~赤井の過去、どうしても忘れられない記憶。(3)~
当初から言ってることですが。
出来れば感想をいただけるとすごく嬉しいです。
スキクロアナザーも終わりに近づいてますしー。
「流石だな、翅村主任」
屋根の上で崩野と主任、翅村が会話している。
「何故、逃げ出した。協力的だったはずだ。しかも挙句、あの最重要研究課題“時騙しの魔女”まで共に逃がすとは」
「いいじゃねえか。逃げたいって言ってたんだから。それに俺は、お前らの言うところで恐ろしい狂人なんだろ? なら狂人らしい振る舞いをさせてもらおうってんだ」
「……確かに、お前のやった所業だけを見ればお前は狂人だろう。だが私は今でも、お前があんなことをやるようには思えんのだ」
「そういってくれんのは、アンタと輝の野郎だけだぜ。――――心の支えになってくれたことには、感謝する」
その言葉にだが、と付け足す。
「ここは見逃してくれ」
「それは無理な相談だ」
ふぅと翅村は溜息をついた。そして懐の拳銃を取り出す。
「俺の才能だけでは自信が無いのでな。こいつと、これを使わせてもらう」
またも懐に手を突っ込むと、小さな箱のようなものを取り出した。
その側面を押すようにして中身を取り出して、崩野に見せていた。
「そいつは銃弾か?」
「あぁ、特注の物さ。才能を封じる手錠があるだろ? あれはとある鉱石を埋め込んであるから才能を封じることが出来るわけだが、この銃弾にもそれが埋め込まれてある。何せその鉱石は希少だから銃弾なんかにゃそうそう付けてくれないが、今回は特別なようだ」
その銃弾を六発、リボルバー式(回転式)の銃に一つずつ入れていく。
「アンタその銃好きだよな。オートマ(自動式)にはしないのか?」
「こっちなら自分で直せるし、あの研究所の訳分からない特製銃弾ですら撃てる。何より愛着があるんでな」
ガシャリとシリンダーを戻す。
「アンタには恩がある。ここは頼むから逃げてくれ」
「お前の口調はお前を知らないものからしたらむかつくもんだよな。お前は俺を真の意味で気遣ってるんだろうが、それじゃあ逆効果。お前じゃ俺には勝てねぇみたいなこと言ってる」
「……悪いな」
「仕事だ。俺も上の言うことは良く分からんしな」
そして銃を崩野に構えた。
「才能使う気は?」
「あるに決まってんだろ」
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そうして屋上で戦闘が繰り広げられ始めた頃、こっちでも動きがあった。
「あれ、あんたどこ行こうとしてんだ?」
「逃げるのよ馬鹿」
俺と美人さん、鏑木と呼ばれていたような、その人がその場から立ち去ろうとしていた。
(どうせアイツの戦闘は周りを巻き込むだろうし。後でアイツのことだから私くらい見つけるでしょ)
そう思い、じゃあね少年、とその場を去ろうとしていた。
が。
「おい、逃げようとしてるぞ!!」
当然会話などしてしまえば、白衣の連中にばれる訳で。
「ちょ、あんたのせいでばれちゃったじゃないのよ!!」
「なんで俺まで逃げてんだ!?」
赤井と鏑木は住宅街を疾走していた。
「大体アンタが私に話しかけたりするからでしょ!! ほら、何とかしてみなさいよ!! こんな可愛らしい女子が追い駆けられてるのよ?」
横を見ると、鏑木さんの背がさっきよりも縮んだような気がした。心なしか顔も幼くなっている気がする。
大体どうにかしろっていったって……。
この状況についていけてないのだ。
「待てー!!」
追いかけっこを行っている最中に、それは起きた。
走っている一瞬、少し暗くなった気がした。
「ん?」
そう呟いた次の瞬間、ドォンと何かが落ちた音がした。
音のした方、後方を振り向くと。
「な、何じゃこりゃ!!」
俺達と白衣連中との間に、巨大な壁が出来上がっていた。
その壁は鈍い銀の輝きを持っており、ずっと上の方には柄と持ち手が見えることから、まさかとは思うがこれは剣なのだろう。
幅は道路をぶった切るように刺さっていることから、5mはあるだろう。
長さはビル三階分ほど、10mは軽く超えている。
よく見ると、一番上に人が見えた。
その人は何かを伝えようとしているのか、口をパクパクと動かしているが高さと距離があるため聞き取れない。
「チャンスね、いいからさっさと逃げるわよ」
鏑木さんはまた走り出した。
「来ないの?」
そんな風にいわれたら、少しついていってしまいたくなってしまう。
結局鏑木さんと走ることになった。