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Skills Cross ~Another Life~  作者: 敷儀式四季
間之スポ編
130/144

~赤井の過去、どうしても忘れられない記憶。(27)~

「手前ぇぇ!!」

 崩野が両手を広げ空気を圧縮し、相手へと撃つ。


「何をそうも怒ることがある。元はといえばお前のせいだろう」

 その圧縮弾を、Mr,バッドエンドはかわしながら喋り続ける。


「お前が俺をおびき寄せるための囮として使ったんだろうが。文句言う筋合いねえだろ」

 Mr.バッドエンドの言葉に、再び心を掴まれる。


 その通りなのだ。


 俺は復讐のために鏑木を利用した。


 その結果がこれになったことも、分かっている。


「だったらなおさら、手前だけでもぶっ殺す!!」


 崩野へと風が流れ込んでいく。おそらく大量の空気の圧縮で真空状態へなった空間へと空気が流れ込み、更にそれを圧縮しているからだろう。


「まったく、自分の犯した罪を棚に上げる人間ってのは嫌な物だねえ。ま、俺が陥れてきた人間達も大体そういう奴らばっかだったしね。別に幻滅はしないけど」

 

「その減らず口、すぐに閉じさせてやる!!!」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「よし、ある程度は動けそうだ」

 一階に取り残されていた翅村は、少しふらつきながらも頭を押さえて立ち上がった。


「一応、ゆっくり行っておくか」

 残念ながらまだ体がバランスを取るのに慣れていないようだからな。


 崩野がそう簡単にくたばる筈ないし、リハビリついでに歩いていくか。


 そう思った翅村はゆっくりと二階へ上がった。


「って、何だこの穴は」

 そこには大きな穴が開いており、三階が見えた。


「あそこは赤井君がいるところじゃないか……。大丈夫なのか?」

 無事を確認しようと思ったが、あるものに気がついた。


「まさか……。人か!?」


 そう確認せざるを得ないような状況で、それは倒れていた。


 三階の大穴の破片が二階に転がっている中、手がそこから覗いていたのだ。


「おいおい、マジか!? 赤井君とかじゃないだろうな!!」

 急いで上に被さっているコンクリートの塊を除ける。



「これは――――――――」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「吹き散らせぇぇ!!」


 崩野の特大の圧縮空気がMr.バッドエンドへと撃ち込まれる。


 その威力はまさに大砲。


「“エアブラスト”!!」


 それも圧縮した空気を一気に放出する技ではあるが、“エア・ガン”や“エア・バズーカ”とはレベルが違う。


 大量に圧縮した空気を一本の筒のようにして相手へと撃ち出すのは変わらないが、そこに少しジャイロ回転をかける。


 圧縮された空気が撃ち出されることによって、そしてジャイロ回転がかけられることによって、一直線に飛ぶ空気塊は爆風を生み出すのだ。


 ゴバッと音を立て、強制的に作り出された風の流れに周りの空気も吸い込まれて、更に威力は増す。


 そして大きな破裂音を響かせて、ビルの壁をぶち抜き三階にあったコンクリートの破片なども全て外へと押し出した。



 さっきまで居た場所にMr.バッドエンドの姿が見えないことを確認すると、次の衝撃にそなえる。


「それくらい瞬間移動で避けられるんだっつの!!」


 Mr.バッドエンドが後ろから襲い掛かってくる。やはり、技は当たらないか。


 だがこの男はまだ気づいていない。


「くたばれ崩びゃ?」


 Mr.バッドエンドの言葉が途中で寸断された。


 爆風。


 強烈な圧縮空気がMr.バッドエンドが立っていた付近を襲ったために、その空間の空気も全て押し出され、擬似真空空間が出来上がった。


 そこへ空気が流れ込むことで起きる吹き戻しの風に、Mr.バッドエンドは引っかかったのだ。

 俺はそれがわかっていたからこそ衝撃にそなえて爆風を耐えられたが、瞬間移動直後のMr.バッドエンドは空中に居るため爆風に巻き込まれたのだ。


 どうでもいい話だが、瞬間移動能力者は基本空中へ瞬間移動を行う。


 理由は簡単で、もしも少し瞬間移動先の座標がずれてしまえば、体が地面に埋まるという事態が起こりかねないからだ。


 だからこそ、Mr.バッドエンドが空中に飛ぶことも分かっていた。


「な、何でだ!?」


 もともとさっきの目的は、手前のバランスを崩させることだよ。


 次は、引き寄せる!!


「圧縮!!」


 Mr.バッドエンドと俺との間にある空気を思いっきり圧縮し、また擬似真空空間を作り出す。


「ど、どういうこった!?」

 真空空間に空気が流れ込む、つまりはまたも風によって、Mr.バッドエンドはこちらへよたよたと引き寄せられる。


「後は圧縮して終わりだ!!」


 Mr.バッドエンドの体ごと圧縮して、赤井君に触れさせて――――――。


「って、慌ててる振りするだけでもう天下でもとった気分かい?」

 Mr.バッドエンドは顔を歪ませそう笑う。


「“裏霧(ブラインドフォッグ)”」

 その声と同時に崩野の視界が真っ暗に染まる。


「これは!?」

 崩野の頭の周りに、黒い煙がもくもくと張り付いていた。


「地味な才能だよね、狙ったところに黒い煙を貼り付けるだけの才能。人を陥れるのには意外と使えるけど。あとこれついでな」

 崩野の腹部に、激しい衝撃が走る。


「今のは“瞬化蹴刀(サウザンドシューター)”。蹴りの速度を瞬間的に早くする才能だ」

 蹴り飛ばされた崩野が赤井君のあたりまで飛ばされた。



「滑稽なものだな。お前ら、守りたいものも守れず、その命を無駄に散らすだけだぜ? 鏑木のように、変に関わっちまうからあんな風になっちまうのさ」


「何よりも鏑木がかわいそうだなぁ。お前らのせいで、俺に惨たらしく精神的苦痛を味わされた上に殺され、いまや見る影も無く瓦礫の下に埋もれてるんだからなぁ」


 ハハハハハハハ、とMr.バッドエンドの笑い声が辺りに響く。





「おい」


 Mr.バッドエンドの笑いを遮るように、いきなりその声が聞こえてきた。

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