ひより、目力に目覚める
ゆるゆると書いてます。
変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。
手に入れたレアアイテム「身代わりの守護札」は、ギルドの換金所で32万円という大金になった。 普通の大学生なら浮かれて遊びや服に使うところだが、ひよりは違った。
「……よし。これで、いつか『本物の防具』を買うための軍資金ができたぞ」 彼は1円も無駄にせず、将来のために専用の貯金口座へ全額を移した。
これを機に、深夜まで及ぶ居酒屋バイトも辞めることにした。
「時給1,400円のために寝不足でダンジョンに入るのは、リスク管理ができていない」
ひよりは真面目な顔でそう判断し、大学の講義が終わるとそのままダンジョンへ向かう「専業探索者」に近い生活リズムを構築し始めた。
………
「ひより、……今日もダンジョンなの?」 夕食時、母が心配そうにひよりの顔を覗き込む。
「うん。でも大丈夫だよ、母さん。最近はコツを掴んできたから、かすり傷一つ負ってないんだ」 「そう……? 疲れてるなら無理しちゃダメよ。昔からお節介で自分を後回しにするところがあるんだから」
母の心配は、ひよりの怪我や体調に向けられていた。 実際、ひよりは「逃げ足」と「威圧」のおかげで、ここ数日は全くダメージを受けていない。
(母さんを安心させるためにも、もっと安全な戦い方を突き詰めないと……)
優しさゆえの決意が、彼をさらなる「効率」へと向かわせる。
………
ダンジョン1層、少し奥のエリア。 三体のゴブリンが同時に襲いかかってくる。かつてのひよりならパニックになっていたが、今の彼は冷静だ。
「逃げ足」を発動し、オレンジのパンツを翻して回避。
「おらぁ……そこをどけ……おらぁ……!」
「威圧」をバラ撒き、敵の動きが鈍った瞬間に、手入れされたバットが鈍い音を響かす。 三体同時でも、もはや危なげない。
ひよりの戦術は「徹底した安全確保」という名の「完封」に近づいていた。
目標数の討伐を終えた瞬間、脳内にアナウンスが響く。
『レベルが4に上昇しました。』
『新たなスキルを獲得しました:メンチを切る Lv.1』
「……メンチを切る?」 またもや不穏な名前のスキルに、ひよりは困惑する。
(料理関係のスキルではないよな……?)
淡い期待を抱きながら詳細を確認すると、現実は無情だった。
【メンチを切る】:消費MP3 対象1体を凝視することで、成功すれば敵対意思を削ぎ、全ステータスを低下させる。さらに相手のレベルが自分より低い場合、恐怖のあまり動けなくなることがある。
「……これ、やっぱり料理じゃなくて、ただの『睨みつけ』じゃないか」
ひよりは溜息をつく。どこまでも職業が「チンピラ」であることを突きつけてくる。
………
自宅の鏡の前。 ひよりは、新スキルを「平和的解決のための手段」として研究し始めた。
「母さんを心配させたくないし、これなら相手を過度に傷つけずに済む……素晴らしいスキルかもしれない。」
そう、ひよりは『メンチを切る』から『かつあげ』のコンボで平和的(?)に解決させることを考えていた。
グレーのタンクトップ姿の青年が、鏡の中の自分を真剣な顔で睨みつける。 練習を重ねるごとに、その眼光は鋭く、不可避な圧力を帯びていく……ような気がする。
「よし。これで明日は、もっと安全に探索ができるはずだ」
ひよりは満足そうにメモを閉じた。 中身はどこまでも「穏やかなひより」のまま。 けれど、鏡に映るその姿は、ますます「成り上がりを狙う無敵のチンピラ」としての完成度を高めていた……気がする。
■ 三上 ひより レベル:4 職業:Lv.1チンピラ
HP: 45 / MP: 18
筋力: 6 / 器用: 10 / 耐久: 6
敏捷: 22 / 魔力: 0 / 知力: 12 / 運: 16
・スキル
威圧 Lv.2 / かつあげ Lv.2 / 逃げ足 Lv.1 / メンチを切る Lv.1
・装備
鉱石バット (筋力+5)
黒い革鎧 (耐久+2)
革の小手 (耐久+1)
(予備:短刀)
実質ステータス(補正込)
筋力: 11 / 器用: 10 / 耐久: 9
敏捷: 22 / 魔力: 0 / 知力: 12 / 運: 16
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