~けいどろ大会、手の凝ったつくり。~
帰ってきたー!!
高原さんが司会からマイクをもらって、朝礼台に立つ。
「今年はスペシャルイベントの競技の決定が遅くなってな。この企画を通すの、結構大変だった!! だが、おかげでルールもきっちり決まった!!」
「では、けいどろ大会の詳しい説明を行いましょう。通常のルール、泥棒を警察が捕まえる、捕まった泥棒は他の泥棒が助けることが出来る、というところは変わりません」
「詳しいことはその時計型の機械、“ウォッチャー”を見ながら説明しましょう。その機械は中高大学の工学部に手伝ってもらって作ってもらった貴重な機械なので、無くしたり壊したりしないように。明日スペシャルイベントが終わったら回収しますからね」
そう言われ、全員がその時計型機械、“ウォッチャー”を見る。
“ウォッチャー”には時計と同じようにボタンが四つついている。
「では、右上のボタンをご覧ください。それを押すと現在の味方、泥棒なら他の泥棒、警察なら他の警察の人間が赤い点で表されます。今は、ここにいる点が表示されているはずです」
俺も押してみると、確かに赤い点が表示されている。
「右下のボタンは泥棒は牢屋への場所が表示され、警察は――――後で話しますが、瞬間移動才能者を呼ぶときに使います。左上は他の味方との会話に使うことが出来ます。左下のボタンは残り時間です。ちなみのそのウォッチャー、警察が泥棒に近づくと、泥棒の方からはアラームが鳴り響きます。“鉄腕”で使ってるやつですね」
「他のルールとしては、捕まえる際、もしくは助ける際はそのウォッチャーとウォッチャーを合わせるだけとなります。警察に捕まえられた際はこの学校にいる瞬間移動才能者に移動させてもらいます。場所は間之崎学園から半径一キロを貸しきりました。刑務所は間之崎学園の体育館です。これの手間で時間が掛かったんですが。感謝するように」
余談だが、間之崎の体育館は広い。全校生徒が揃うときもあるからだ。
全校生徒自体も少ないので、幼、小、中、高、大全員が揃っても少ないため言うほど大きくは無いが。
「明日は10:00~15:00まで、中、高、大学全員を取りまとめた大いなる祭りだ!! 楽しむように!! 解散!!」
そこまで言い終わって、高原さんは朝礼台から降りた。
「明日は楽しみだぜ!!」「見てろよ、一人でも多く捕まえてやるから」「俺の速さに敵う奴なんていねー」と皆口々に言いながら自分の寮へ帰っていく。
「紅、俺達も一緒に帰るか」
「そうね、明日はスペシャルイベント。気合入れないと!!」
紅は笑顔でガッツポーズをした。
相当楽しみなのだろう。
「正直、なんか俺胸騒ぎがするんだよな……」
だが、このスペシャルイベント自体に俺は何だか嫌な予感がしていたのだ。
何か起こる。そんな予感。
「ん? 赤井らしくないわね。それともこの間之スポで舞い上がっちゃったの?」
紅はそんな俺の思いも露知らず、冗談だと思って笑っている。
そうなのだろうか。
疲れすぎか?
「おいおい赤井。胸騒ぎって何だよ胸騒ぎって!! 今日は俺らと大富豪大会しようじゃん!!」
いきなり後ろから背中を叩かれた。
その声は染山のものでいつの間にか肩を抱かれている。
「え? お前ら疲れてないのか?」
後ろには他のクラスメイトも見える。
「何言ってんだよ、祭りはこれからだろ!! 俺の寮の部屋に集合な!!」
何故か参加が決定した。
「じゃあな!! 絶対来いよ!!」
「マジか!?」
冗談じゃなく参加させられているようだ。
そうして俺はこのあと染山の部屋に訪れることになった。
結局三時くらいまで遊んだ後、ぶっ倒れるように皆寝てしまった。
疲れも溜まっていたんだろう。
そのころには俺の胸騒ぎも収まっていた。