~赤井の過去、どうしても忘れられない記憶。(4)~
何というか、五、六話バーっと投稿してちょっと途切れるパターンになってます。
多分直りません。
どうして、あの人は助けてくれたんだろう。
巨大な剣を落としてきた人のことを思い出しながら、走っている最中だった。
「こんなところにいたか」
空からあの屋根の上にいた男が降りてくる。
もう驚かない、もう大抵のことには驚かないぜ。
「大丈夫だったの?」
「ま、色々あったが問題ないぜ。撒いてきた。というか“時騙しの魔女”、どうしてそんな少年連れて走ってんだよ。ショタコンだったのか?」
「違うわよ。この少年が勝手に、というか私が連れてきてるの。この子、ちょっとおかしいわよ」
「何がおかしいんだよ?」
「触れば分かるわ」
俺の分からない話を繰り広げていたようだが、急に男の人が俺の手に触れた。
「??? 何も無いぜ?」
「そうね、才能を使ってみなさい」
俺に触れている男の人は手を広げて、何かを思うように手を見つめていた。
「……ど、どういうことだ?」
急に男の人が何か恐ろしいものでも触るかのように俺の手を離した。
心外だ、ちゃんと風呂だって入ってるのに。
男の人はもう一度手を見つめて、安堵したような溜息をついた。
「な、何だ今のは? 才能が、使えなかった?」
「でしょう。あの感じ、才能を封じる手錠に似てること無い?」
「だな。一体お前、何者だ?」
背の高い二人に睨まれる。
「え、ちょ、ちょっと……?」
思わず萎縮してしまう。
「……まぁいい、帰れ。お前だって一般人だろ」
数秒俺の顔を見つめた男の人は、俺にそう言った。
「いいの?」
美人さん、鏑木が聞くが男の人は別にいいだろ、と答えた。
「あ、あの……」
「さっさと帰れ。俺達だって子供を信頼するほどお人よしじゃない人生送ってんだ。これ以上俺達の行き先を知られたくない。もう一度言う、さっさと帰れ」
その声はドスの聞いたものだった。
「は、はい!!」
そこから俺は、一目散に家へと帰った。
何だったんだあの人たち。
脱獄犯、とか白衣の人たちが言ってた気がする。
「お帰り、何かお疲れね」
家に帰ると、母さんがエプロンを付けて出迎えていた。
日常だ、と安堵しながら俺は自分の部屋へ戻った。
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その頃、翅村主任。
「ど、どういうことだ……、これは……?」
崩野に逃げられた翅村は、とりあえず部下達と合流しようとしていた。そのとき緊急の信号が入り、その場所に向かっていたのだ。
そして、到着した。
生き地獄へと。
目の前は悲惨というよりも凄惨な状況だった。
白衣と言う白衣が、赤黒く染まっていた。全ての白衣は地に伏し、切り裂かれ、穴を開けられ、焼かれていた。
漂うのは鉄臭さ。こびりつくように離れない。
流れるような感覚ではない、どろりと絡みつくような。
「あれは、何だ?」
その生き地獄と普通の世界を切り分けるように、向こうの方に何か巨大な剣でも刺さっていたような切込みが地面に深々と出来ていた。
「しゅ、主任……」
その時、かすれるような声を聞いた。
「お、おい!! 大丈夫か、何があった!!」
その声は地に伏していた一人で、ひゅうひゅうと息の抜けるようなかすれ声を上げながら、必死に何かを伝えようとしていた。
「こ、この男、が……」
翅村主任は一人の男からある写真を受け取った。
血に塗れた手で、それでもそれだけは汚すまいと持っていたようだ。裏は血まみれだが肝心の表の面には血がほとんどついていない。
「後は、お願い、しまし、た――――」
事切れたように、その男は力尽きた。
「な、何だ、これは」
どういうことだ、何が起きたんだ、一体誰がこんなことを!!
その思いで頭がいっぱいになる。
その写真には、切りかかろうとする一人の男が写っていた。
「これは、確か――――――――」
さっき出会った、あの少年?
翅村はその写真を白衣の胸ポケットに入れ、無線で連絡を入れた。