~赤井の過去、どうしても忘れられない記憶。(21)~
「来た、か。あの男の運命が残念でままならない」
「律儀な野郎だ。倒されにくるとはな!!」
Mr.バッドエンドが現れた瞬間に、崩野と翅村さんが走り出していた。
「この銃弾でお前を終わりにしてやる」
翅村は銃をMr.バッドエンドに構えて、早速引き金を引き絞る。
「あれぇ!? それってこないだ世界的に使用禁止が命じられた才能封印弾じゃなかったっけか!?」
わざとらしくMr.バッドエンドは叫びながら、引き金が引き絞られる直前に瞬間移動で移動してその銃弾を避ける。
「あぁ。その通りだよ。治癒系才能者が治療できなくなる魔の銃弾だからな。才能で今の医療は更に進歩した、だがその代償として、才能を使わない医療のレベルは確実に落ちてしまったからな。元々この銃弾は、他の人間がこれを作る前に作っておいて、法律で規制させるために作られたデモンストレーションの弾丸だ。世界中で俺しか持ってない」
「ということは、あと何発かしかないってことかい?」
体の回りに火の玉を6個作り出し、それを連射するように打ち出すMr.バッドエンド。
「はっ!! そうやってからかいながらも、お前はその銃弾を怖れてるんだろうがよぉ!!」
打ち出された火の玉が急に中央に集結するようにグニャリとその軌道を変えた。
「お前言ったよなぁ、不老不死って。なら、その才能を消されちまったらお前はそのまんま老衰するって事だろ!!」
Mr.バッドエンドの実年齢は596歳。普通の人間なら死んでいる。
強制的に普通の人間に変えさせるあの銃弾を受けてしまえば、即死こそないが絶対に倒すことが出来る。
「圧・縮!!」
中央に集められた火の玉は小さくなり、崩野の手の中に納まる。
「手前の炎で焼けろ!!」
そして崩野の手から炎が噴出される。
「厄介な才能だな!! その“圧壊”!! 攻撃を全部跳ね返されちまうみたいなもんかよ!!」
とは言いながらも瞬間移動でその炎を避けた。
「避けられたと思ったよな」
だが、そのすぐ横にまで翅村さんが迫っていた。
「っつ、そうか!!」
「残念だな」
Mr.バッドエンドのこめかみに当てられた銃が火を吹く。
だが、その銃弾はMr.バッドエンドには当たらなかった。
というか、Mr.バッドエンドの頭そのものが爆発して消し飛んだ。
「な、何!?」
頭をなくしたMr.バッドエンドの肉体が地面へと落ちる。
「やったのか!?」
「いや、この銃弾にそんな力は……」
崩野も翅村も、何が起きたかわからない。
「いやだからさ、そんな簡単に死ぬわけ無いじゃん? 何言ってんのお前ら」
とはいえさっきのは死の危険を感じたぜ? と笑う。
「だってその銃弾、才能を消しちゃうから。逃げて当たらないようにするしかないんだよね。そうなると俺の“自爆上等”、体のいたるところを爆散、爆破させられるって意味不明な才能を使うしかないだろ? いやぁ、なかなか役に立ってくれたぜ」
銃弾を避けるためだけに、頭を吹っ飛ばしたのか、こいつは。
「さっきのは本当にびびった。翅村君の才能を忘れてたよ。“早い者勝ち”」