~棒倒し壮絶!!~
「さて、試合も終盤戦に差し掛かっております!!」
実況の声がこだまする。
先に均衡が破れたのは、俺達のクラスだった。
「直☆撃!!」
嵐山の嵐の槍がついに棒に直撃したのだ。
「オラオラオラオラオラァ!!」
聞いたことのあるような雄たけびを上げながらその方向に向かって連射する。
「つ……おぉ……!!」
「負けて……、たまるかぁ……」
俺達のクラスも必死で応戦するが、間に合わない。
そのまま棒を倒される。
自軍の棒は守備勢力と敵対勢力がぶつかり合っている残り一本だけとなってしまった。
だが、その次の瞬間にも急展開する。
「温度ってテリトリーなら、俺はこの学園一を誇るといっても過言じゃない、じゃん!!」
「っつ……、ここまで……、温度を上げられるのか……!?」
あたりに爆風を撒き散らしながら。
棒が、霧散した。
余りの超低温と超高温に耐え切れなかった棒が、染山の超高温の勝利によって一気に耐久性を失い、温度の急上昇をむかえて細かい粒子として爆発したのだ。
「か、勝った……。カ○リーメイトカ○リーメイト……」
染山はげっそりした顔でふらふらしながら、ポケットの中のカロリーメイトを取り出した。
のだが。
そのカ○リーメイトは一瞬で炭に変わってしまった。
「ぬわぁぁぁ……!」
染山の“体温自在”は、自分の触れている一次的なもの、つまり着ている体操服までならば効果範囲に入るので、燃えることは無い。
ただ、カ○リーメイトはポケットの中にあったため、効果をもろに受けてしまったのだ。
そのまま染山は倒れこんでしまった。
そしてここから更に急展開を迎える。
「やっと、効果範囲……。“重力遮断”」
篠崎は敵の妨害を振り切ってようやく才能の効果範囲に入ったらしい。
その声と同時に、敵の棒の重さ、そしてその周りに集まっていた生徒達も全員が浮かび上がる。
「っつ、防御、何やってやがった!!」
「ごめんっ!!」
このまま空中に浮かび上がった棒が地面に触れた瞬間、俺達の勝ちだ。
「上手く支えろ!! 重さがなくなってるんだから、支えるのも楽だ!!」
『おぉ!!』
「バランスが崩れた今が勝機だ!! 行くぜぇ!!」
『おぉ!!』
両軍がラストスパートに入る。
そして俺達の軍の棒も、かなり限界だった。
「傾いてきたぞぉ!!」
長時間棒を抑えていたためか、俺達の棒が少しずつ傾き始めていた。
このままでは倒れるのも時間の問題だ。
「……!!」
その瞬間、俺に閃光が走った。
十島の才能ではないが、閃き。
「皆、悪い!! ここ離れる!!」
赤井はそう言い残して、相手のチームへと走っていった。
「んな!? この一大事に……!!」
「頼む!! 俺が向こうに着くまで持ちこたえてくれ!! 出来るだろ!!」
向こうまで行ければ、勝てる。
その勝算は、頭の中で出来た。
後は、時間との戦い。
「畜生!! 赤井の分まで頑張るぞぉ!!」
「ぶっ倒してやれ!!」
両軍の叫び声を後ろに、俺はひたすら走り出した。