~テストとはこうも簡単に友の仲まで引き裂いてしまう。~
今回からは魔の中間テスト編!!
思いがたぎりそうですねー。
5月12日(木)
昨日から、テスト期間に入ってしまった。
この時期には部活動も停止となり、いよいよテストに向けた体制がとられるようになって来る。
中間テスト。
テストと名のつくものは人々に争いと絶望しか招かないと言っても過言ではないだろう。
「過言だよ」
バスッ、と教材で藤崎は頭を殴られた。
「って、阿蘇先生!?」
後ろから現れたのは次の授業の数学の阿蘇貴則先生だった。
「どうして、俺の心の声が!?」
「俺は読心系の才能者だと前に言ったはずだが。さっさと座れ。授業を始めるぞ」
そのまま阿蘇先生は教卓へと上った。
「赤井、染山、お前達次のテストに自信は?」
「あるわけないだろ……。さっきの数学だってほとんど分からないぜ?」
「フッ、愚問じゃん」
どんよりとした赤井を尻目に、染山はキラリとこちらに笑顔を向けた。
「おいおい、何が愚問なんだよ」
「よく考えてみるじゃん。たとえテストで赤点を取ってしまっても、俺達には追試がある。追試のほうが範囲は狭くなるし、見たことのある問題だって出るじゃん。それに、もしも就職が出来ない事態になっても、俺達には才能があるじゃん!!」
『そうだな!!』
三人は拳を合わせる。
「馬鹿ね」
「馬鹿だねー」
「……藤崎、がっかりだよ……」
「あまりこのような言葉は使いたくは無いのですが、無知であり無智であり無恥といわせていただきましょう」
周りの篠崎、十島、天音、相馬の四人は冷ややかな目で赤井達を見る。
「いいか、あんな奴らほっとけ。あいつらは頭の良いことをひけらかそうとしてるだけなんだ」
俺達は肩を組む。
『この程度で俺達の結束が乱れたりはしない!!』
三人が同時に言う。
とはいえ口癖までは直せなかったようで、じゃん、と最後に聞こえた。
「これはいつもいつものことだけどー、今回は赤井君もそっちに行くんだねー」
十島はへぇ、といったような感じだった。
「俺は普通の高校生なんだよ! こんな進学校でまともに追いつけるか!!」
「そーじゃんそーじゃん!! それに俺達には実技もあるじゃん!!」
「……そうなのか?」
それは初耳だ。
「うん、いろいろあるじゃんよ? とはいえ、赤井の才能が活用されそうなのは無さそうじゃんけど」
「オーマイガッ!!」
意味ないじゃん!!
「……藤崎、真面目に勉強しよ?」
「いくらお前の頼みでもそれは無理だ」
いつの間にか藤崎がいなくなっていると思いきや、向こうで天音に詰め寄られていた。
「……意地悪」
「こればっかりは無理だ。諦めるんだな」
「……そっちがその気なら……、こっちも意地でも勉強させる……」
「な、何言って……って天音電気は反則じゃぼびゃばばばば!!」
何も見なかったことにしよう。
「紫瀬ー、がっかりしたよー」
「お前だって毎回のことだから知ってるじゃん。俺は、頭が、悪い、じゃん」
「努力でー、順位はある程度まで上げられるー」
染山も染山で押し切られそうになっていた。
「残るは赤井君、君だけね。ほら、紅からもなんか言ってやって」
篠崎に促され、前に出てくる紅。
一体どんなことで攻めてくるんだろうか。
「篠崎」
「何?」
「私、思うんだ。このまま、あなた達みたいな天才グループにいていいのかなって」
急に紅が語りだした。
「どうしたの? 紅」
「私は、やっぱり」
紅は思いつめた顔でこっちに走り寄ってきた。
そして、篠崎のほうを振り返る。
「こっち側につくことにするわ!!」
紅が、味方になった。