~太陽と月影、過去の因縁。~ (3)
“才能分析者”。
その肩書きは聞いたことがある。
才能者がいい稼ぎ場として傭兵になって活躍している中、そういう奴らを倒す無才能の男が居ると。
才能を持った傭兵というのは、基本的に一人雇うだけで一個小隊くらいの戦力はあるので安く済む。
そのため、反逆組織やテロ組織といった治安を悪化させる原因となる小さな組織に属することが多かった。
才能者としても争いが起これば起こるほど金が稼げるので、よろこんで戦う。
そういう流れを壊すとかなんとかで、そういう男が居るらしい。
よく国の防衛隊などに傭兵として雇われているとか聞くが……。
「へぇ、アンタが名高い“才能分析者”かい」
「お前、自分が属している組織について考えたことはあるのか?」
ん?
何を言ってるんだこいつは。
「考えたことも無い。金さえ手に入ればどこでも良いしなぁ」
特に何の考えも無く言った。
「ふざけるな!!」
だが、その言葉に太陽は酷く怒った。
「お前、この惨劇を見て何も思わないのか!!」
太陽が周りを指差す。
そこではいたるところから煙が上がり、血と硝煙の臭いが渦巻いていた。
可愛らしい女の子が痛みに顔をゆがめて死んでおり。
ふくよかな老人が恐怖に顔を引き攣らせて死んでおり。
誰かを庇うように丸くなって女性が死んでおり。
体中を穴だらけにされてほうけた顔で男性が死んでいる。
「何とも思わないな。これが、戦場だろ」
そう、これが、戦場だ。
強い者が生き、弱いものが死ぬ。
運良い者が生き、運悪いものが死ぬ。
臆病者は生き、庇った勇者が死ぬ。
「そういう奴らが居るから、この世界は戦争だらけですさんでいくんだ!!」
随分とご高説のたまった男だな。
何かむかついた。
「白眼視」
その瞬間、太陽の動きが止まる。
「どうせそんなこと言って、何人殺してきたんだか」
白道は太陽の後ろに回る。
「俺もお前も一緒だよぉ」
そして、機関銃を構える。
綺麗ごとなんかほざくな。
「解除」
そして、引き金を引く。
ダダダダダ!!
連続した破裂音が響く。
「なっ!?」
その銃弾は太陽に直撃する。
だが、血が出た様子も無く、すぐに右に避ける。
太陽は壁になるような大きな石片を探し、すぐにその後ろに隠れる。
「どういうことだぁ?」
無才能なんて言いながら才能者だった、とかか?
「お前にあらぬ誤解をされるのは癪だから言っておくが、これは“才武”だ。俺は正真正銘の無才能者さ」
才武。
最新の科学で出来た才能の力を移されてある道具、武器のことだ。
これは一般の無才能者でも使えるため、非常に重宝されるのだが、まだその分野の発展は進んでおらず数がとても少ないため高価である。
「結局才能の力は借りてんじゃねぇかよぉ」
「コイツは特別さ。何せこの戦場に話題の“一足飛ばし”が出るって聞いたから、全力で根性叩きなおしに来たんだよ。才能者だぜ? 防御はこれくらい必要だ。これ入手するのにどれだけ金と労力と時間かけたと思ってんだ」
“一足飛ばし”。
それが俺につけられた通り名だ。
まぁ、この目は見たものの時間を止めるから、相手から見れば俺が瞬間移動したように見えるからな。
太陽は喋りながらも壁から出てこない。
「俺から仕掛けろってかぁ? まったくきな臭い男だぜぇお前はよぉ。俺の才能にも一瞬で反応しやがるし」
とはいえ、このまま膠着状態も面倒くせぇ。
殺るか。