表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Skills Cross ~Another Life~  作者: 敷儀式四季
間之スポ編
142/144

~頼ること。~

久々投稿。

「あれが師匠を貶めた赤井って奴ですか。何か普通の学生ですけどねぇ」

「油断すると死ぬぞ。冗談じゃなくな」


 Mr.バッドエンドが瞬間移動した先はビルの屋上。そこに数人が立って双眼鏡を覗いていた。


 その中の一人がMr.バッドエンドに話しかける。


「というより、彼に牙をむかれる条件は“彼に否定されること”だろうな。全く傲慢な能力だぜ」

「それが師匠の言っていた“生まれ持った非凡(スーパーナチュラル)”ですか? 本当、説明聞いてもよくわからないんですけど」

「証明する。俺の仮説を、アイツの全てを、あばく」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 赤井はその場で立ち尽くしていたが、しばらくすると走り出した。


 動いていないと、恐怖で頭がどうにかなってしまいそうだったからだ。


「どうすれば……」


 どうすればいいんだ。


 過去の亡霊は生きていた。


 最悪の言葉を告げて、俺の目の前に現れやがった。


 言葉を、うわ言をただ呟く。


 取りとめも無く、ただ。


「どうすれば……」


「どうしたの?」


 返ってこないと思っていた声に、返事が。


「そんなに青ざめて、汗びっしょりじゃない。体調悪いの?」


 足を止め顔を上げると、目の前に紅が立っていた。


「あ……、紅……」


 紅を見て一瞬安堵するが、すぐに頭の中に一つのイメージが浮かぶ。


 Mr.バッドエンドに無残に殺される。

 何のかかわりも無い彼女が、掃き捨てるように。


 それが、どうしても頭から離れなくなる。


「うわ、うわあああっぁぁぁ!!」


 そして、意識を失った。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 気がつくと、普段の2-Aの教室に居た。


 周りの皆も思い思いのことを話している。


 だが、ふと右手にどろりとした湿り気を感じる。


 恐る恐る目の前に晒してみると――――――――――――――。


「あ、あああぁぁぁぁ!!!」


 赤。


 血に、染まっている。


 瞬間空間が暗転し、周りの状況が一変する。


 辺りで話していた生徒達が皆血だらけとなり、傷を負い、倒れている。


「言ったろうが。周りも全部巻き込むって。君のせいで、君がいるために、彼らは傷つき、地に伏し、君を妬んで恨んで死んでいくんだろうよ」


 赤のセカイで喋る、幻影。


 Mr.バッドエンドだ。


 近くを見ると、藤崎や天音、相馬に篠崎や十島、染山の姿も見える。


 皆、赤井を恨むような表情で。



「やめろ、やめてくれ!!」



 叫びと共に、赤井は白いベッドから飛び起きた。


「はぁっ、はぁ、はぁ、夢……、か?」


 少し落ち着いた後で辺りを見ると、どうやら学校の保健室のようだ。


 と、視界の隅に転げ落ちている影を見つける。


「そんなところで、何やってるんだ、紅」


 高くなっているベッドの横で、何がしたいのか倒れこんでいる。


「アンタが急に起き上がってくるからでしょうが!!」


 どうやら紅は俺を見ていてくれたらしいのだが、俺が飛び起きた頭に直撃してベッドの横に倒れたらしい。


「済まないな。ところで、けいどろ大会は?」

「もう終わったわよ。結構接戦だったんだけど、泥棒側の勝ち。流石は高原さんね」

「そうか、出れなくて少し残念だ」

「そうね、アンタがいれば少しは変わっていたでしょうしね」



 どうやら俺は意識を失った後、紅に救護用のテントへ運ばれたようだ。


 先生の話だと、極度のストレス、緊張による失神に近いものだと判断された。


 外を見ると夜になっていることから、それなりの時間寝ていたようだ。


「それはそうと、うなされてたけど大丈夫なの? 何かあった?」

「あ、あぁ、それは……」


 流石に、紅には、話せないだろうか。


「私に話せないようなことが、けいどろ大会の裏であったって事なのね」


 紅もどうやら察してくれたらしい。


「本当に話せないの? 話せば楽になることもあるわよ。私と赤井の仲じゃない」


 紅は気にかけてくれている。


 俺も相談してしまいたい。


 だが、話すことで巻き込んでしまうのではないか。


 大事だから。大事な人だからこそ。


 遠ざけたいのだ。


「赤井、ちょっとこっち向け」


 俺が顔を伏せていると、紅から少し強めの声をかけられる。


 何となく語尾おかしくない? と思いながら上を向くと。


「しゃんとしなさいよ!!」


 パシン、と乾いた音が立った。


 最初、何が起きたが分からなかったが、どうやら左手ではたかれたようだ。


「どうして赤井はそうやって一人で抱え込むのよ!! 少しは私を頼りなさいよ!!」


 紅の目には涙が浮かんでいた。


「赤井はそんな顔したこと一度も無いじゃない!! それなのに、ずっと顔も青ざめて、悪い夢も見てるみたいだし……、私にも教えなさいよ!!」


「私は赤井に救われてばかりなんで嫌なの!! 出会った時も、“創造主”のときも!!」


 そうか。


 遠ざけることで、守れたような気になっていた。


 でも、そのこと自体が彼女を傷つけていたのだ。


「私にも、赤井を、救わせてよぉ……」


 最後のほうの言葉は泣きじゃくっていたのか聞き取れなかった。


 その姿を見て、決心する。


「……、ごめん、紅。分かった。これから話すことは、俺の昔話だ。残念なことに脚色無しの、な」



 そして、長い時間をかけて紅に全てを話した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ