~コンビプレイ、炸裂。~
実はずっと紅のライバル的な才能の構想があったんですが、なかなか出せませんでした。
ようやく先輩という形で出たのが先町なんですね。
紅のほうが俺より早く退場していたので、テントからは先に出た。
俺が出るまでに、ついさっきまで起こっていた出来事をまとめよう。
あの先町先輩はいまだ負けておらず、こちらの被害は増大している一方だ。
高原さんはいまだ手らしい手を打っていない。
最高学年でもある過ぎたる世代はいまだ誰一人負けておらず、中等部の退場者は両軍合わせても参加者の70%近くに上っている。
戦線は俺達の防衛線が引かれている所のすぐ直前、三年生が迎え撃っているところだ。
「後一分か」
時計を見て思う。
モニターを見ると、紅がテント前で待っていた。
「ったく、あれ本気でやる気か」
先ほど話していた紅と俺との策。
少し無茶があると思うんだが……。
というか策にすらなってないし。
ふぅ、と溜息をつくと30分が終了した。
「残念だよ、まったく」
俺はテントを出た。
「もう負けられないからね!! 絶対成功させるよ!!」
「……高原さんも残り30分まで好きにしろって言ってたからな」
おそらく残り30分になってから劇的な最後を迎えるつもりなんだろう。
……遊んでるな。
でもやっぱり、最高学年はいい笑顔で楽しんでる。
これをやるのも大学にいってしまえば出来ないから。
でも。
先町先輩には、一時退場してもらおうか。
「さっさと走るよ!!」
「お前の速度には着いていけないだろうがな」
紅が、先町先輩が闘っている所まで先行した。
「ん? そうか、もう復活か」
それに気づいた先町先輩も警戒態勢を取る。
「先町先輩、先輩の能力の名前って何なんですかぁ!!」
紅は回し蹴りをしながら叫ぶ。
だがそれを片腕で防いで先輩も叫ぶ。
「よかろう。お前になら話してもいい。“発射される殴撃”、だ!!」
そして先輩は紅に殴りかかる。
砲撃のような一撃だが、当たる直前で膝をあて軌道をそらす。
「ふぅ、確かに名前には見合いそうね!!」
拳が突き出されがら空きになった脇腹を狙う。
「甘い」
だがそれを逆の腕で殴って止めようとする。
通常蹴りと拳なら蹴りが勝つのだが、そこは一度紅に勝っている先町先輩。
本来なら拳が勝つという結果だった。
だが。
「先輩こそ、背後に気をつけましょうね!!」
その突き出されようとする直前にその拳が誰かに掴まれる。
「赤井、君……!!」
思わず先町が振り返ると、そこには先ほど倒した転校生こと赤井の姿が。
赤井に触れられた先町は才能の力を失い、掴まれてもそう簡単には振り解けない。
そして、紅の蹴りも脇腹にヒットする。
「ぐっ……!!」
赤井に掴まれている腕とは逆の手で脇腹を押さえるが、紅は止まらない。
「はぁっ!!」
今度は紅が顎にヒットするような綺麗な前蹴りを繰り出す。
そこは先輩、赤井に掴まれていながらも後ろに下がる動作で避ける。
しかし、紅の顔は笑っていた。
「忘れてませんか? 帽子にはつばがあるんですよ?」
「!?」
紅の蹴りは最初から顎を狙っては居なかった。
狙っていたのは帽子のつば。
見事にそれは命中し、帽子が空へと飛び上がる。
紅は足を戻してそれをキャッチした。
「これはこれは、ついに最高学年で一時退場者が現れました!! しかも、倒したのはなんと、後輩でもありエース、紅鍵音選手と転校生、赤井夢斗選手です!!」
実況の声が辺りに響いた。