~テストという巨悪に一丸となって立ち向かう。~
この章はひたすらに馬鹿馬鹿しい話で終わりそうな気がしますー。
「紅っ!!」
篠崎が紅を引きとめようとするが、その手は虚空を切る。
「私は、こっちのほうがお似合いなのよ!!」
悲痛な面持ちで叫ぶ。
その様子には、ほとんどの人が振り返る。
「まさか、紅さんまでそちらに行くとは……」
「紅、俺達はお前を応援するぜ!!」
両極端な声が方々から響く。
このクラスは、ある意味で二分されている。
天才と、馬鹿で。
「ときどき私はこのクラス全員が馬鹿なんじゃないかと思うんですが」
「つい俺もノリで言ってたとはいえ、ここまでなのはそう無いぞ?」
相馬と赤井はいつの間にか端のほうで話をしていた。
目の前では喧騒が繰り広げられている。
「私は、実はこの“都市”に最初からいるわけではないのですよ」
「そうなのか。通りでイカレてるんじゃないかってくらいのノリが無いわけだ」
「えぇ、私がここにきたのは中学からですから」
相馬がそこまで言うと、目を細めた。
何か思い出してるのだろうか。
「ですが、ここの空気は好きですよ。何より活気に溢れていて、私もある程度心を戻して、自立をすることが出来ました」
「そりゃ、どういう意味だ?」
「あぁ……、気にしないでください。昔のことですから。それより、」
そこで相馬は無理やり話を変えた。
「テストのことならご相談ください。微力ながら、協力できるところは協力して差し上げましょう」
「あ、あぁ。そうさせてもらえると助かる」
何か昔にあったのだろうか。
本当にこの男はミステリアスだな、と赤井は思った。
その後。
馬鹿騒ぎやらなんやらを終えたこのクラスも数日経つと流石にテストがやばいのか、ところどころで勉強を教えてもらっている姿が見えた。
「紫瀬ー、ここは右辺をこう展開してさっきの式を代入するんだよー。ほらー」
「お、おぉぉぉ!! こいつ、できるじゃん!!」
「褒め言葉として受け取っとくねー」
染山は十島に。
「だから……、ここは先行詞がthe boyだから関係詞はwhoになるんだよ……」
「じゃあこのthe reasonって先行詞は?」
「それは理由を聞いてるから……、whyが関係詞がはいるの……」
藤崎は天音に。
「いい? ここの『傍線部③は何故か説明しなさい』ってのは、この傍線部の前を見るの。ここに、『李徴の自嘲癖を思い出しながら聞いていた』ってあるじゃない」
「あ、本当だ!! 秀才は伊達じゃないね!!」
紅は篠崎に。
「同素体というのは、SCOPで覚えるんです。Sはホウ素。Cは炭素。Oは酸素。Pはリンです」
「成程なぁ。残念ながらさっぱり覚えてなかったぜ。じゃあ、同位体ってのは何なんだ?」
「それは原子核の中性子数が同じ原子同士なのに違うものをさします」
「やっぱりお前は頭良いな」
赤井は相馬に、それぞれ教えてもらっていた。
そして、テスト一日目。
「今日は中間テストの一日目です!! 皆さん、がんばってくださいね♪」
叶先生がクラスのみんなを応援する。
「頑張ります!!」
その言葉にすぐに返したのはたしか樹野という男子だった気がする。
叶先生大好きな。
「これが終われば間之崎スポーツカーニバルが控えています。良い気持ちで迎えられるよう、手を抜かず精一杯成果を残してくださいね♪ では、皆さんのラストスパートの邪魔をしたくは無いのですぐ帰ります。では、号令を」
その言葉に日直が答え、起立、気をつけ、礼で朝のショートホームルームは終わった。
ここからが、戦いだ。
テストはやっぱり嫌ですよね。