~そして下ごしらえこそが、一番大切なのかもしれない。~
「合言葉は?」
「きみ、ばからし」
「入れ」
それは、白組のテント前のことだった。
「白樺様、報告です!!」
白組のテント。
そこに入って行く生徒が一人。
その生徒は何故か赤いはちまきをしていた。
「紅組の高原衣の戦略が書かれてある紙、および戦法を聞き取ってきました!!」
その男の手には、高原が戦略の説明が書かれているといった紙があった。
その紙を白組のテントで座り込んで待っていた白樺に渡す。
「まったく、こちらには密偵も送って来やしないなんて舐めきってるわね。なら、その油断に漬け込ましてもらいましょう」
白樺はその紙をみてにやりと笑う。
紙を手渡した男が赤いはちまきを取って地面に落とす。
そのはちまきの下には、白いはちまきが顔をのぞかせていた。
「相手はあの高原衣。密偵くらい送って当然よ」
「あいつ等は先手必勝短期決戦の全勢力を突っ込ませてくる気ね。ならこっちはその隙に総大将を一気に狙いに行くわよ。1~5班で敵の勢力を時間稼ぎしている間に、6,7班が回り込んで敵軍に。8,9班は防御に回って。もしも6,7班は敵の防御が想像以上に堅いと思ったら、こっちが回り込んでいるんd名から、挟み撃ちにしなさい」
『了解です!!』
「簡単な策はこんなもんよ。ただ、相手は高原衣。その点だけ気をつけて」
「大体、少し妙。あの男なら密偵くらい気づいてもおかしくないと思っていたけれど。思い違いかしら」
すこし小首をかしげて考える。
いや、それは無い。
あの男はいけ好かないし今は敵だけれど、能力に関しては評価している。
あれこそ化物だ。人心の掌握、そして統率という民衆のことにおいてあの男の右に出るものを私は知らない。
「いや、思い違いなんて無いわ。私に限ってね」
大体、こういう思考をされてる時点で、アイツの術中よ。
「皆、よく聞いて。少し、策を変更するわ――――――」
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紅組のテントでは、ぞろぞろと集まっていた皆が寮に戻っていく。
「しかし、あれだな。高原さんらしくないというか……。もっとすごい策でもあるのかと思ったけど……」
赤井が呟くと、紅がすごい勢いで口を塞いだ。
「もが、もがもがー!!」
「いいから黙って。話があるから、相馬君も、私の部屋に来て。ほら赤井。私の部屋に向かうわよ」
「もがー!!」
何だ何だ!?
そう思いつつも紅の表情は真面目なもので、相馬もやれやれ、といった表情を浮かべていたので、とりあえず寮の紅の部屋にいくことになった。
紅が部屋のドアを閉め、三人で座る格好に。
そして、こう言い出した。
「やっぱり高原さんは、天才よ」