~赤井の過去、どうしても忘れられない記憶。(10)~
過去編も十話目に突入しましたー。
とはいえ、まだまだ終わりませんが……。
今回の表現、ちょっとグロイことを念頭に置いてお読みください。
「もういいか、いいよね? 多分彼我との圧倒的な実力差に絶望したよね? だったらこんな訳の分からないところで訳の分からない男に赤子の手をひねるように倒されろ」
Mr.バッドエンドは足を一歩踏み出す。
それだけで何故か、一人の白衣の右腕だけが宙を舞った。
切り口は鋭利なもので切られたようにすっぱりと一直線なものだった。
「あ、がぁ!? ひぃぃ!!」
痛みを感じるよりも驚きと熱さが先行した。
「はい、END」
次に一歩踏み出すと、一瞬で腕を切られた白衣の前に移動して、その口に右腕を突っ込んだ。
その手は白衣の男の脳髄を貫き、背中から手が飛び出していた。
男は腕を貫かせた勢いで体をビクンと大きく一度跳ねさせたが、すぐに動きが止まる。
Mr.バッドエンドは腕を引き抜くと、白衣の男は人間のどこにこんな血液が入っていたのかと思えるほどの血液を吐き出して、命の火を消す。
それまででわずか数秒。
残った白衣たちは反応することも出来なかった。
そこから先は、地獄絵図のような光景が繰り広げられた。
腹部に手を突っ込まれて内部から炎で焼かれ。
四肢の関節部を一つずつ切り刻まれ。
体に爆弾を取り付けられ。
圧殺され。
刺殺され。
毒殺された。
「よし、後は君一人ってわけだ」
「ひ、ひぁ……」
残った一人も絶え絶え、といった風で逃げる素振りもない。
「じゃ、写真取っとくか」
男は何も無かった空中からカメラをいきなり出現させた。
「証拠写真だぜ、大事にしとけよ?」
その言葉が終わるや否や、Mr.バッドエンドは残った男に切りかかり――――――、その瞬間カメラのシャッター音が響いた。
白衣の男が地に伏せるのを見ながら、Mr.バッドエンドはカメラを手にとり、出てくる写真を取り出した。
「しかし、インスタントカメラなんて発明を出来るなんて、流石人類」
そう呟くと、倒れている白衣にかがみこんで話しかける。
「ほら、俺の写真だ。よかったな、証拠が出来て。これ持ってっとけよ」
「が、ぐぅ……!!」
男は反応することも出来なかったが、その写真だけは握り締めるようにして持った。
「君が救援呼んだのは知ってるから、俺はここでおさらばさせてもらうよ? じゃーにー」
手を振って歩き出したと思うと、目の前から一瞬で消えた。
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「とまぁ、こんなことが行われたんだろうな。俺もあの現場は見に行ったが、酷いもんだった。あんなことをする――――いや出来るのはMr.バッドエンドしかいない」
事件現場を見に行った崩野さんから、あらかたの概要を聞いた。
正直なところ、納得できないところが多い。
本当にそんなことをする人間がいるのか?
だって、逃げるのを見たってだけで、そいつを殺人犯に仕立て上げようなんて、常人の考えじゃ……!!
「ちょっと待ってよ」
俺の心も代弁してくれたのか、鏑木さんが崩野に話しかけた。
「色々おかしいわよ、その話。動機はもちろんのことだけれど、もっとありえないところがあるわ」
「そのMr.バッドエンドという男の才能は一体何なのよ」