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【悲報】現代ダンジョン時代、俺の職業がLv.1チンピラ【詰み】  作者: 道雪ちゃん


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ひよちゃん(百傑)と、しーちゃん(百傑)

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

 秋葉原ダンジョン1層。


そこは、最新の装備を自慢し合う若者や、デートついでに小型モンスターを狩るカップルで溢れ返っていた。


そんな和やかなエンジョイ勢の波を割りながら、異様なオーラを放つ5名が進んでいく。


「百傑の方には、大魔神の龍崎さん以外には初めて会ったんですよ。……やっぱり緊張するなぁ。あ、透もか!」


ひよりが少し照れくさそうに笑うと、隣を歩く志乃は威厳を保ったまま頷いた。


「なに、緊張なんかしなくていいんだぞ。貴殿も同じ百傑だろう?」


「ははは、そうでしたね。つい忘れてました」


(……なにこれ。ダンジョンの中なのに、こんなに癒やされてていいの?)


志乃は内心で、ひよりから溢れ出すマイナスイオンに打たれていた。


殺伐としたダンジョンの空気はどこにもない。


ひよりの存在そのものが、志乃にとっての「聖域セーフティエリア」になりつつあった。


「緊張ほぐしのついでだ、三上殿。貴殿は普段、親しい者たちになんと呼ばれているのだ?」


「俺ですか? 構成員のみんなにはボス、両親からはひより。……妹からはひよちゃん、友人からは名前で呼ばれてますね」


(ひよちゃん……! 呼びたい、死ぬほど呼びたい……!)


「な、ならば、私は貴殿を『ひよちゃん』と呼ぼう。少しは打ち解けるだろう?」


「小春以外にそう呼ばれたことないので、ちょっと恥ずかしいですが……。仲良くなれたみたいで嬉しいです、志乃さん」


(きゃわ……っ!!)


志乃の心臓が、ひよりの純粋な破壊力に悲鳴を上げた。だが、ひよりの追撃は止まらない。


「俺は、志乃さんのことはなんてお呼びしたらいいですか? やっぱり、志乃さん……かな?」


「それだと今までと変わらないだろう。そ、そうだな……『志乃ちゃん』とか、どうだ?」


(言ってしまった! 私のキャラじゃないのに……!)


志乃が顔を赤らめる中、ひよりは人差し指を顎に当てて少し考え、名案を思いついたように顔を上げた。


「うーん。ひよりが『ひよちゃん』なら、志乃さんは……『しーちゃん』とか?」


(神様……感謝します。私は今、人生の絶頂にいます……)


志乃は天を仰いだまま、完全に石化した。


その横で、透が腹を抱えて笑うのを必死に堪えている。


「あ、ごめんなさい! 調子に乗りすぎちゃいました……志乃さん、本当にごめんなさい!」


謝るひよりの声に、志乃は慌てて魂を現世に引き戻した。


「嫌だ!! 『しーちゃん』と呼んでくれ!!」


「え?」


「呼んでよぉ……」


「わ、わかりました! しーちゃん」


「ングフッ!!」


膝から崩れ落ちそうになる志乃を見て、透が眼鏡の奥で愉悦の光を宿した。


(……そういえばひよりん、掲示板のスレで『妖怪人たらし』と呼ばれていたこともあったっけ。納得だね)


「大丈夫っすか? しーちゃん」


心配そうに顔を覗き込んだ鉄に、志乃の鋭い一喝が飛んだ。


「貴様は違うッ!!!」


「えっ……すいやせん……」


「鉄、とりあえず黙ってろ……」


 頭を抱える涼に、鉄が小声で囁く。


「アニキ……俺、なんかやっちゃったんすか?」


「いや、お前は……なんでもない。気にするな」



 周囲では、フロアモンスターの『ドローン・ビー』や『セーフティゴーレム』が現れるたびに、獲物を探していた大勢の探索者たちが「いたぞ!」「囲め!」と群がっていた。


 ここは人気のスポット。高レベルな自分たちが手を出せば、彼らの貴重な獲物を奪うことになってしまう。


「ボス、片倉様。ここは探索者が多いですから、討伐は彼らに任せて奥へ進みましょう」


 涼の進言に、ひよりが頷く。


「そうだね。しーちゃん、ここはさっさと抜けちゃいましょうか!」


「っぐ……。そ、そうだな。行こう、ひよちゃん」


志乃は「しーちゃん」と呼ばれるたびに悶絶しつつ、なんとか足取りを正した。


5人は、モンスターの群れを悠々とスルーし、足早に深層へ向かった。



………



2層までは探索者の数が多く、獲物の奪い合いを避けるようにスルスルと通り抜けた一行は、続く3層へと足を踏み入れた。


「この階層のボスは『パトロールマギア』というモンスターらしいね。近接、遠距離どちらの攻撃手段も持っているらしいけど……まあ、たかが知れているよ」


 透が淡々と告げた言葉通り、戦闘は一瞬だった。


 ボスの鋭い刺突を、鉄がツインタクティカルトンファーを旋回させて鮮やかに受け流し、生じた隙を逃さず涼の一閃が奔る。


「まあ、こんなもんだろうな。……ただ、やはりひよちゃんの部下は筋がいい。ステータスの差はあるだろうが、鉄くん、そのトンファーは受けるというより流して隙を作るためのものだな。涼殿の剣技も見事なものだぞ」


「ありがとう! しー……志乃さん!」


「お褒めいただきありがとうございます、片倉様」


 志乃のプロの眼に叶った評価を受け、鉄は顔を綻ばせ、涼は恭しく頭を下げた。


「涼、鉄。ここからペースを上げていくよ。目標は10層。魔銃の使用も許可するよ!」


「「承知しました、ボス!」」


 (あぁ、ひよちゃん……。可愛らしいだけじゃなく、こんなに凛々しい一面もあるなんて、ずるいよぉ……!)


 志乃が内心で身悶えしていると、ひよりが屈託のない笑顔でこちらを振り向いた。


「しーちゃんは、なるべく後ろで見ていてくださいね!」


「ありがとう、ひよちゃん。……ふふ、頼もしいな」


 そこからは怒涛の快進撃だった。ペースを上げた一行は、5層の転移石を瞬く間に登録し、6層へと到達する。


「透。鉄と涼だけでここまで来ちゃったけど、この後はどうする?」


「……そうですね。女帝、今回は戦闘には参加されないおつもりで?」


 透の問いかけに、志乃は満足げに腕を組んだ。


「いや。あまりにも2人の戦いぶりが見事だったのでな。手も口も出す必要はないと判断したまでだ」


「なるほど。では、このままひよりんと女帝は手を出さず、9層から10層あたりでお互いの『いいところ』を見せ合っては決着をつけるというのはいかがですかな?」


 (見たい! マエストロ……ナイスアシストだ!)


 志乃は心の中で喝采を送り、即座に頷いた。


「わかった。今後、協力することもあるだろうしな。マエストロの言う通り、私の戦い方も見せよう」


「しーちゃんの戦ってるところ、早く見たいなぁ。……あ、透! ここからもう『出して』いいよね? しーちゃんが見せてくれるんだから、俺も見せないと。隠したままじゃ、本当のお友達になれないよ」


 (出すって……? さっきも言っていたけれど。……それにしても、本当にどこまでも優しいのね、ひよちゃん)


 志乃がその言葉に胸を熱くさせていると、透は「やれやれ」といった様子で肩をすくめた。


「……はぁ、わかった。ボスのお好きなように(あーあ、私のお楽しみタイムが終わってしまうな)」


「ありがとう、透! じゃあ、しーちゃん。しーちゃんが見せてくれるから、俺も少し見せますね。……みんな、おいで」


 ひよりが静かに呟き、指輪を掲げる。


 刹那、指輪から爆風と電光が迸り、フウとライが降臨した。


さらにひよりの足元からドス黒い影が波紋のように広がり、ドロリとした闇の中から100名もの漆黒の軍勢が這い出してきた。


「幹部50名、構成員50名の編成になったからね。ここからは全員で行くよ。みんな、よろしくね!」


「「「「「ハイッ! ボスッ!!」」」」」


 100名の屈強な男たちが一斉に放った咆哮が、ダンジョンの壁を震わせる。


 志乃は、その光景に立ち尽くした。


(こんな力、見たことがない……。スーツを着た部下の一人ひとりが、熟練の探索者のような強者の風格を纏っている。それに、この2体は何……? こんなモンスター、見たことがない……!)


「ひよちゃん。これは、すごいぞ……。こんな攻略、見たことがない。ダンジョン探索の在り方そのものが変わってしまう……。ひよちゃんが快進撃を続ける理由が、今、はっきりとわかったぞ」


「しーちゃん、ありがとうございます! みんな、本当に頼りになるんです。……フウくん、ライくん。この方は百傑の一人、『女帝』の片倉志乃さん。しーちゃんだよ」


 紹介を受け、フウは志乃の瞳を静かに見据えて一礼した。ライもまた、志乃から放たれる強者の気配を察し、その凶悪な貌を釣り上げてニヤリと笑う。


「よし、みんな行こう!」


 志乃を含めた総勢107名。


 秋葉原ダンジョンの歴史上、類を見ない圧倒的な物量と暴力的なまでの力が、深層へと向けて進撃を開始した。

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― 新着の感想 ―
10層帰還後、しーちゃんの心は何処に辿り着くのだろうか・・ 警戒?畏怖?敬愛?ガチ恋じゃないといいなぁ、剣姫さんが嫉妬しちゃうw
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