~過剰戦力騎馬戦争。~
もうなんか三日に一回になってる気が……。
「おぉっとぉ!! 期待の選手、紅選手。ここで一時敗退となります!!」
「あの三年生はダークホースでしたね。データはまだ届いていません」
実況も解説もその光景には驚いていたようだ。
「ハッハッハ。これは驚いたね。あれは、誰だい?」
「アイツの腕力だけなら、俺は負けるからな。仕方が無い」
先輩も驚いてはいるようだ(ただし口ぶりだけ。実際は想定の範囲内なんだろうな)。
と言っている間に、紅の部隊、かなりの武力系才能者を詰め込んだ部隊のほとんどが敗北していた。
「脆いぞ。石を砕いているようだな」
紅を負かした先輩は軽々と言い放つ。
「おい先町。普通の人間に石は砕けん」
その先輩の隣に、友達だろうか、もう一人立っている。
どうやら謎の先輩の名前は、先町というらしい。
「は? あんなもの握りつぶしたらすぐに砂になるだろうが」
「お前きっとネタで言ってるんだよな」
友達の人のほうはやれやれ、という身振りをしていた。
この試合が始まる前、実況と解説があることを言っていた。
「今回の騎馬戦争、どう思いますかね」
「今年は過ぎたる世代と呼ばれる人達が最高学年となっていますからー。武力系才能、それも特異的なものが非常に多いでしょーから荒れそーですね」
そういうことか。
実は結構前から少しは耳にしていた。
過ぎたる世代。
人間には過ぎた力を持った学年があると。
何でも、その学年だけで国の軍隊と闘えるとか。
とにかく戦闘においての才能が化物じみているのだそうだ。
その点では、あの黒服たちはよくこの世代を捕まえられたな。
いや、あれは“超・念能力”の“痛”。桜島舞人がいたからか。
あれこそ一人で軍隊に立ち向かえる人外だろうからな。
話が逸れたが。
とにかく、今年の騎馬戦争は荒れるということだ。
「赤井君、君達の部隊を後方に下がらせて。残りの皆は守備のフォーメーション」
高原さんの号令が響いて、俺達の部隊も下がる。
ちなみに俺も部隊長、“キャンセル”を仕切っている。
紅の部隊は“ホープホッパー”という。
相馬の部隊は“アサシン”。まさしくそのまんまというべきネーミングである。
俺達の部隊は一部の部隊を除いて三年生が大将側によっているため、火力に乏しいが、その代わり防御は凄まじく高い。
昨日言っていたこととは大違いだ。
「防御か。無駄な」
「打ーちくーだけー!!」
一番槍とも呼ぶべき紅を破った部隊が、俺達の元に迫る。
「そういう相手こそ君達の出番だろうね。何せ敵の武力無効化が君達の部隊のコンセプトなんだから。それに俺の部隊もある程度手助けする」
「高原、お前のことだから俺達の考えは分かってるんだろ? だったら、余計なこと考えないですむ」
高原さんの号令に、先町さんが叫んだ。
「俺は目の前の敵を倒す。白樺にそう言われたからな」
「かっこいーよー!!」
「お前も働け」
「君一人で十分だと思うけどな」
その会話を交えながら、俺達の部隊と先町先輩の部隊もぶつかった。