~祭りの雰囲気が二人に流れる。~
「一殴りで終わらせるっ!!」
宴は間合いを一瞬で詰め、大地に向かって拳を振りかぶる。
が。
「地上戦で俺に勝てるわけ無いだろ、液状化」
その一言とともに、大地の視界から宴が消える。
正確にはつるりと滑って地面でこけていた。
「沼地で力が入るわけ無いだろ。馬ー鹿」
大地は地面を液状化させることで沼のようにし、宴を転ばしたのだ。
「帽子はいただく」
大地の手が宴の帽子に伸びる。
だがその腕を宴に掴まれ後ろに投げられる。
「一筋縄ではいかない男だなまったく!!」
大地は地面を液状化させ、クッションのようにして着地した。
「今のはちょっと危なかったかもな」
滑りながらも宴が立ち上がる。
「先輩、普通に地上戦じゃ勝てませんよ」
「だな。お前が居てよかった」
宴は何も無い空中に足を踏み出した。
何をやっているのか分からず大地は首をかしげている。
だが、宴はまるで階段があるかのように空中を駆けて行く。
「おい、どういうことだよ……」
「障害物マラソン見てなかったみたいだな。俺とコイツはコンビ組んでんだよ」
「共闘です。コンビじゃない」
宴が瀬々薙と肩を組もうとするが、それは弾かれた。
「――――ただの共闘関係ってのも惜しいですけど」
「何か言ったか?」
「気のせいですっ!!」
パシン、と頭を叩かれた。
「まったくこの人は……。才能発動してなかったら絶対コンビなんて言わないのに……」
瀬々薙が何かぶつぶつ言っているが、宴は気にしない。
「俺はお前を信頼してるから。俺が踏み出したところに足場を作ってくれ!!」
そういうと宴はまた走り出した。
「ちょっとカッコいいとか思いました。駄目です、間之スポって雰囲気に流されてます」
頭を振りながらも、正確に宴が踏み出した足の真下に空気を固めて作った足場を形成させる。
「そいつは想像してなかったな……。ならこれで!!」
大地は地面に手を突き刺すと、ちゃぶ台返しのように腕を振り上げる。
すると地面が昇竜のように盛り上がって杭のように宴を襲う。
「おぉぉ!!」
それを間一髪で回避するが、その杭は大地の動きに合わせてまだまだ飛び出してくる。
これでは近づくことも出来ない。
「先輩!! その泥の槍みたいなのを無視して大地先輩のところに突っ込んでくれませんか!!」
瀬々薙が何かを思いついたように言う。
「おいおい、本気で言ってるのか!?」
「さっさとやらないと、後15秒ですよ!!」
どうやら瀬々薙は本気のようだ。
何を考えているのだろう。
「いいや。やってみないと始まらないってなぁ!!」
考えることをやめ、足場を地面に向かって蹴るようにしてロケットのように大地のところへ向かう。
「諦めたか、それもいいだろう!!」
大地が腕を振り上げた。
土の槍が来ることを覚悟した。
……だが、何も起こらなかった。
「何!?」
「コイツは面白ぇ!!」
慌てふためいている大地に宴の右ストレートが炸裂し、そのまま地面に落ちた。
そして着地したときに違和感を感じる。
地面と足の間に、何かある。
「それは私が作っておいた空気の膜のような物です。それに当たって大地先輩の土の槍を止めていたんですよ。とはいえ結構広範囲にこれを敷いたので。ちょっと疲れましたがね」
瀬々薙が地面に降りてきながら説明した。
そして説明が終わると、大地の帽子を手に取った。
「これは先輩が受け取ってください」
「え? あぁ、いいよ。お前にくれてやる」
宴は才能が切れたのか、少し落ち着いてきていた。
「いいえ、先輩が受け取るべきです。……最後の間之スポなんですから」
最後の一言を聞いて、宴は少し恥ずかしそうに笑った。
「まったく、後輩に心配されるようじゃあまだまだだな」
と言って帽子を受け取った。
「ここで宴選手、大地選手を破って帽子をゲット!! 白組の副将の一角が一時敗北となりました!!」