衝撃と事故
本日3話投稿になります
【新宿じゃないよ】神楽坂ダンジョン攻略スレ【神楽坂だよ】Part.4
802:名無しの探索者
なぁ、1層に三上さんいたんだけど、あれ見たやついる?
803:名無しの探索者
なにがあった? また黒スーツたちが暴れまわってたのか?w
804:名無しの探索者
違うんだよ。見たことないイケメン連れてたんだけど、そのイケメンがとんでもないデカさの魔銃構えてスライム撃ってた
805:名無しの探索者
なんだよ。魔銃使いがファミリーになっただけじゃん。
806:名無しの探索者
違うんだよ!! 複数固まってたスライムが1発で弾け飛んだんだぞ!?
807:名無しの探索者
は?
808:名無しの探索者
いやいや、モンスターはやられたら吹っ飛んで消えるとかはあるけど弾け飛ぶは盛りすぎだろ
809:名無しの探索者
盛ってねーよ。あまりにもデカい銃声...というか大砲にしか聴こえなかったけど、それ聴いてた女の子の探索者腰抜かして泣いてたんだぞ
810:名無しの探索者
悪い、それマジだ。俺も見た。モノクルかけた黒髪のイケメンだろ?
811:名無しの探索者
それだ! 三上さんも「ここでは使ったらダメなやつだ...」みたいな顔して引いちゃってたもん
812:名無しの探索者
あぁそのイケメン、女性だぞ。受付で話してるとこに俺いたもん
813:名無しの探索者
あの綺麗な人だろ?
814:名無しの探索者
まじか、あの人女性だったのか
815:名無しの探索者
「データのためにもう1回だけ」とか興奮してたのが怖かった。
816:名無しの探索者
どんな形の魔銃だった?
817:名無しの探索者
あのモノクルの人が三上さんよりデカいから、170だとしても180くらいの魔銃だわ
818:名無しの探索者
まてまてそれ対物ライフルじゃねーか?
819:名無しの探索者
そんなもんスライムにぶっ放したらあかん
820:名無しの探索者
ググったけどこれにそっくりだわ
【画像】
821:名無しの探索者
Snipex Alligator......
822:名無しの探索者
こんなもんの魔銃あるのかよ。とんでもない金かかるぞ
というか一般の探索者は扱えねぇしどんなステータスしてんだよ
823:名無しの探索者
一個言えるのは、そんな代物1層で使うなってこと
824:名無しの探索者
それはそう
825:名無しの探索者
誰か三上さんに言ってくれ
826:名無しの探索者
わかった。見たら言っとくわ
827:名無しの探索者
でもさ、そんな魔銃士が仲間になったってことはひより組の攻略が進むってことだよな
828:名無しの探索者
間違いなく神楽坂の踏破階層更新だな
829:名無しの探索者
てか今日副官さんと風雷コンビみた?
830:名無しの探索者
いやいなかった。
831:名無しの探索者
モノクルの人の試験かなんかだったんじゃない?
832:名無しの探索者
そんな試験あるのか?
833:名無しの探索者
まあ会ったらそれも聞いとく
834:名無しの探索者
報告待ってるわ
………
ゲートのを抜けると、そこには見慣れた神楽坂ダンジョン1層の光景が広がっていた。
湿った土の匂いと、岩肌を伝う水の音。
どこにでもある、初心者たちの登竜門としての洞窟だ。
「あ、三上くんだ! 1層なんて珍しいね」
「こんにちは! 副官さんは今日はお休みですか?」
入り口付近の広場では、数組の若手探索者がスライム相手に剣を振っていた。
ひよりが足を止めると、憧れの眼差しを向ける彼らから次々と声がかかる。
「今日は俺と新しい家族の二人で、ちょっとした調整なんだ。みんな、怪我しないように気をつけてね」
ひよりは爽やかに笑って一人一人に応じる。
神楽坂の有名人となった今、こうした交流も日常の一部だ。
透は隣で少し緊張した面持ちだったが、ひよりの落ち着いた振る舞いに、小さく深呼吸をして気を引き締めていた。
.........
簡単な交流を済ませ、二人は人だかりを離れて洞窟の奥へと進む。
1層の深部、袋小路になっているエリアに差し掛かったとき、透が足を止めた。
「……ひよりん、見て」
彼女が指差した先には、複数のスライムが寄り集まり、半透明の体を揺らしている。
「……撃っていいかな?」
透の声には、先ほどまでの緊張を塗りつぶすような、抑えきれない高揚感が混じっていた。
言うが早いか、彼女はその場に寝そべり、愛魔銃『Alligator』の下部に備わったバイポッドをカチリと立てる。
冷徹な参謀の顔が、今は新しいおもちゃを前にした子供のようにキラキラと輝いていた。
ひよりは念のため「察知」を全開にし、周囲を確認する。
「……うん。あっちの周りには他に人はいなさそうだね。よし、いいよ。やってみて」
ひよりの許可が出た瞬間、透の指がトリガーにかかった。
「よし……狙って……今ッ!!」
――ダァァァァァンッ!!!
空気が爆ぜた。
1層という空間にはあまりに不釣り合いな、物理的な衝撃を伴う爆音が轟く。
銃口から放たれた魔弾は、スライムたちを「倒す」暇すら与えず、その存在を跡形もなく蒸発させた。
衝撃波で洞窟の壁が震え、天井からパラパラと土がこぼれ落ちる。
「あっ……」
ひよりは、耳の奥で鳴り止まない耳鳴りを感じながら、血の気が引くのを感じた。
「これ……絶対ダメなやつだ……」
案の定、後方の通路から「なんだ!?」「崩落か!?」という驚愕の声が反響してくる。
「ねえ! ひよりん、これ凄いよ!! 予想以上の魔力収束率だ! もう一発いい? いいよね!? もっとデータをとらなきゃ!」
「透! やばい、やりすぎだ! とりあえず逃げよう!」
瞳を爛々と輝かせている透の腕を掴み、ひよりは全速力で走り出した。
途中で「何事ですか!?」と駆けつけてきた探索者たちとすれ違ったが、ひよりは「すみません! 事故です! すみません!」と、顔を引き攣らせながらペコペコと頭を下げ続け、その場を逃げ出した。
.........
そこからの探索は、ひよりにとって冷や汗と心労の連続だった。
「フロアボスなら撃っていいよね? ね??」
いつものクールな知性派はどこへやら、透は事あるごとに魔銃を構えようとする。
ひよりは必死の形相で彼女を宥め、厳しい条件を突きつけた。
「必ず俺の後ろで撃つこと! それと、撃つのはフロアボスだけ! 分かった!?」
「……了解。フロアボス、限定……」
渋々承諾した透だったが、いざ接敵すればその火力は圧倒的だった。
戦略や連携など必要ない。
魔力405の補正を受けた魔銃が放たれるたび、敵は跡形もなく消え去る。
まさに規格外の「ゴリ押し」探索だ。
10層に到着する頃には、B〜Dチームが長時間の周回を続けたおかげで、二人のレベルは54に上がっていた。
「レベリングもお試しも十分! 今日はこれで終わり!」
ひよりは、これ以上透のブレーキが壊れる前に、強引に探索を切り上げた。
.........
地上に戻り、受付前のロビーへ出たところで、ひよりは足を止めた。
そこには、腕を組んでこちらを待っていた探索者の金子さんと、冷や汗を拭っている林田くんの姿があった。
「三上くん。……非常に、非常に言いづらいんだが」
金子さんの声は重く、ひよりの胃をきりきりと締め付けた。
「低層であのような軍用兵器まがいの武器をぶっ放すのは……その、他の探索者の心臓に悪いな。怖がっていた子もいたよ」
「本当に、本当に申し訳ありません!!」
ひよりは勢いよく頭を下げた。
「今日が初めての使用で、俺もあそこまで響くとは予想外で……二度と、低層では使いません! 申し訳ありませんでした……!」
隣で透も、先ほどまでの熱狂が嘘のようにシュンとして、ひよりに合わせて深々と頭を下げる。
「三上さんもこう言ってますし、金子さん、もういいですよね? これは事故ですよ! 事故!」
林田くんが必死にフォローを入れる。
「まあ、そうなんだけどな。三上くんが周囲をしっかり確認して撃ったのは、分かっている。責めるつもりはないんだ。本当に確認したかっただけだ。三上くんがいい子なのは、林田も俺も知っているからな」
金子さんは苦笑いを浮かべてくれたが、ひよりの表情は晴れなかった。
「怖がらせてしまったのは承知しているんですが、もしその子がいたら、直接謝らせてください。自分のせいで探索が嫌いになってしまったら……」
「はは、大丈夫だ。三上くんは怖い子じゃないって伝えてある。もし見かけたら君のところに連れて行くからな」
そう言って、二人は離れていった。
.........
「……データのためと、つい探索者に戻れた嬉しさで、冷静さを忘れていた。ひよりんに、あんな風に頭を下げさせて……私は、家族失格だ。申し訳ない……」
ロビーの隅で、透が今にも泣きそうな声で呟く。
「そんな顔するなよ。かっこいい考察勢の参謀さんだろ? 先生に怒られた年下の女の子みたいになってるぞ」
「……まあ、実際、大人に注意された年下の女の子なのだがな」
少しだけ唇を尖らせて言い返す透。
その元気を見て、ひよりはようやく小さく息を吐いた。
「言い返す元気があるならOK! あとは受付で今回のことを謝って、今日は帰ろう」
.........
「妃那さん、今回こんな騒ぎを起こしてしまって……申し訳ありませんでした」
「申し訳ありませんでした……」
受付で並んで頭を下げる「神楽坂の有名人」二人に、周囲の探索者からも「なんだなんだ」と視線が集まる。
「事情は聞きました」
妃那は、これ以上ないほどほっぺを膨らませて怒ってみせた。
「怪我人がいなかったから良かったですけど! 怯えてしまった人もいるんです。今後は本当に注意してください! ……もう! こんなこと三上さんに言わせないでください!」
プンプンと怒る妃那だったが、その瞳にはひよりへの深い信頼が宿っていた。
「安全第一の三上さんが、わざとやったんじゃないのは分かってます。でも……おかげで仕事が増えました。……罰として、早く二人だけで話すっていう約束、守ってくださいね?」
最後はふっと柔らかい表情を見せた彼女に、ひよりは「最優先事項で約束します」と頷き、周囲にペコペコしながら出口を抜けた。
沈みゆく夕陽が、神楽坂の街並みをオレンジ色に染め上げる。
「ひよりん……約束、絶対忘れないようにカレンダーに入れておくよ」
「……透、それは嫌がらせか?」
「...スケジュール管理も参謀の仕事だと思ってね」
少し情けないけれど、昨日よりもずっと強くなった絆を感じながら、二人の影は家路へと伸びていった。
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