~間之スポ開催、の観戦者たち。~
またしても投稿が……。
ということで今回は文字数が多めです。
6月24日(金)、間之崎学園。
その日の間之崎学園は、一味違っていた。
「優勝、するぞー!!」
『おぉー!!』
そんな掛け声が辺りから響いてくる。
そう、今日から三日間。
間之崎スポーツカーニヴァル(V発音注意)が始まるのである。
「まったく、燃えあがってんな」
何故か、ここにいると、
「俺もいっちょやるか!!」
テンションが上がる。
「さて、今日は皆さんお待ちかねの間之スポですっ!!」
『イェーイ!!』
クラスのみんなもテンションがマックスまで上がっている。
「絶対勝つぞー!!」
『おぉー!!』
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場所は変わってここは間之崎スポーツカーニヴァル観戦用スタジアム。
間之スポは非常に大きなイベントであるため、観戦者も非常に多い。そのため、このような大きなスタジアムから巨大モニターでの観戦となる。また広範囲で同時に色々な種目が開催されるため、手元にも小型のモニターを手渡される。(ちなみに、壊したりしたら弁償しなければならない)
「さてさてぇ、始まってきたねぇ」
そのとある一角。
「あいつ等は、全く遅いんだからよぉ」
座っている男は目に白い包帯をくるくると巻いており、おそらく目は見えていないのではないかと思われる。どうやってここまで来たのであろうか。
「たしかこの辺か? A-23ってのは」
「ほら、椅子に書いてあるわよ」
「お兄ちゃんが見られるよー!!」
その包帯を巻いた変な男の横にとある3人家族が座り込んだ。
家族は父と娘二人の3人のようだった。
父は普通の感じだが、娘は二人とも天真爛漫な感じだった。
「お前にしては珍しいな。自分の金使って俺達を呼び寄せるとは。しかも、ここS席レベルの良い席じゃないか?」
「そりゃそうだなぁ。お前らのほかにも色々呼んでんだぜぇ? ちったぁ感謝しな」
3人家族の父親と思われるほうが、目に包帯を巻いた男と話し始めた。
「ところでよ、それ、お前見えてんのか?」
父親と思われるほうが包帯の男に聞いた。
「これは日光を遮断するためだ。こいつの後ろから少しは見える。観戦するときは外す」
「そうか。まさか家族全員呼んでくれるとは思わなかったな」
「言っとくが、呼んだのはお前達だけじゃないからなぁ?」
包帯の男がそう話していると、その反対側にもある家族が来た。
「父さん、しっかりしてくれ。一年に一度の娘の晴れ舞台だろうが」
「あぁ、空が眩しいな。別にネットの中継で良くないか?」
「せっかく招待状をもらったんだから良いだろ」
それは息子と父の二人組のようで、息子は好青年のような男、それに比べて父親は髪もぼさぼさ、目には隈がありどこか山奥から出てきたような感じだった。
「ありがとうございます、白道さん」
その息子のほうが包帯の男――――、白道に礼をする。
「気にすんな。これは全部あの事件のとき祈にもらった金だからなぁ。あれは俺一人じゃあどうしようも出来なかったからな、別に構わない。それに、人類最強のアンタに借りを作るのも、悪くねぇ。紅桜さんよぉ」
「殊勝な心がけだな。ぜひとも普段からそうしてくれ」
紅桜ではないほうの白道の隣の男が笑う。
「太陽、手前もちったぁ俺に感謝しな」
「ツキ、心があいかわらず小さいなぁ。俺とお前の仲だ。連れない事言うなや」
「ツキって、この人が白道さんなの?」
赤井太陽は白道と肩を組む。
太陽の隣の小さな女の子は白道の顔を覗き込んでいる。
「彼女が、もしかして……」
「あぁ、俺の妻、美月だ」
「こんにちは」
娘のように見えた小さな女の子の一人は、太陽の妻、美月だった。
「話は太陽から聞いてる。しかしまぁ、本人の前で言うのもなんだが……、お前、本当に犯罪じゃないのかぁ?」
「黙れ、お前には美月の魅力が分からないのか?」
「そんなに褒めないでよ太陽ぉ」
「多分その魅力が分かったらやばい気がするんだが」
白道は旧知の友の一面に頭を抱える。
「はくどうさんですか? このたびはよんでくださってありがとぉございます」
「そういう君は葉月ちゃんだね? 練習したのかい?」
「そうなのですよっ!!」
「……太陽にはもったいない可愛い子だな。結婚したくなってきた」
うるせー、と口を尖らせる太陽。
「アイツももう一人前に仕事してるんだから、お前もいい加減結婚しろよ」
「いや、ちょっとまだアイツってのは心の準備が……」
「さっさとしろよ? お前おっさんになるぜ?」
「もうかなりやばいさ。そうだな……、これが終わったら、本気で考える」
白道は少し考え込む。
「お前も結婚しろよ」
「父さん、俺はまだ大丈夫だから」
「そう言ってる間に時間は過ぎていくぞ。俺みたいな男でも母さんみたいな素敵な女性と結婚できたんだ。母さん……」
「現実を、受け止めろ」
「もう死んじまったもんなぁ……、呼んでも誰も答えてくれないもんなぁ……」
「母さんというのは、杏奈さんのことですか?」
紅桜とその父親が話している最中に考え込んでいた白道が入った。
「知っているのかい?」
目に涙を浮かべながら桜の父親が聞く。
「まぁ、同じ職場だったからな。確かにありゃぁ、良い女だったと思うぜぇ」
「だろお?」
正気の無いような虚ろな目で賛同する。
「しかし、あの女が一部では有名なアンタの奥さんとはなぁ」
「俺はただ、パソコンが好きな大人さ。幼馴染の杏奈は、そんな俺を認めてくれた唯一の女だったからなぁ……」
この男は、紅火切。
firecutterという最強のハッカーと呼ばれている。
この場合でのハッカーというのは、クラッカーと違い善意を持つ者である。
一人の男が悲嘆に暮れていると、ドン、という空砲の音がする。
「はじまるみたいだよっ!!」
葉月ちゃんの声で全員がモニターを見ると、どうやら開会式が始まるところのようだ。
「さて、俺も外すか」
白道も目に巻いていた包帯を外した。
8月15日まではペースがこんな感じになります……。