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短中編「堕天使受肉体愛好家の『A』」
毎日2エピソードずつ鋭意連載中!
それからの三年間、天使教育を行う女子校は規律の締め付けを行い、ほとんどの学校では全寮制を取り入れ、生徒は外界との接触を厳格に管理された。
当然ながら文化祭に学外の者が参加することは禁じられたが、生徒たちの要望は強く、三年が経とうとしてようやく一部の学校で招待制の参加を認める気運が醸成され出した。
たまたま事件が文化祭で起きたのであって、他校の生徒との接触が原因ではないのでは、と見なされていたのが大きい。
俺はというとこの三年の間で、見事なまでに利己的な思考法を身につけていた。
秋野ユウヒへの罪悪感が彷徨い形を変え辿り着いた結論は、俺になんら罪はなかったという確信だった。
堕落は自己責任だ。俺がきっかけを与えたかも知れないが、彼女は自分で強く願ってしまったのだ。「堕落したい」と。そして俺に最高の痴態を演じて見せてくれたのだ。
俺の人間性が欠落していると思いたくば思うがいい。その通り、我が麗しの青春はどす黒く塗りつぶされてしまった。
そうして胸のつかえが降りてからというもの、ずっとその時を待ちわびていた。天使教育の女子高の学内に入れるその日を。
なにせ、受験勉強に明け暮れる日々も、高校に進学してからも、悶々とした日々を送っていた。堕天を目撃したときの快楽に比べたら、世間に溢れる誘惑なぞ塵芥に等しい。
あの愉悦を再び味わうにはどうしたらいいか、俺は徹底的に研究を続けた。
まず判ったのは、俺が堕落を誘発させるには特殊な条件が必要ということだった。
秋野ユウヒに出会うまで俺の周りに堕天する女子がいなかったのは、俺が突然あの場で特殊能力に目覚めたからではない。必要なのは、天使教育を受けている女子生徒という依り代なのだ。
あの事件からの三年間、周りの女子生徒といくら目を合わせても、会話しても、俺に肉体接触を求めてくる者はいない。
試しに、というのも失礼な話だが、中三のときにかなり無理をして彼女を作り、もちろん合意の上でキスをしてみた。
しかし当然のように何も起こらない上、秋野ユウヒの時と比べたそのキスは味も素っ気もないものだった。
高校進学のタイミングで別れたその彼女は、嘘をついていなければ処女であったはずだが、やはり問題は天使教育の有無なのだという結論にたどりつく。
天使教育の実施校がその門戸を開くのを、まだかまだかと待ちわびた。だがその間にも準備を怠らない。例え文化祭の校外参加が認められても、まず招待制で間違いはないだろうから、校内にコネを作っておかなくてはならなかった。
そこで俺は、近年SNSで注目を集めるようになった『堕天儀式チャレンジ』に注目した。
SNSでは眉をひそめるようなチャレンジ動画が生まれては消える。あれから二年ほど時間が経過し、民衆心理から事件に対する謹慎さが薄れてきた頃から、堕天を引き起こすような儀式を「やってみた」とする動画がじわじわと増加した。
もちろんはじめは非難する言葉がネットに溢れた。しかし反面、堕天は当事者の秋野ユウヒに原因があったとする見解が浸透していたため、改めて彼女を誹謗するような意見や、原因を炙り出そうとする勇敢な行動だといった意見までもが飛び交い出した。
結果が失敗に終わることは知りながら、独特な手法を試す動画が人気を博し、バズり動画の定番として名を馳せるようになっていたのだ。
当然ながら女子高側はSNSに目を光らせ、校内の生徒からそんな動画が出ようものなら即退学の処置をとった。
しかし、年頃の高校生の自己顕示欲、承認欲求は並外れている。必ず各校に数名は、リスクを取ってでもチャレンジ動画を撮りたいと思っている者がいると俺はにらんだ。しかもそれが、オカルトマニアたちであれば尚更だと。
俺は県内外を問わず、様々な女子高のオカルト研究会のSNSに連絡を試みた。
俺はあの事件の渦中に居合わせて生き残り、堕天をその目で見たのだと告げると、半数は連絡が途絶え、半数は食いついた。
その半数と連絡を密にし、彼女たちの在籍校の中から文化祭に関する規制緩和の話題が出てくるのを祈りながら待った。
そして今年ついに、つながっていたオカ研がある女子高のひとつが、招待制で文化祭の門戸を開くことを決めたことを知って、俺は小躍りした。
隣県に所在するその高校のオカ研部長に、俺は連絡を入れた。俺を学内に招き、儀式を遂行する時がきたのだと。
その部長は名を松尾アヤといい、俺を迎えられることを嬉しく思っている、と返信してきた。
08 へつづく
※タイトルの『A』には3つの意味が?!
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