~間之スポの準備の最中、気になること。~
6月23日(木)、間之崎学園。
「こっちの資材は向こうに頼むわ」
「りょーかい」
「さっさとやらねーと宴に間に合わねーぜ!!」
明日は間之スポ、そして今日は一日間之スポの準備をする日だそうだ。
「本当に今日は大変だ……っと」
「ぐだぐだ言ってても始まんないじゃん。さっさとそれは向こうに運ぶじゃん」
「そーだよー。きびきびしよー」
もちろん赤井達も例外ではなく、仕事をさせられていた。
「お前達、ちゃんと仕事してるか?」
「あれ、会長さん?」
染山と十島と一緒に道具を運んでいるときに、生徒会長の高原先輩と出くわした。
「高原さん!!」
「どうも」
「おーおー。お前らはいつも通り元気だな」
染山と十島は元気に挨拶を交わす。
「あれ? どうして会長さんがここに?」
だが不思議に思うことがあった。
確かこの時間帯は会長は最終の打ち合わせがあったとか……。
「ほら、俺の才能だよ。“もう一人の自分”」
「それで抜け出してきたんですか……」
高原先輩の才能、“もう一人の自分”。
これは自分と寸分たがわない人間を作り出すことが出来る才能だ。
どうやら聞いたところによると、意識も共有しているらしい。
それを考えると普通の人間ならおかしくなってもおかしくないんじゃないかと思う。
普通の人の二倍を同時に考えることになるんだから。
キャパシティの違いだろうか。
「ところで、会長は今何をやっているんですか?」
「気になります」
染山と十島の二人は口調がきちんと戻っている。
「俺はただの視察さ。“観察眼”だけじゃなくてやっぱり、じかの目でも見たいからね」
生徒会長のもう一つの才能。“観察眼”。
広範囲を視点を変えてみることが出来る才能。
これも脳のキャパシティ的に相当大変だと思うのだが、平然とした顔をしている。
この生徒会長は、才能が無くても凄い人なのだ。
「そうですか。流石ですね」
もう染山が別人のように見える。
「そこまで言うことじゃないさ。じゃ、他の場所も回ってくるから」
高原先輩は俺達に手を振ると、他の場所へ歩いていった。
「なぁ、一つ聞いていいか」
「何じゃん?」
「どうしてお前ら二人は高原先輩の前だけあんな敬語というか、本気で敬うみたいな喋り方になってるんだ?」
先生にですらあの喋り方をする染山や十島が、高原先輩の前でだけあんな喋り方なんて絶対におかしい。
「いや、それは……」
染山が思わず口ごもった。
「それは、あの人が僕の命の恩人だからだよー」
だが、その染山を置いて十島は意にも介せず喋った。
「おい!! 言って良いじゃんか?」
「別に良いよー。赤井君なら大丈夫だってー」
そこまで過剰に信頼されても困るんだが。
「あれは僕達が中ニの時だったんだよー」
そうして、話し始めた。
というわけでまたも昔話っ!!