~競技その一、障害物マラソン~ (9)
結構長かった競技、障害物マラソンが今回、完結です!!
「やっと、追いついたぜぇぇぇ!!!」
紅が地面にへばりついてから数分、後続の三人、宴、瀬々薙、嵐山が追いついてきた。
「っつ、まずいわね……」
紅もゆっくりながら立ち上がる。
だが、どうやらさっきの着地と現在も掛かっている重力で立っているのがやっとのようだった。
ふらふらとしている。
「さて、ラストスパートだぁ!! ――――ってうぉぉ!?」
「な、何じゃこりゃあ!?」
宴と嵐山は意気揚々と最終障害に突っ込んでいって、見事に引っかかっていた。
「あぁ、こいつら、真性の馬鹿だ……。何で障害に対して無防備で突っ込んでいくのよ……」
瀬々薙が一人溜息を漏らす。
このままじゃ負けちゃう。
動け、私の足。
「宴の名にかけて、お前に勝つ!!」
動け。
「紅ぃ!! すぐに追いついてやるからな!!」
動け。
「最初のこの部分は上に向かって重力が発動しているのかしら」
動け!!!
「はぁぁぁぁ!!!!」
ドン、と音が聞こえるような大きな一歩を紅が踏み出した。
ドン、ドン、と一歩、また一歩とゴールへゆっくりと歩みを進める。
「そんなことさせるかぁ!!」
嵐山が風を使って紅に向かう。
だが、重力が色々な方向に散らばってあるせいか、上手く飛べていない。
「瀬々薙!! 足場頼む!!」
「了解」
宴も紅に迫る。
だが、やはりこのゾーンは難解なようで、地面に思いっきりスライディングをしたり月面のようなジャンプをして思うように進めない。
この障害物マラソン、最後の最後で才能なんて関係ない根性の戦いとなってきた。
最終障害を抜けたときがゴール。
もちろん、応援にも力が入る。
「ガンバレー、紅!!」
「勝て、嵐山!!」
「宴、上級生の意地見せろ!!」
「瀬々薙ちゃん、頑張って!!」
そんな声援があちこちで始まった。
「負け、られない!!」
「俺もに決まってんだろうが!!」
「宴で敗北なんて、むなしすぎだから!!」
「下級生でも、勝てるって証明したい!!」
遂に、ゆっくりながら進んでいた三人が並んだ。
ここは重力加算ゾーン、必然的に速度が相当遅くなる。
「っつ、ああぁぁ!!」
ゆっくりと三人がゴールに近づく中、遂に紅がゆっくりながらもゴールを目前に走り出した。
「さ、せるかぁぁ!!」
嵐山、宴、瀬々薙も遅れながらそれに続く。
やはり三人は横に並んで一列でゴールに向かう。
このまま同着か、と思われた矢先、宴が地面に突っ伏すように倒れこんだ。
そのままピクリとも動かなくなっている。
「無令効の使いすぎだな」
高原先輩が応援の中呟いた。
「え、あれ?」
次に倒れたのは、瀬々薙。
ふらりと急に力が入らなくなったように倒れた。
「ま、空気を固める以外は普通の女子だからな。体力が無かったんだろう」
冷静に高原先輩は判断する。
「が、あっ……!!」
今度は足を絡ませて嵐山がこけた。
どうやら、立ち上がる体力は無いようで、うずくまりながらも立てないでいる。
「こっちは風の才能以外ないからな。体力とかはポテンシャルが違うんだろう。才能なんて関係ない根性の戦いのように見えて、やっぱり最後は才能の違いが大幅に出たのかな」
「違いますよ、高原会長」
俺は、この感動的なシーンで、こう言いたい。
赤井は映像を見ながら、こう語る。
「やっぱり才能なんかよりも、もっと違うところでの戦いでしたよ。最後のは」
紅が、優勝した。