~カルテット・デート。~
カルテットの意味としては四重奏、ていう意味です。
「随分と懐かしい話を持ってきたもんだなぁ」
「あの後、ツキの雇い主のアジトに奇襲しかけて壊滅させたんだよな」
「いや、本当懐かしいわ」
二人はうんうんと頷いている。
「お父さんやっぱりかっこよかったんだ!!」
葉月は目をキラキラと輝かせていた。
「そういうなよぉ」
デレデレとした顔を太陽は見せた。
「というか、今のどこにかっこいいところがあったんだろうなぁ」
「やっぱり俺の娘は見る目が違うってこった」
「……親馬鹿めが」
ふぅ、と白道は溜息をついた。
その時、白道の携帯が震えだし、ジャズの音楽が流れ出した。
「お、メールじゃね?」
「……来たか」
白道は携帯を取り出して、メールを見る。
「叶からだろ? どうだった?」
「ったく……」
メールの内容を見て、渋い顔をする。
「……。畜生、行ってくる」
白道は立ち上がると、そのまま出て行った。
「やっと覚悟決めたか。ほら、さっさと行って来い」
手をひらひらと振って太陽は出送った。
「ふぅ。アイツを見てニマニマするのも良いけど、俺らも家族デートするか」
「そうね、行きましょう」
「行きましょー!!」
太陽達家族三人も出て行くことにした。
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「ベビーカステラ食べようよ、赤井!!」
「あぁ、良いけど……、紅、お前随分元気だな」
「当たり前だよ、まだまだ祭りは始まったばかりだよ?」
紅は赤井の手を引いて屋台へ引っ張っていく。
「あの二人、分かってやってるのか?」
「……多分、……二人とも天然」
「ふふっ。随分と大胆になったわね」
「微笑ましい限りです」
他の四人、藤崎、天音、篠崎、相馬はその後ろを少しずつ間隔をあけながら歩いていた。
「元気だね、元気は良いよ、本当」
「祭りだしね。……宴の口調が移ったかも」
その後ろから、二つの声が。
「会長と、姫岸先輩ですか?」
高原衣と姫岸鉄が後ろから腕を組んで歩いてきていた。
「まったく二人は熱いね」
「本当、よく出来たカップルだ」
「いや、それを会長が言いますか?」
藤崎がたまらず言う。
白昼堂々腕を組んでラブラブしている二人に言われたら終わりだと思う。
「いやいや、もちろんそれはそうだけれど、君達だってそうだろう? 相馬君と篠崎ちゃん、そして藤崎君と天音ちゃん。さしずめトリプルデートかな?」
『!?』
驚いたのは天音。
「お前、まさか」
動いたのは藤崎だった。
藤崎はどこからとりだしたのか、はがき程度の紙を取り出すと、首に当てていた。
「藤崎君!?」
「何をやっているのですか?」
篠崎と相馬もその行動にはびっくりしている。
「落ち着いてくれ、別に言いふらそうって訳じゃないよ」
「その油断は、お前が“もう一人の自分”を使っている偽者だから、ということか?」
「不当な扱いだよ、それは。俺は完全なオリジナルだ。姫ちゃんとデートするんだから。とはいっても感覚とか記憶は共有するから、問題は無いんだけどね?」
「黙れ、どうやって知った?」
「理事長から興味深い話を聞いただけさ。後、これ以上俺に殺気を向けると、俺の彼女も怒っちゃうんだけど」
見ると、姫岸は手刀を藤崎の首元に当てていた。
「ちょっとちょっと、皆どうしたの?」
「お疲れでしょうか……」
天音が女子であるという事情を知らない二人は、困惑している。
「……ほら、落ち着いてよ藤崎。……大丈夫だから」
「信じがたいが、まぁいい」
藤崎は紙をそっと外した。
「言っておくが、まだお前を信じきれたわけではない」
「それくらいの気持ちが大切だよ。じゃなけりゃ、大切な人は守れないからね」
じゃ、と手を振って高原さんたちは別の出店を見に行った。
「ったく、何て男だ」
「藤崎君?」
篠崎は藤崎の変貌振りに驚いている。
「あ、い、いや? 今のは気にしなくて良いって!! 大丈夫大丈夫!!」
苦笑いで藤崎はごまかした。
「今度はイカ焼き食べようよ!!」
「まだ食います!?」
後ろで色々騒ぎがあったことには気づかず、赤井と紅は食べ歩きを満喫していた。
と、その時見たことあるシルエットがあった。
「おい、あれって?」
「叶先生?」
そこには担任、富士叶がいた。
叶は誰かの腕を掴んでいた。
「相手は男か……、隠れろ!!」
赤井は何かに気がつき、とっさに出店の陰に隠れる。
「ちょっと、何で隠れるのよ?」
「いや、アイツは……」
その男の姿を見て、すぐに分かった。
「白道、月影じゃねぇか……」