~勝負にならないほどの戦術。~
タイトルの意味は読めば分かると思いますー。
「くっ、う、あああぁぁっぁぁぁぁっぁぁ!!!」
篠崎が一瞬頭を抑えたかと思うと、急に天に向かって吼えた。
人間とは思えないような。
そして、上を向いていた顔がゆっくりと相馬のほうを向く。
その目は、赤く煌々(こうこう)と光っていた。
「どうやら、変わったようですね」
相馬は落ち着いた声でそう言った。
見ると、篠崎の額に入っていた赤い一本線がぐじゅぐじゅと溶けるようにして直っていく。
そして、額から垂れてきていた血をぺろりと舐めた。
「では、向こうが動く前にさっさと決めさせてもらいましょう。もう私に、ためらいはありませんよ」
決意した目で相馬は目の前の吸血鬼を睨むと、迅速に、かつ正確に行動を開始した。
まず横に置いてあったペットボトルのを一本取り急いで開け、蓋を上に弾いて飛ばし、その間にポケットから白い固形状で煙の出ているものを四個ほど入れ、ちょうど降りてきた蓋をきっちりと閉めた。
そして一回だけ大きく振ると、投げつけた。
だがそれは吸血鬼ではなく、そのすぐ真下の地面に叩きつけるように飛んだ。
ガンと地面に当たると、ペットボトルは弾きかえって吸血鬼のほうに飛び――――――――――。
ドォン!!
吸血鬼がそれを見ると同時に、その弾きかえったペットボトルが爆裂した。
「最近の高校生は、怖いんですよ!!」
相馬は置いてあったペットボトルを両手に持ち、それぞれ片手で蓋を開ける。
そして、またもポケットから取り出した白く固形状のものを何個か入れると、大きく振って投げつけた。
ドォンドォン!! と、投げつけたペットボトルがまたも炸裂する。
流石の吸血鬼も顔を覆っている。
「手作りペットボトル爆弾ですよ。ちょっとした化学の応用です」
「ぐ、ぐぉぉぉぉ!!」
ドォン、ドォンとどんどん吸血鬼にそのペットボトル爆弾が炸裂する。
「あなたに言っても分からないかもしれませんが、一応色々な方のために解説しておきましょう」
メタ発言も気にせず続ける。
「これは水を入れたペットボトルにドライアイスを入れているんです。ドライアイスは溶けて昇華するときに体積を750倍に増やします。最終的にはペットボトルが中の圧力に耐え切れず爆発するという仕組みです」
相馬は足で前に置いてあった発泡スチロールの蓋を開ける。
そこにも大量のドライアイスが詰め込まれていた。
「吸血鬼というのは筋力増強、つまり攻撃力だけでなく防御力もそれなりにアップするそうじゃないですか。ですから、私の拳よりはダメージがあるほうを選ばせてもらいました」
発泡スチロールからもドライアイスを取り出し、入れたペットボトルを投げつける。
「出たとこ勝負なわけが無いでしょう。伝説を相手にしているのですから」
結局ペットボトル二つを残して全て投げきってしまった。
「本来、これくらいの攻撃なら再生して戻れるはずでしょうね。本来なら」
そういう相馬の向こうでは、傷が修復しているもののその速度は格段に遅かった。
「事前の策です。篠崎さんには先ほどにんにく料理を食べてもらった後、私があげた十字架のネックレスを掛けてもらったんです」
吸血鬼はにんにくと十字架に弱い。
これも有名な話である。
「そうじゃ」
相馬が“鳥”のところを訪れたとき、最後に“鳥”がこんなことを言っていた。
「吸血鬼ってのは意外と今まで伝承されているものが効くもんでな。太陽ほどじゃないが、にんにくや十字架ってのは、何故か俺達の基礎的な能力を落とす。だから、先に用意しておいたほうがいいかもしれんな」
「まさか本当に効くとは思いませんでしたが、どうやらちゃんと効いているようで満足です。さて、篠崎さん」
目の前の吸血鬼に向かって話しかける。
「後は、あなたの番ですよ」
じゃん!!
前回のタイトルの全否定!!
そーですよ、策も無く戦うより、他にも方法はあるって事です!!