~競技その一、障害物マラソン~ (2)
死んでません。
死んでないから大丈夫です。
「おぉっと、第一の障害は巨大な壁だぁ!!」
実況、繰村さんの声で二人の正面にカメラが移動されると、そこには巨大な壁が聳え立っていた。
「どうやら今入ったじょーほーですと、あれは壁登りという第一の障害のようです」
解説、音無さんが今入った情報とやらを語る。
「高さはおよそ十メートルに及び、ロッククライミングのように小さな突起が取り付けられているようです。これを掴みながら登るのが正攻法ですね」
見ると確かに、小さな小岩の形を模したものが取り付けられている。
「この程度、手前ならどうってことねぇよなぁ?」
「もち、ろんっ!!」
紅はその壁に思い切り走りこむと、スタートダッシュのときと同じようなドンッという音を響かせた。
そして、約10メートルの壁を跳び越えた。
「ええぇぇ!?」
紅の跳躍力って一体……。
そう思っていると嵐山のほうもプシュゥと相変わらず気の抜けるような音を上げて壁に対して垂直に飛ぶ。
そして何事も無く跳び越えた。
「流石にあの二人は簡単に突破しますねー」
「とはいえあれだけの跳躍は肉体強化系でも紅さんくらいなのではないでしょーか」
実況と解説はなれた口調。
周りもさも当然といった感じだった。
「赤井、それくらいで驚いちゃだめじゃん」
「これより上があるみたいな聞こえ方がするが……?」
「一つ目の障害物で驚くのはダメダメよー、ってことなんだよー」
ま、これが才能って事か。
だんだん才能という超人的な力とここのノリに慣れ始めている赤井だった。
「おぉーっと、先頭の二人はもう第二の障害ゾーンに入りそうだ!!」
デッドヒートで二人が走っている先にはどうやら障害物があるそうなのだが。
その先には何も見えない。
「次は一体何の障害物なのかー!!」
そう実況が叫んだ瞬間。
嵐山より少しリードした紅の姿が一瞬でカメラから消えた。
「何が起きた……?」
周りもざわついている。
カメラが近づくと、紅はどうやら穴に落ちたようだ。
先ほどまでそんなもの見えなかったはずなのに。
つまり、この障害は。
「今入ってきたじょーほーですと、どうやら第二の障害は落とし穴のよーです。そこには相当数の落とし穴が仕掛けられているそうなので、せいぜい避けてください、との事です」
紅が消えたのは、その落とし穴に引っかかったせいだろう。
そしてこの障害は、紅に不利なものだった。
「ここで嵐山が紅とぐんぐん差を伸ばす!!」
そう、嵐山は空気を集めてジェットのように噴出してすすむ才能。
だから、地面と接していない。
「あーばよー、紅!!」
先に行った嵐山からそんな声が聞こえてきた。