~過ぎたる世代、本領発揮。~
「先町が負けた」
白組の陣地の中央で、三人が話している。
「ポイントは稼いだでしょう。十分十分」
「どうするんだよ白樺、アンタのハニーがやられちまったようだが?」
白樺はふぅ、と溜息をつく。
「アイツが前線でお前にいいとこ見せたいなんて言うからしょうがないの。負けは想像できた。十分な働きはした。褒めてあげましょう」
「ったく、お前は本当に鉄壁だな。先町も先町だが」
「貴方に関与される筋合いは無いわ。そうね、そろそろ最高学年の才能を見せ付けるときかしら」
「おー、やるねあの二人」
「想像以上だな。紅もそうだが、あの赤井って転校生もなかなかだ」
紅組の陣地の中央でも、高原と宴が話していた。
「おそらく白樺は俺らの学年をどんどん起用してくるだろう。俺達も出るぞ」
「つってもお前は出ないだろ? 俺は出ていいのか?」
「2分。それ以上するなら一度敗北してテントで休憩しろ」
「テントまで策に入れてる辺りがお前らしい。じゃ、行くかぁ!!」
宴は持っていた赤旗を上に放り投げる。
それを合図に、副将の何人かがおぉ!! と声を上げる。
そして宴は落ちてきた旗を振り前へ向ける。
「出陣だぁ!!」
「これはぁ!? 両軍の大将付近から副将が中央へ向かっていきます!!」
「おそらく両方考えることは一緒だということでしょー。先町がやられたことが起爆剤になったよーです」
実況の声も思わず大きくなる。
観客もざわめき始めた。
「フィィィィィバァァァァァ!!!!」
旗を持ち、顔全体を愉悦に歪ませる笑顔で宴が叫ぶ。
おそらく“無令効”を発動して、脳まで100%使っているのだろう。
「赤旗先輩、元気ですね」
「お、ついこないだは世話になったじゃねぇか、瀬々薙」
宴が走っていると、隣に瀬々薙が着いてきた。
「やるか、共闘」
「上等ですよ」
二人は拳を合わせた。
「吹っっっ飛べやぁぁぁ!!!」
宴は敵軍の固まっているところの中央に降り立つと、旗を思い切り一回転させそこにいた白組を全滅させた。
「帽子回収しまーす」
吹っ飛ばされた白組の帽子は瀬々薙が回収する。
「よしっ!! 次!!」
「後一分と十秒ー」
宴と瀬々薙がどんどん進んでいく。
「なら残り時間は俺のために使ってもらおう!!」
その進んでいく目の前には立ちはだかる一人の男。
「……三十秒だ」
「残り一分」
「二対一か、止めて見せるさ!!“溶ける大地”!!」
立ちはだかっていた男が地面に触れると、飴細工のように地面が流動する。
「相変わらずだな、大地。今宵は宴、“無令効”」
「貴方のことは知りませんけど、恐れ戦け“辟易する空気”」