~赤井の過去、どうしても忘れられない記憶。(23)~
それを見ていたMr.バッドエンドは地面に降りてきた。
「何だ、結構持ったじゃないか。それでも、お前はしばらく戦えないだろうがな」
「ま、普通の瞬間移動才能者ならこんなことにはならねえ。お前だから、なったのさ」
ゆっくりとMr.バッドエンドが降りてくる。
浮遊する才能でも持っているのだろうか。
「どういう、ことだ!!」
翅村がふらつきながらMr.バッドエンドに吼える。
「お前、自分の目で瞬間移動する座標を演算してたよな。最初から、生まれたときから瞬間移動系の才能を持つ人間は、そんなことはまずしないんだよ」
「なら、どうやって!」
「もちろん長距離跳躍の場合は事情が変わるが、そういう才能を持つ人間は自分のいる空間に敏感なのさ。目をつぶっても軽く瞬間移動できるほどにな。話を戻すが、目を開けたまま跳躍するって事は自分の視界が一瞬で切り替わるってこと。つまりフラッシュに近いものをずっと見せ続けられていることになる」
「お前の速度は瞬間移動を二倍で行っているからな。慣れていないお前には大ダメージだったろうよ。その上瞬間移動で空中に長時間居続けたから重力のバランスを取れなくなってるんだろ? ジェットコースターに乗った後、少し足元がふらつく感じを強くした感じ、あるよな?」
Mr.バッドエンドの言うことは、確かに的を得ていた。
ということは、あの男はこれを狙っていたということになる。
「まだ、いける!!」
翅村がバランスを崩しながらも瞬間移動を行う。
だが次の瞬間に、翅村がMr.バッドエンドの遥か後方でドン!! と音を立てて壁に激突していた。
「無茶するなよー。そんな不安定な状態で跳んだら、『○かべのなかにいる○』になりかねないぜ?」
そんな状態の翅村を見て、ハハハとMr.バッドエンドが笑う。
「大丈夫か、翅村!?」
崩野が翅村に近寄ろうとするが、間に立っているMr.バッドエンドが邪魔している。
「そうだなぁ、俺を倒してからいけ!! てか?」
「どうしてお前はそう日本の小さな文化のみに詳しいんだよ。ったく、俺の場合大抵えぐい死に方になるぜ」
崩野は右手の指を動かし、臨戦態勢に入る。
「殺すだけなら、簡単なんだよ」
「はぁ?」
Mr.バッドエンドが間抜けな声を上げる。
無理も無い。
さっきまで翅村が邪魔で、使えなかったという面もあるからだ。
というか、調節が出来ない。
「圧力、“解・放”!!」
ベキベキッと周りから軋むような音が聞こえてくる。
そして、Mr.バッドエンドのいる付近から爆風が流れる。
「ん? 何をし――――――――」
異変は次の瞬間起こった。
ブシャアと、Mr.バッドエンドが体中から血を噴き出したのだ。
「かっ、ひっ!?」
そしてMr.バッドエンドの体が破裂した。
「○かべのなかにいる○」の元ネタは、Wizardryというシリーズのゲームの中の迷言だったりします。
知らない方もいると思うので補足。