~アピールされた相馬は感動を心の内に思う。~
タイトルの意味は読めば分かります。
「はい、肉じゃがとご飯と味噌汁」
相馬の待っていた机に三つが置かれた。
どれもホカホカと湯気を立て、見るからにおいしそうだった。
「では、いただきます」
相馬は料理を前に手を合わせて、篠崎に向かって言った。
「ど、どうぞ……」
篠崎が緊張した面持ちで言う。
まずは味噌汁を飲もう。
相馬は味噌汁に手をつけてみた。
うむ。
味噌のまったりとした味と昆布のいいだしが出ている。
「うまい」
つい口から漏れるほどの出来だった。
「本当!?」
「えぇ。女性には嘘をつきません」
多分、ですが。
「そう!! 良かった!! さぁ、他のも食べて食べて」
では、本命の肉じゃがをいただきましょうか。
器に入った肉じゃがのジャガイモを箸で取る。
酒と砂糖としょうゆとみりんのバランスが絶妙……。
口に入れたときのジャガイモのホクホク感……。
次に肉に箸をのばす。
上手く煮られていて、口の中でとろけるような……。
これほどまでにおいしい肉じゃがが果たしてこの世に存在していたのだろうか。
「凄い。感激した」
「そ、そんな……。そこまで褒めること無いってー」
「いや、本当に、これは……」
正直、高校生で出せる味のレベルじゃなかった。
それこそ、高級料亭のような。
「凄いですよ! 篠崎さん!」
珍しく興奮した相馬は篠崎の両手を取った。
「あ、ありがとう」
篠崎の顔は真っ赤になっていた。
その後。
「おいしい晩御飯をありがとうございました。私もこれから頑張るので、しばらく待っていてください」
そういうと相馬は篠崎の寮を出て行った。
5月10日(水)、間之崎学園。
「みんな、久しぶり」
『篠崎!!』
篠崎の挨拶に、染山、十島、天音、藤崎、紅が声を揃えた。
ずっと休んでいた篠崎が学校に顔を出していた
「篠崎、大丈夫だったの!?」
最初に聞いたのは紅だった。
「えぇ。あんな態度とっちゃってゴメンね」
篠崎は親身に対応してくれた紅に対して冷たい反応しか出来なかったので、申し訳なさそうな顔をしていた。
「良いのよ別に。いろいろあったんでしょ」
紅は別に良いよ、と手を振った。
「どうでもいい話だけど、その手錠は何じゃん?」
次に聞いたのは染山だった。
「どうして、片手だけにつけてるんじゃん? 女子の流行ってやつじゃん?」
そう、篠崎の右手にだけ手錠がついていた。
「あぁ、これは……」
どうやって説明したら良いんだろうか。
流石に吸血鬼になるのを抑えてるの、とは言えないし。
「そ、そうなのよ!! りゅ、流行ってやつなの、そうなの!!」
とりあえず染山の話に乗っておくことにした。
「でも、篠崎が来たと思ったら相馬が休みなんだよねー」
十島がぼそっと呟いた。
「まるで入れ替わりみたいじゃんなぁ」
染山も合わせる。
今日は相馬が学校を休んでいたのだ。
「え、相馬君休みなんだ」
篠崎も少し驚いた。
何とかするって言ってたけど、学校休むほどなんて……。
篠崎は相馬に対してまた少し申し訳なくなった。
一体相馬は何をしているんだろう。
事細かに料理の説明をするのは難しいです。
危うく料理マンガならぬ料理小説となるところでしたけど。