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Skills Cross ~Another Life~  作者: 敷儀式四季
間之スポ編
62/144

~月は甘く、願いを叶える。~

少し遅くなったのは、この話に手間取ったからで。


激甘です。


読めば分かります。


他に書いてる恋愛小説があるんですが、それが影響したのかな……。

「いつもいつも白道は私の知らないところで凄いことしてるんだよね」

「ん……、いや、そんなことないぜぇ? 想像してるほどじゃねぇよぉ」

「それにその手柄とか、お土産とかも、全部私やお姉ちゃんにくれてた」

「あれは別に、俺がいらなかったからなんだがなぁ……」

 白道は屋台が並ぶ中で、頭を抱えていた。


「白道」

 その言葉は、白道のしどろもどろな言葉を止めるには十分なほど、強い一言だった。


「私はもう、子供じゃない」




 昔の約束。


「白道、その、大好きなの!!」

 まだ幼かったときの、いやそれから変わっていない告白。


 白道は、それにちゃんと答えてくれたよね。

 いや、はぐらかされたのかな。


「……、驚いたな。青天の霹靂へきれきとはこのことだ」


 あのときは思わず白道の口調もなまらなかったよね。


「なぁ、叶。それは」

「本気!!」


 生半可な気持ちで告白なんかするはずないもの。


 白道は私の目を見て言ったよね。


「……、少し、時間をくれ。それは俺とお前にとって大切な時間だ。叶、お前が大人、28くらいになっても俺のことを好きでいたなら、いや、好きでいれたなら、そんときは本気で答える」


 って、言ってくれたよね。




「子供じゃない、その言葉の意味だって、白道なら分かるでしょ」

「…………、俺だって、忘れていたわけじゃねぇ」

 やっぱり、白道はあの日のことを覚えていてくれたようだ。


「お前、どうしてこんなおっさんに惚れてんだよ、まだ20代だろ?」

「28だもん、もうすぐ三十路よ? それに、約束までちゃんと好きでいたよ?」

「俺は38だ。ったく、10歳も離れてんだぜ?」

「干支は一回りしてないもの」

「だがよぉ!!」


「……私は、ずっと本気だよ。白道、ちゃんと答えて。振られたら、ちゃんと諦めるから」

 その一言は、少し涙が混じっていた。



「ったく。泣くんじゃねえよ。可愛らしいつらが台無しになっちまうだろうが」

 白道は、叶の目を拭う。


「後悔しないか…………、なんて今更言っても聞かないよなぁ」

 ふぅ、と大きな息をつく。



「…………、■■だ」

「え?」

 白道はあまりにも小さい声に、何を言ったのか分からなかった。


「あぁもう。好きだつってんだよ馬鹿野郎!! ほら、これ!!」

 じれったくなったのか、白道はそこが祭りの出店の真ん中であるということも忘れて告白を叫んだ。


 そして、ある袋から何かの小さな、手に収まるくらいの箱を取り出した。


「さっきそのでかいぬいぐるみをとったときに一緒に落ちた箱だ。ほら」

 その箱を白道が開けると、そこにはプラスチックの安っぽそうな指輪が。


「今はこんなものしか用意出来ねぇが……」

 頭をかきながら、白道も少し赤くなっている。


「……っておい、叶!?」

 返事がないのが気になって箱から目線を上げると、叶は目からボロボロと涙をこぼしていた。


「へ、嘘……。本当に……、夢じゃ、ないの……」

 叶は指で頬をつねっている。


「痛い、夢じゃないの、これ……」

 そう呟いて、何故か一気に座り込んでしまった。


「どうした!?」

 白道も思わず心配する。


「い、いや……、その、ね……。腰が、抜けちゃった……」

 エヘヘ、とはにかみながら答える。


「昔からこんなんなんだから……、ったく、後悔するなよ? 俺とつるんでろくなことないのは知ってるだろ?」

「むしろ断られることばっかり考えてたから……」


 だってこんなにはぐらかされたんだもん、と少し怒った目線を見せる。


「いや、まだまだ先の長い少女の夢をかたきを討ってくれたってだけのおっさんなんて幻想でぶち壊すまねは本気でしたくなかったんだよ……」


 お前はあの頃から可愛らしかったし、今だって十分に可愛いからな、と後で付け足した。


「そう言ってもらえると嬉しいよ……」

 ずっと叶は笑顔が変わらない。


「ところでだな」

「何?」

「こんな公衆の往来でしゃがんだ状態で涙ながらに語られると俺がまずい」

「へ?」


 気がつくと、周りは二人を避けて円状になっていた。


「おんぶと肩車とお姫様抱っこ、どれがいい?」

「今日くらいはー、お姫様抱っこ!!」

「何の迷いも無く一種の羞恥プレイを選んだなぁ……、後悔すんなよ?」

「もちろん!!」


 白道はそのまま叶の身体をひょいと持ち上げる。


「軽いな」

「気を使ってますからー」

 そして何事も無かったように円状になっていた人だかりを抜けていった。

……。


甘いな!!


考えていたこととはいえ……、甘い!!

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