~人の携帯を使ってメールをするのはやめましょう。~
今回から、太陽、白道がメインになっていきますー。
「なら俺も混ぜてくれないかな?」
その声は後ろから聞こえてきた。
「お兄ちゃん!!」
紅がいち早くその人物をみて叫ぶ。
「さ、桜さん!!」
少し遅れて俺も振り向くと、桜さんがそこにいた。
「鍵音、見に来たぜ。君達、久しぶりだな」
桜さんは俺達に手を振る。
「こんにちわ……」
天音はその存在感におろおろとしている。
桜さんは緊急時にはこの存在感が安心感に繋がるのだが、いかんせん今は、しかも天音が相手じゃ威嚇しているように見える。
「天音、そこまで怯える事はねぇって」
「そうですよ。失礼に当たります」
藤崎と相馬がフォローした。
「そうだぜ? 別に取って食うわけじゃない。ただ、あんな事件が終わってお前達学生が出店に出向けば、色々と騒ぎになるんじゃないのか?」
桜さんの言うことは、一理ある。
俺達はあの“5.01事件”で警察から表彰を受けた。それに、あの事件は情報規制がなされているのか、一般人には色々と謎な点が多く、ネット上では噂が飛び交っている。
「だから、もしもの時は俺が守ってやるってことだ」
その桜さんの言葉は、とても安心感があった。
「じゃ、ちょっくら電話するわ」
桜さんはポケットから電話を取り出し、どこかにかけた。
「もしもし、父さん?」
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「何だ、桜か。俺にどうして電話した?」
観客席で次の競技の時間はどれかな、と携帯端末で調べていた火切に桜から電話が掛かってきた。
「そうか、分かった。楽しんで来い。こんな状態の俺が行っても足手まといだろうからな」
「……土産はたこ焼きを頼む」
そこで電話を切る。
「桜さんからですか?」
二つ席を飛ばした太陽が聞く。
「あぁ。競技がしばらく無いからどうやら出店に行くらしい」
そこでこちらに携帯端末を見せる。
それには、次の競技は数時間後のようだった。
「なら、俺達も家族水入らずで出店に行くか?」
「久しぶりにデートね♪」
「デートデート!!」
太陽が言い出した提案に、家族が乗った。
「なぁ、ツキ」
「なんだぁ?」
立ち上がって出店に行く準備をしていたところで、太陽が白道に話しかけた。
「携帯貸せ」
「自分の使えよぉ」
「いいから、早く」
「しょうがねぇなぁ」
白道は自分のポケットから携帯を取り出す。
それを太陽は取ると、開いて何かを物凄い速度で入力し始めた。
「お、おい。何やってるんだぁ?」
白道がぽかんとしている。
「これでよし。ほら」
太陽が携帯の画面を白道に見せる。
そこには、『メールを送信しました』という文字が表示されていた。
「お、おいぃ?」
急いで太陽が携帯を取り戻して、メールの送信履歴を確かめる。
「て、てめぇ!! こいつは……」
白道が愕然とした顔で画面を見つめていた。