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Skills Cross ~Another Life~  作者: 敷儀式四季
間之スポ編
108/144

~赤井の過去、どうしても忘れられない記憶。(5)~

 翅村は脱獄犯崩野響輔、“時騙しの魔女ファントムウィッチャー”の対策本部へと戻っていた。


「おいおい、本気で全滅したのか? やはり、あの崩野響輔が……」

 パソコンのあるデスクから、回転する椅子を使ってくるりと振り返った男が顔を驚愕にして言う。


「違う、崩野ではない。俺と戦闘した上であんなことをする時間は無かった、それに――――」

「それに?」

「この写真を見てくれ」

 翅村は白衣の胸ポケットに入れた写真を取り出した。


「こいつが犯人だと、今際の際に教えてくれたんだ」


 それを回転椅子に乗っている男は受け取ると、呆れた風に言った。

「ふうん、見た目中学生じゃないか」

「気をつけろよ、その少年。いや男、何せ“時騙しの魔女ファントムウィッチャー”と親しげに話していた。その上一緒に逃げていたしな」

「……世も末だな。こんな少年が全滅させたのか? お前の言いたいことはわかった。調べといてやるよ。」


 そうして男はパソコンへと向き直った。



 そして現場の封鎖、死んだ者達の処理、現場の検証などがあるていど終わった頃だった。


「分かったぜ、翅村」

 手には封筒を持って、男がやってきた。


「早かったな」

 その封筒を受け取りながら、少し驚いた顔をする。


「こいつ、この近所だったんだよ。どうやら普通に生活しているらしいぜ」

「何? こんな危ない存在が近くにいたのか?」

 喋りながら封筒の中身を開けていく。


 どんな男が、写っているのか。

 翅村の目は、復讐に燃えていた。


「これは……、中一なのか?」

「だろ、びっくりしたぜ。あんな芸当、才能がないと出来ないはずなんだが、何故か才能検査はシロ、無才能と出てる」

「どういうことだ?」

「怪しいだろ? どうする、今なら臨時ニュースにその少年もぶち込めるぜ?」

「頼む」

「即答かよ、ははっ。OKOK。ねじ込んどいてやるよ」


 封筒を渡した男は手をぶらぶらと振りながら向こうへ歩いていった。


 翅村は、その資料を見て、握り潰した。


(生涯忘れることは無い名だな)


 頭の中で、もう一度リフレインする。


……!!)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 夜。

 赤井家では夕食を父を除く全員で食べていた。


「カレーうまー」

「カレー大好きだよっ!! ママ!!」

「ほらほら葉月、口元がぐちゃぐちゃじゃない」

 母さんが妹の口を拭っていた頃、それは起きた。


 テレビでは付けっぱなしにしていたバラエティ番組をしていたのだが。

 番組の間にあるニュース中、それを適当に見ていたときに事件が起こった。


「本日未明に、特化刑務所より二名が脱獄した模様です。それぞれ崩野響輔35歳、鏑木絹年齢不詳受刑者です」

 聞いたことのある名前を聞いて、ふとテレビを見る。

 そこには二人の顔写真が映し出されていた。


「あぁ、こいつら!!」

 さっきまで見た奴らじゃねぇか!!


「まさか、見たの……?」

 母さんが心配そうに聞く。


「特化刑務所って言ったら、才能のを持つ犯罪者が捕らえられてるのよ? 怪我してない? 大丈夫?」

 慌てたように俺の身体をぺたぺたと触る。


「別に大丈夫だって!! ちょっと出会っただけ。この話は終わり!」

 心配させたくないから、話をさっさと切り上げた。


 だが、ここで話が終われば事は簡単だったのだ。


「あー、お兄ちゃんがテレビに出てる!!」

「はぁ!?」

 妹、葉月の声に驚いてテレビを見ると、そこには俺の顔写真が映し出されていた。


「この男は、赤井夢斗13歳。脱獄囚を追い駆けていた警察を八人惨殺、先ほどの脱獄犯と一緒に逃げているところも目撃されているところから、仲間だと思われます。できるだけ付近の皆さんは外出を控えてください」


「は?」

「すごいねお兄ちゃん、テレビだよ!!」

 体温が急速に落ちる。口がふさがらない。

 両手から冷や汗が止まらない。何だ、どういうことだ?


 何かの間違いか? 人殺し? 俺が?


「……」

 ニュースを見て母さんは数秒黙った後、おもむろに口を開く。


「違うわよね、夢斗」

 その顔は、今まで見たことの無いほど緊迫感に満ちたものだった。


 声を出すことが出来ない。金縛りにあったような中、力の限りを振り絞って頷いた。

 実際には、数センチ動かした程度なのだろうが。


「うん、だよね。大丈夫よ、お母さんは信じてるから」

 固まっている俺に母さんが歩いてきて。


 ギュッと思い切り抱きしめた。


「大丈夫」

 俺の金縛りも、少しずつ溶けていく。


「落ち着きなさい。いいわね」

 母さんはいつもでは絶対に見せないような冷静さで、どこかに電話をかけていた。


「もしもし、父さん?」

 どうやら父さんにかけているらしい。


「違うの。ニュース見た?」


「夢斗が、夢斗、何故か指名手配に――――――――」


 ピンポーン。


 母さんがそこまで言ったところで、玄関のチャイムが鳴った。

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