~赤井の過去、どうしても忘れられない記憶。(18)~
いや、本当ごめんなさい。
色々忙しかったんです。本当。
この話が完結するまで結構掛かりそうです。
いや、気のせいであろう。
余りにもずっと思い詰め続けていたことが一瞬で解決されて、戸惑っているだけだ。
とりあえず、鏑木を探すか。
そう思って屋根から飛び降り、辺りを見回すとすぐに発見できた。
鏑木は何のことは無い、住宅街を散歩していたのだ。
「あ、遅かったわね。ったく、すぐに助けに来なさいよ」
「お前、あの男には何もされてないのか?」
「えぇ。面白い奴が追っかけてきてるとか言って、急に瞬間移動で消えたからどうしたものか悩んでたのよ」
「いや本当、無事でよかった。アンタに何かあったら、俺も立つ瀬が無かったからな」
「そう思うなら利用してほしくないわね。ま、軽口を叩けるって事は成功したって事なんでしょう?」
「案外脆い男だった。俺は、あんな男に人生を崩されたのかと思うほどにな。これから、どうするかな」
「これから、どうする? だとぉ? あの程度で俺様が殺されるわけ無いだろうが。だがな、お前。あれがどれだけ痛いか知んねぇだろ? 自分がされて嫌なことを他人にするなって習わなかったのかぁ!!!」
その声は、俺達の動きを封じるのには余りあるものだった。
「ば、かな……!?」
気配を感じる。
だが、振り返れない。
振り返りたく、ない。
「倒したんじゃ、無かったの?」
「いや、だって……」
いくらなんでも、生きていられるわけが無いのだ。
体の隅々まで炭化されて、死んだ。
才能の中には活性、再生を促す回復系のものもある。
それを見越してこその硫酸なのだ。
活性も再生も追いつけない速度で細胞を破壊する。
そうすれば元となる細胞ごと破壊でき、倒せるはずだったのに。
「そうだな。知らないより、知っていた方が絶望できるか。俺様はな、不老不死なんだよ。いくら傷つこうが、体が勝手に元に戻る」
不老、不死?
「名前は“原点回帰”。才能が発動すれば、いかなることがあっても最終的には体が元に戻る才能だ」
「分かるか? お前がいくら努力しようと、俺様に復讐するなんて出来ないって事さ!! とはいえ、硫酸ってのはバッドチョイスだぜ。あれガチで意識飛ぶほど痛いんだぜ。この“原点回帰”、痛覚までは消せないからな。長い生の中で痛みになれたとはいえ、あれはやばかった」
「とりあえず体が痛みに麻痺してきて思考が出来るようになったときに、一旦海まで瞬間移動して逃げて、そこで硫酸を落としたのさ。そうでもしないとあれはずっと体を蝕むからな。後は体が勝手に治るんだ。治った後で服を着替えればいい」
「まぁなんだ。お前のやってきたことは一切無駄だって事だな」