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Skills Cross ~Another Life~  作者: 敷儀式四季
篠崎の異変。
13/144

~出たとこ勝負。~

「ん?」

 間之崎学園での昼休み。

 篠崎の携帯に、相馬からメールが届いた。


『今日六時、寮の前で待つ』

 と、一文だけ書かれていた。


 果たし状みたい、と篠崎が思ったのは伏せておこう。


「まだ4時半だけれど? 一体いつから待っててくれたの?」

「大丈夫、今来たところというやつですよ」

 放課後飛び出すように篠崎は帰り、急いで寮まで戻ると相馬がすでに待っていた。


 相馬の手にはスーパーの袋が握られていた。

 

「解決法が、見つかったって事なの?」

「えぇ、一応」

 相馬が珍しく言葉尻を濁す。


「どんな方法なの?」

「これは、解決法とはいえないかも知れません……。それに、私が今から予定していることについても、謝らなければなりません。予定より早いですが、話しましょう。とりあえず中に入りませんか」

 相馬の顔は少し沈んでいる。


 篠崎はその顔を見て不安になるが、相馬なら大丈夫と信じて寮の鍵を取り出し、中に入る。

 そして、二人は向かい合って電気もつけずにリビングで向かい合った。


「これは根本的な解決は出来ないということを念頭に置いて、話を聞いていただけますでしょうか」

 相馬は篠崎の目を見て、話し始めた。


「まず、篠崎さんの吸血鬼性はおそらく完璧には取り除けません」

「……そう」

 あらかじめ分かっていたかのような反応だった。


 そんな虫の良すぎる話は無いだろうと。


「ですが、無差別に人を襲うというような行動はなくすことが出来るかもしれない方法ならあります」

「どんな?」

「篠崎さんには苦痛かもしれません。篠崎さんが吸血鬼化してもらった上で、私がその状態の篠崎さんを倒すというものです」

「……」

「もちろん、私としても貴女の身体に出来るだけ傷はつけたくないですし、それ以前に女性を殴るというのが、私自身として許せた行為ではありません」

「……」

「嫌というのなら無理にするつもりはありません。それはそれで他の方法を考えますから」

「いや、いい。その方法で大丈夫」

 覚悟を持った目で相馬を見る。


 篠崎は相馬に会ったときから気づいていた。


 相馬の目が少し赤くなっていたことに。

 その目の下にはうっすらと青いくまが出来ていたことに。


「そうですか。分かりました。それならば私も男をきめましょう。女性を殴りたくないという気持ちは今だけ置いておくことにして、死力を尽くしたいと思います。ですが、」

 相馬はそこで言葉を区切った。


「貴女に拳を向けることに対して、先に謝っておこうと思います」

 そして、相馬は篠崎に対して二度目の土下座を行った。


「ちょ、ちょま!! 良いって良いって!! 私だってそれくらい別に許すから!!」

 やはり篠崎が慌てる結果となった。


「では、こんな怪異譚簡潔に完結させましょう。まずは準備が必要ですね――――――――――」

「準備?」

 篠崎はキョトンとしていた。




 7:04、寮前。


「いいですか、篠崎さん。吸血鬼化したら身体を乗っ取られると思いますが、そこから頑張って意識を奪い返してください。吸血鬼を自分の才能スキルだと思って、使いこなすイメージだと完璧です」

「わ、わかった」

 寮前では、相馬が篠崎の両肩を掴んで目を見て話していた。


「私が今から攻撃を貴女に加え、あまつさえ作戦のためとはいえ肌に傷を負わせてしまい本当に申し訳ないと思っています」

「それは言わない約束だってば。それに、どっちも直るんだから大丈夫よ」

 見ると、篠崎額には赤い線が入っており、そこから少し血が垂れだしている。

 何かで切った様だ。


「貴女は半吸血鬼ハーフヴァンパイアだそうですから、操るのはそう難しい話じゃないだろうとあの男は言っていました。大丈夫です。自分を信じてください」

「うん。でも、ちょっと相馬近いよ……」

 篠崎は顔を赤らめてもじもじとする。


「っと。それは申し訳ありませんでした。では、戦闘開始と行きましょうか」

 相馬は篠崎から離れ、地面に書かれてある赤い線のところに立ち、内ポケットから厚くて黒いレザーの手袋を両手にはめた。

 その相馬が立った場所の両脇には水が8分目くらいまで入ったよくある500mlのペットボトルがふたを閉められて規則正しく3×3で並んでいた。

 両方あわせて18本。

 相馬の前には発泡スチロールの箱が置いてあった。

 そして何故か相馬体中からは少し白い煙が出ていた。


「位置も場所も天候も出来上がりました。おそらく大丈夫でしょう。私が吸血鬼の意識を弱めますから、その先は貴女の戦いです。準備はいいですか?」

「もちろん。この程度で負けるような女じゃないわ。じゃあ、行くわよ!!」


 篠崎は右手に掛けていた手錠に鍵を差し込み、ガチリと音が鳴るまで回した。


 ポトリと、手錠が腕から落ちた。

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