~もう一つの戦い、影の暗躍。~
今回は今まで騎馬戦争でまったく名前の出なかったあいつの登場!!
各地で過ぎたる世代が争っている中、白組の大将付近でもある戦いが起きていた。
「白樺、俺はでないのかー」
「お前、陣地に大将と俺と漆原だけにする気か。流石に少なすぎるってか、この三人の中で一番攻撃力があるのはお前なんだから」
「つってもこないだろー、敵なんて」
と、話していたときのことだった。
さて、そろそろですかね。人も出払ったようですし。
その呟きは誰に聞かれることは無い。
「ではチームアサシン。スタート……、というほどでもないですね。どうせ私の動きで動くように指示してますし」
そしてある男が地面から話していた三人の副将のうちの一人の帽子を狙うように飛び出した。
「気がする」
「何!?」
だがその瞬間をまるで見越していたかのように、漆原と呼ばれていた男が呟いた。
それは漆原がつかう暗号のようなもの。
敵が近づいた、気配を感じる。を小さくしたものだ。
地面から手を伸ばして出てくる男に対して、さきほどまで戦いに出ようとしていたある男が2mほどの長い棒を使って応対する。
その棒を下から上に、帽子をはじき飛ばすような軌道で振るう。
「……よもや」
飛び出した男はその攻撃に当たってしまう。
だがその攻撃は当たっているはずなのに、それが元々立体映像だったかのようにすり抜けた。
「ばれてしまうとは。思いもよりませんでした」
言っていることと口調がかみ合っていなかった。
「ん? 見ない顔だな。後輩か?」
棒をもった男が問いかける。
「えぇ。貴方達から見れば後輩です。不精、相馬海と申します。まさか、ばれるなんてことがあるとは思いませんでしたけれど」
相馬は騎馬戦争が始まる直前、高原からあることを聞いていた。
「君はチームアサシンを率いて、敵の総本部に奇襲を仕掛けて欲しいんだ」
「なるほど、ですがどうやってそのようなことを?」
「君の能力で地面に潜んでいるといい。君の部隊の他の皆はそれぞれ隠密系の才能者をそろえたから。とはいえ、君ほどじゃないけれど」
「随分と褒めてくださるようで恐縮ですが、それでも“過ぎたる世代”に勝てるでしょうか?」
「きっと途中から陣地内の戦力が激減する。最高学年同士の戦いが起きるから。そのときにでも出てくれ」
「……分かりました」
今、高原先輩が言ったとおりのことが起きていた。
流石だと思う。
「しかしお前まずい状況だろ。後輩一人対副将三人だぜ? ま、名乗っといてやるよ。一倉櫨。よろしくな。っつってもさっさとテント送りだよ」
「私は一人でなど来ていないのですが」
「俺が気がする、と言ったのは別に一人じゃねー」
一倉先輩の声に相馬と漆原が答えた。
その声にあわせるようにありとあらゆるところから紅組の選手が集まってきた。
そして取り囲む。
「なぁ漆原。俺にもわかるように説明してくれ」
「簡単に言うと、まずい。大将まで囲まれた」
「腕の見せ所だろ? 一倉」
三副将は取り囲まれるという状況にも動じていない。
大将、白樺もどうということはない風だ。
「気配でも消してたのか? だったら俺の前に出てくるのは得策じゃねえよー。学生だから仕方ないか? こんな祭り出て活躍したいもんな。んだが無理だ」
一倉と言う先輩がそう言うと、いきなり囲まれているある一点に棒を投げつけた。
それは刺さるように、ではなくただ当てるためだけのように。漢字の一になるように水平に当てた。
驚いた下級生の紅組の生徒はそれに当たってしまう。
しかし、それで終わりではなかった。
『!?』
棒を当てられた生徒全員が床に倒れた。
そして棒を触って何かを伝えようとしている。
「……まさか、重い、のか?」
「ご推察のとおりさ相馬君。俺の才能“偏有引力”。物体のみに重力を与える才能さ。空間内の重力系能力者より使い勝手がいいのが特徴さ」
一倉先輩が棒を取りにいく。
それを軽々と扱って見せた。
「ところで君がリーダーのようだけれど、帽子を見てないと駄目だと思うぜ?」
その声はいつのまにか倒れていたアサシンの生徒のすぐ横に立っていた漆原先輩のものだった。
その手に赤い帽子がいくつも。
「困りましたね……」
思わず相馬は苦笑いを浮かべた。
問題。
キャラが増える増える。