ということは俺の肉体は殆ど瀕死と言ってもいい状態にあるということだ。


「まずは休める場所を探さないとな。」


俺はなけなしの生命エネルギーを使って、音響立体図を作成。超音波を利用して周りの様子を知る。


「人?が襲われてるな。」


残念ながら音響立体図は省エネの変わりに、手には入る情報量に難がある。


「知的生命体ですか?」


「分からない、けどその可能性は高いだろうね。」


その動き方には知的なものが感じられる。


「どうしますか?」


「そうだねぇ、しばらくはこの星にいなきゃいけないし、知的生命体とは接触しておきたいところかな。」


本当のことを言えば生命エネルギーをもう少し回復したいところだったのだが、それを待っていては襲われてる人達は死んでしまうだろう。

別に人助けをしたい訳じゃない。ただ、身の上を説明できない俺達を無条件に人に信じさせるには命の恩人という立場を利用するのが一番手っ取り早い。



「さて、恩を売りにいきますか。

フィオルは俺を背負っていってくれ。無駄なエネルギーを使いたくない。」


「分かりました。」


フィオルに背負われる俺。フィオルの背中は柔らかく、密着すると良い匂いがして落ち着ける。それに視線を下げればその形のいい双丘を拝むこともでき、正に極楽だった。



†††††††



「着きました。」


どうやら目の前にある男の夢に手を伸ばすか否かを真剣に悩んでいる内に目的地についてしまったようだ。



「人間同士の争いですか。」


フィオルの言う通り、目の前では、屑鉄を着込んだ奴ら8人が女性1人と子供3人を襲っていた。


「本当なら、俺が颯爽と助けにいきたいところなんだけど、それはフィオルに任せる。

俺は彼女達に取り入ってくるわ。」


「生死は?」


「皆殺し。今、俺達の力を言いふらす気はない。」


フィオルの力はかなり強力だ。だが強力であるが故に周囲からは怖れられる。

俺達の足場が固まる前に周りから注目を浴びるのは避けたい。


「御意。」


そう答えた次の瞬間にはフィオルは既に敵2人の息の根を止めていた。


「流石に速いな。

じゃあ俺も行動しますか。」


俺は1人で子供達を守っていた女性に近づきことの次第を説明しに行く。


「大丈夫か?」


「※※※※※※」


顔に苦笑が浮かぶ。全く違う星に来たのだから言葉が通じないのは当たり前だ。


「失礼。」


俺は彼女の腕を取り、体から微弱な電気を流す。それを彼女の脳の言語中枢まで流し、自分の言語と彼女の言語を比較対照し、彼女達の言語を理解する。

当然ながら、彼女には全くの無害だ。それに彼女の記憶を覗くような無粋なこともしていない。


「死ね!!」


彼女はそう叫ぶと俺を剣で切りつけてきた。

彼女の動きは生物としては精錬されていて、尚且つ素早い。しかし、それは生物としての話だ。俺の目には彼女の筋肉の動きや呼吸、目線の動きから彼女の次の行動が手に取るように分かる。

俺は必要最小限の動きでそれこそミリ単位で彼女の攻撃を避ける。


「俺達は偶然、この場を通ったので助けに入っただけなんだが。」


頑張って説得しようとしても彼女はかなり殺気立っていて話にならない。


「仕方ないか。」


彼女の剣を避け、俺は彼女の手首を打ち、剣を払う。更に彼女の目の前、ほぼ零距離に接近し、彼女を抱き締めた。


「えっ!?」


彼女の驚く声が上がる。


「大丈夫。君はよくやったよ。」


そう言って彼女の頭を撫でると彼女の心音が段々と落ち着いていくのが感じられた。


「リンちゃんと、アリシアちゃんは守れなかった。私が守ってあげなきゃいけなかったのに。

私はまた救えなかったんだ。」


緊張の糸が切れてしまったのだろう。彼女は泣き叫びひたすらに謝っていた。


「ごめん。ごめんなリンちゃん、アリシアちゃん。ごめん。」


彼女は自分を責めるかのように俺の胸で泣き続けた。



「……カオル様。」


どうやらフィオルの方が先に終わってしまったようだ。


「俺の方はまだ少しかかりそうだから、先に子供達の安全を確保してきて。」


「はい。」


俺は彼女が泣き止むまでは胸を貸してあげることにした。





この出来事をきっかけに俺とこの世界は大きな転機を迎えるのだった。

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