~料理と戦術は似ているかもしれない。下ごしらえが必要だ。~
ついに騎馬戦争編。
長かった間之スポもある程度埋まってきましたー。
今日は俺達の学年種目が終わってしまえば、もう仕事は無い。
夕方になって寮に戻ろうかとしているとき、校内放送で高原さんからの報告があった。
「生徒会長、もとい紅組の総大将、高原だ。紅組は明日の騎馬戦争についての会議があるので、至急紅組テントに集まってください」
高原さんにしてはまともな放送だった。
……いや、生徒会長だからまともな放送じゃないと駄目なんだけどね?
「どけ、高原衣。私にも放送させろ」
放送室の中でなにか言い合っているのだろうか、少し小さめの声が放送される。
「あー、白組総大将、白樺美紀だ。白組も騎馬戦争についての話があるから、さっさと白組のテントに集まれ」
美紀様ぁ!! という声が辺りから聞こえてきた。
……あったことないけど、この人もこの人でカリスマ性が高い人なんだな。悪い意味で。
「じゃあ、紅。行くか」
「そうね」
相馬は周りにいなかったが、まあ向かっているだろう。
テントに向かうと、相馬と合流した。
「では、お前達に明日の騎馬戦争についての説明及び戦略の説明をする!!」
『おぉぉぉ!!』
高原さんがテントの中にあったパイプ椅子の上に立つ。
「手元に紙は行き渡ったかー」
先ほど高原さんの辺りから順々に紙が配られてきていた。
「今からその紙に書かれていることをきっちり覚えること!! 俺の言いたいことはそれだけだ!! だが一応、戦略の説明を一度だけ言う!! 覚えておけ!! 戦術ってのは、一人手違いを起こすだけで敗因になる!! その事を肝に銘じろ!!」
『はいっ!!』
随分と体育会系な感じだ。
祭り気分ではあったが、思わず気を引き締める。
「と、言ったが。戦場というのはもちろん事前の策、つまり戦略が必要だ。だがな、戦場ってのは相当に情報が錯乱する場でもある。もしも状況が急変、戦略を続行不可能と思った場合は、臨機応変に動くことだ」
高校生とは思えないほどの意見だった。
「もちろん無茶なことを言うようだが、お前達なら出来ると信じてる」
『そうだぁ!!』
「では言うが、俺達の戦略は簡単に言えば短期決戦だ。こちらの全勢力を相手に試合開始当時に、一気にぶつける。それで崩れるもよし、崩れないもよし」
「間之崎随一の天才とまで言わしめた高原さんにしては、随分荒い戦略ではありませんか?」
その声は周りの中から。
「そうだね、滅茶苦茶荒いよ?」
フフッ、と高原は笑う。
「どうでもいい話だけどさ、こういう戦争ってのは、戦う前から始まっていると思うんだよ」
皆の顔が急に真面目な顔になった。
どうかしたのか?
「俺はそういうのがあんまり好きじゃないから、する気は無いんだけどね」
「ただ、負けたいわけじゃない。勝ちたいさ。俺は皆に、この間之スポを楽しんで欲しいからね」
「負けても努力したから悔いはない、嬉しい、って話があるけどさ。流石にありゃ嘘だ。勝つために努力してんのに、負けて何が嬉しい? 何故悔いが残らない? そう言ってる奴等は、勝てねえよ」
「俺は俺の全力を尽くす。だから、お前達もお前達の全力を見せてくれ。お前らは、その才で、ここに選ばれたんだから」
「だから――――――」
沈黙が辺りを包む。
「勝つぞ」
『うぉぉぉぉ!!』
地響きのような声がテントに響き渡った。