~赤井の過去、どうしても忘れられない記憶。(1)~
ついに赤井の過去編スタートっ!!
まず、この話を始める際に、分かってもらわないといけないことがある。
Mr.バッドエンドは掛け値なしの最悪の存在であると。
善悪と言う基準で言うなら、悪のほうにゲージが振り切ってしまっている。
それも、一流の悪であった“創造主”とは訳が違う。
あれを気高き悪と呼ぶならば、こちらは泥塗れの悪だ。
邪悪、とにかく邪なのである。
自分のしたいことを圧倒的な力で叶えながらも、気高き悪ならば堅気の人間に迷惑をかけないように尽力する。
それが、違う。
まず、目的そのものが違うからだ。
万人の不幸。
今時戦隊物でもなさそうなその考えを、未だに持って動き続けている。
後は、この、俺が送った昔話で、この男の本性を知れるだろう。
四年前、夏休み。赤井の実家の近所。
「あー、夏休みも中盤か……」
赤井は愚痴を漏らしながら、宿題のことを考えつつ、友人の家から帰っていた。
じりじりと焼きつく太陽にイライラしながら、さっさと帰って涼もうを思っていたのだが、そうは行かなかった。
「ちょ、どいてどいてどいてぇーー!!!!」
その必死な声は後ろから聞こえてきた。
「ん?」
その声で振り返った瞬間、黒髪が赤井の視界を覆った。ぎりぎりスリットのように見える向こうには、人影が写った。
その人影の顔は、目が大きく黒く、唇と頬はほんのり赤く艶やかな女性だった。
何というか、初めて見る、息を呑む様な美人。
次の瞬間ドンッ、とその女性とぶつかってしまった。
「うわっ!!」
ぶつかって女性が倒れこんでしまう。
赤井は助けようとその女性に手を伸ばして、その光景に驚いて手を止める。
「げほっ、げほっ……。あ、あぁ……。えっ!? どういうこと!?」
その女性は、自分の手を見て、そして顔を触って体中を震わせ驚愕の声を上げる。
そこには。
一瞬で白髪に変わり、皺だらけとなった老婆が座り込んでいたのだ。
「あ、あぁ……。“全年齢対象”が、かき消された!? もう、一度!!」
絶え絶えになりそうなしわがれた老婆の声が、全力で叫ぶ。
その瞬間髪が黒髪に戻っていく。
皺も張り、メキメキという擬音語が聞こえるほど身体が若返る。
「死、死ぬかと思った……」
その女性はポカンと口を開けたまま硬直した赤井の手を取って起き上がる。
だが、赤井の手に触れるとまた髪が白髪になり、顔もしわがれたこの世のものとは思えないような老婆へと戻った。
「うわぁ!?」
思わず赤井は手を離し、老婆は倒れこむ。
「あ、あんた、何者……!?」
しわがれた声で老婆は精一杯叫んだ。