~戦術も最後は時の運と意思。~
今回で篠崎編は終了!!
意外と長くなりましたねー。
気がつくと私は真っ暗な闇の中で赤い糸のようなものでがんじがらめにされていた。
何故だか、自分の姿だけはしっかりと分かった。
何か、大切なことを忘れている気がする。
ぼんやりとした夢心地の中で篠崎はそんなことを考えていた。
不意に、その赤い糸の様な物が液体に変化した。
血、だろうか。
本来なら気色悪いと思うはずなのだが、服についても何も感じなかった。
外から声が聞こえる。
何だろう。
急にその声の聞こえる方向から光が差してきた。
光に向かってとりあえず走る。
その時、前にいきなり何かが現れた。
「……私?」
その姿は篠崎と同じ姿形をしていた。
だけれど、ほんの少しだけ違う点があった。
「これは、吸血鬼の私……、なんだ」
その目の前に現れた篠崎のほうは目が赤く光っていた。
「そうだ、私、吸血鬼から取り戻そうとしてたんだ」
篠崎は全てをここで思い出した。
「私は、私」
「あなたも、私ってことね」
吸血鬼の篠崎の言葉に、篠崎も合わせる。
「切り離そうと、思わないで」
「分かってる。でも、人を無差別に襲うのは駄目だから」
二人の篠崎はそこで手を合わせた。
すると、吸血鬼の方の篠崎はどこかに消えてしまった。
「相馬には、迷惑かけたわね」
篠崎は走って、さっきから光っていたほうまで走り出した。
変化が起きたのは、相馬がペットボトル爆弾を投げ終わってから数分が経った頃だった。
それまで吸血鬼はまったく動きを見せず、フリーズしたように固まっていた。
相馬はその状態の篠崎にひたすら声を掛け続けていた。
「ふぅ……。これだけ呼んでも反応も無しですか。ちょっときびしい戦いになりそうですね」
かがみこんで残しておいたペットボトルを両手に持った時、 一瞬、吸血鬼が動いた。
「第二ラウンドですか?」
相馬がペットボトルにドライアイスを詰め込んでふたを閉めようとしたとき、吸血鬼が妙な動きを見せえた。
微笑み。
今まで見せてきたような無表情、もしくは崩れたような笑いではなく、慈愛に満ち溢れているような。
「もう、大丈夫」
相馬に語りかける。
「篠崎さん、戻ったんですね」
すでに吸血鬼は、篠崎へと戻っていた。
「どうやら、上手く操れるようにはなったみたい。凄いわね、夜なのに何故か向こうまでちゃんと見える」
篠崎は自分の身体に起きている変化に素直に感心しているようだった。
「一安心ですよ……」
相馬も持っていたペットボトルを下に置く。
「ありがとう、本当に私なんかのために、ありがとう……!!」
篠崎は急に泣き出した。
「ど、どうしたんですか?」
その変化具合には相馬も着いていけず、困ったような顔をする。
「誰にも、相談出来なかった……!! 紅にも! でも、相馬のおかげで……!!」
泣きながら、相馬の胸に飛びついた。
「とりあえず、嬉し泣きと取って良いんでしょうかね」
篠崎は相馬の胸でいつまでも泣き続けた。
5月11日(水)、間之崎学園。
「おはよう、皆」
「おはようございます。皆さん」
その日、篠崎と相馬は一緒に登校した。
「お、ようやくメンバー的に全員揃ったわけか。長かったな」
赤井がやれやれと呟く。
「ところで、篠崎さんは右手首の手錠はどうしたんじゃん? 流行は?」
染山は痛いところをついてきた。
「え、えーっと……」
篠崎も少し困る。
「あれは料理に邪魔ですから除けたんですよね。篠崎さん」
「そ、そうなの!!」
相馬が助け舟を出したおかげでぎりぎりすり抜けることが出来た。
「お前ら二人はのうのうと休めていいよなー。こっちはもうすぐ中間テストなんだよぉぉ!!」
藤崎が悲痛な叫びを急に上げた。
そう、もうすぐ僕らは中間テスト。
今回のタイトルつけるのには本当に苦労しましたー。
しりとりって難しい。
最後のほうのタイトルは結構荒れてますしね。
次からは魔の中間テスト編!!