~どろどろと絡む、愛情の輪。~
うーん。
何か展開がそれるように変わってきました。
「え? どういう状況なのこれ?」
「白道が、指輪渡してた?」
赤井と紅は出店の陰に隠れて白道と叶の様子を見ていた。
「面白くなってるな」
「……えぇぇぇ?」
「おやおや」
「あらあら」
気がつくと、出店の後ろには藤崎、天音、相馬、篠崎もならんでいた。
「って、お前ら!!」
「どうして!?」
皆に気がついた赤井と紅が、隠れていただけに相当驚く。
「お前らがラヴラヴで気がつかないのが悪い」
「そんなことより……、こんな状況に樹野君が……、気がついたら大変」
十島が興味深いことを言う。
「樹野……、って確か」
叶先生が好きとか……。
「ってまずいよ!!」
もしもお姫様抱っこなんてしてる姿が見られたら……。
「そのまずいって状況、実際に起きちゃってるね」
赤井の声に、後ろから合わせる声が。
「会長さんまでいたんですか。で、そのまずい状況ってのは?」
「いや、こっから100mほど向こうにその件の樹野君が持っていたたこ焼きを落として驚愕しているよ」
うわ、惚れた腫れたの修羅場じゃん。
「その上、白道さんを睨んでいるね」
「完璧にチェックメイトじゃねぇか!!」
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「ア、アンタ、誰なんですか?」
樹野は驚愕したように目の前のカップルを見る。
「樹野?」
「おいおい、大丈夫か?」
樹野の周りに居た友達が思わず息を呑む。
樹野の気迫に。
「ん? 少年? どうしたんだい、人を射殺すような目で見て」
「あれ? 樹野君じゃない?」
叶先生の反応から、想像はしていた。
確かに気は無いと分かっていたけれど。
男として、やらなきゃならないことが出来た。
「叶先生、その男は?」
「よくぞ聞いてくれました!! 彼が私のフィアンセなんだよ♪」
富士叶は白道月影のことを追い駆けすぎて、周りからの好意に気がついても、自分に向けてくれていた愛情には全く気がついていなかった。
ピキッ、と空間が割れるような、そんな音が周りに響いた気がした。
その音に気がついたのは、樹野、樹野の友達、白道、周りに居た人々、そしてこの状況を見ていた高原だった。
「あなたが誰なのかは私の知るところではありません」
樹野は白道に指して宣告する。
「今、俺に話してるのかぁ?」
白道は、樹野の身にまとう絶大な覚悟を身体に受けながら、それでも飄々と構える。
「ですが、意地です。ただの。男と男の、決闘をここで申し込む!!」
樹野は、白道月影に宣戦布告した。
交じり合うはずの無い、通常の世界で生きてきた男と裏の世界で生きてきた男。
それが、一人の表と裏を経験した女を前に、絡み合うこととなった。