剣姫襲来
ゆるゆると書いてます。
変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。
大学の講義と課題に追われ、ようやく手に入れた夏休み前の休息。
ひよりがスマホを確認すると、そこには凛からの控えめ(?)な、しかし執念の滲むメッセージが届いていた。
『凛さんは優しいなぁ。うちの母さんにも、あんなに良くしてくれるし』
そんな天然な感想と共に「明日は神楽坂に行きます」と返信したのが運命の分かれ道。
翌朝、神楽坂ダンジョンのロビーには、場違いなほどのオーラを放つ「世田谷の剣姫」が鎮座していた。
………
「ひよりさん。西川さんの妹さんは……どこですか?」
笑顔だが目が笑っていない凛。
ひよりが「受付の茶髪の人だよ」と教えるやいなや、凛は獲物を見つけた猛禽類のような足取りで妃那の前へ。
「はじめまして、赤城凛です。いつも『うち』のひよりさんが、お世話になっているそうで?」
「あぁ、あの剣姫と有名な赤城凛さん! 姉と三上さんからお話は伺ってます。西川妃那です」
周りの探索者たちからは「世田谷の剣姫だ」とか「三上くん、剣姫の知り合いだったのか」などちらほらと聞こえる
一触即発かと思いきや、妃那はひるまない。それどころか、
「あっ三上さん、例の『2人だけの秘密のお話』、夏休みになったらじっくり聞かせてくださいね?」
と、いたずらっぽく爆弾を投下した。
「はぁぁ!? 2人だけの!? 何それ聞いてない!!」
「ちょっと凛さん落ち着いて! 妃那さんも茶化さないでくださいよぉ!」
ロビーの探索者たち(元ゆるキャラ)が「三上くん、ダンジョンでは無双なのに受付じゃ完敗だな!」「どっちが本命なんだよー!」と囃し立て、神楽坂にはかつての淀んだ空気など微塵もない、温かい笑い声が響いていた。
………
10層、転移石の前。
同行する凛の前で、ひよりが静かに告げる。
「みんな、出ておいで」
影から滲み出るように現れたのは、副長・涼を筆頭とした、総勢32名のひより組のメンバー。
「……えっ、こんなに……?」
凛が絶句する。
1週間に1回、着実に増やし、鍛え上げてきた「ひより組」の全容。
「一応、これでも世田谷のトップやってるんですよ?」
そう言って護衛を断ろうとした凛だったが、10層ボスのフロアに足を踏み入れた瞬間、その言葉は意味を失った。
………
現れたのは、世田谷13層の「蟻」と同じく数の暴力で攻めてくる多種なスライムと、巨大なキング・メルトスライム。
おまけに物理耐性持ちだ。
凛が「魔法職のいないこのメンバーでどうするのか」と案じた瞬間、涼の怒号が飛ぶ。
「お前らぁぁッ!! クソスライム共をすり潰せ!!! 突撃ィ!!」
風の如きフウが道を切り開き、30名近い構成員が連携して敵を足止めする。
その後方から涼が「円陣」で全軍の能力を底上げし、魔銃マグナムで撃ち抜いていく。
物理が効きにくいなら、魔力で、数で、圧倒的なステータスで「分」を分からせる。
そして仕上げは、ひよりの持つ魔銃「銀月」。
――ズドンッ!!ズドンッ!!ズドンッ!!
空間を震わせる轟音と共に、ボスの核が露出する。
「凛さん、これが新しい力だよ、『強欲』」
ひよりが唱えた瞬間、巨大なスライムは悲鳴を上げることすら許されず、膨大な経験値(魔素)へと変換され、ひよりの中へと吸い込まれていった。
………
「凛さん、どうだった? 13層のヒントになったかな」
「……凄すぎて、なんの参考にもなりません!」
凛は清々しいほどの敗北感と、それ以上の敬愛を込めて笑った。
パーティという概念を超えた「軍団」の主。
自分が惚れた男の「今」を刻みつけ、彼女は再び前を向く。
「凛さん、もう帰りましょう」
「えっ? 私が邪魔だからですか?ごめんなさい……」
「……違うよ。甘いもの、食べに行く約束でしょ?」
「あっ、行きます!やったぁぁ!」
そうしてダンジョンを抜ける2人。
「妬けちゃうな……」
そんなことを呟いて背中を見送った妃那だった。
.........
【悲報】職業がLv.1チンピラだった件 Part.6
7:ガチ恋勢
今日、神楽坂ダンジョン行ってきた。
8:名無しの探索者
ファッ!?パワーワード過ぎる
9:名無しの探索者
ス ト ー カ ー 襲 来
10:名無しの探索者
もう怖いこの子。執念がレベル55のそれじゃない。
11:ガチ恋勢
だって気になったんだもん!!
あとね、13層攻略のヒントになるかなって思ったのも本当なんだから!
12:名無しの探索者
まあその考えは理解できるわな。
不動剣陣も行き詰まってるしな。
13:名無しの考察勢
で、剣姫。なにか糸口は見えたか?
14:ガチ恋勢
全然。圧倒的戦力で、うじゃうじゃいるスライム種とバカみたいに大きいキングメルトスライムを瞬殺してた。
一応、ここにレスすることはひよりさんに許可もらってるから。言えないこともあるけど。
15:名無しの探索者
瞬殺……なんそれ。
スライム種のボスってことは物理効かないだろ普通。
16:名無しの考察勢
物理耐性にはどう対応してた?
17:ガチ恋勢
まずね、軍団のチンピラさんたちが全員「構成員」になってた。
18:名無しの探索者
20人くらいの黒スーツとかションベンちびるわww
19:ガチ恋勢
違うよ、29人の構成員。あと副官さんと2体の風雷くんコンビ。
20:名無しの探索者
32人!? エグい……。
でも数だけじゃ物理耐性は対応できないだろ。
状況的には世田谷13層と同じだけど、物理耐性はまた癖のある階層だな。
21:ガチ恋勢
でね、副官さんとひよりさんなんだけど「魔銃」で対応してたの。とんでもない威力の。
あと、風雷くんたちもそれぞれ風属性と雷属性持ってた。
22:名無しの考察勢
ちょっと待て剣姫。副官が魔銃を使えるのはわかるが、ひよりんは魔力がないだろ?
23:ガチ恋勢
MPを弾に変換して使えるやつなんだって。
『デザートイーグル』とかいうやつに似てるらしいよ。魔銃は詳しくないからわからないけど。
24:名無しの探索者
あぁ、とんでもない威力の魔銃なのは間違いないわそれ。
ってことは反動もエグいし癖凄いだろ……。
25:名無しの考察勢
いや、たぶん使いこなせる。
ひよりんは敏捷と運特化だと思われがちだが、器用も高いんだ。というか全ステータスが高水準なんだが、器用さと筋力で反動を抑えつつ、高い運で的を外さない……ってとこか。
26:名無しの探索者
考察勢の考えに納得したわ。
たしかに豪運の射撃とか、外れる気しないな。
だいたい運なんて1あがるか、0かだもんな
27:ガチ恋勢
副官の涼さんも同じことを説明してくれたよ。
あと1個だけ、ヒントになり得るかもしれないことも教えてくれた。
28:名無しの考察勢
なんだ??
29:名無しの探索者
めっちゃ気になる。
30:ガチ恋勢
「これが使えるかわからないけど」って前置きで、アサルトライフル型の魔銃なら、効率よく雑魚(蟻)を掃討できるのでは?って言ってた。
31:名無しの探索者
あーーー! たしかに!!
「一撃」じゃなくて「手数」で殲滅するのか!
32:名無しの探索者
問題は性能と扱えるか、それが蟻に効くのかだな。
33:名無しの考察勢
盲点だったわ。試してみる価値はあるな。
不動剣陣なら……魔算師か白紋か。
それにしてもひよりんには、いい参謀がついてるな。
34:名無しの探索者
おい剣姫! 試してみようぜ!
魔算師が魔銃ぶっ放してるとこなんて想像出来ないけどw
35:名無しの探索者
白紋様も想像出来ないって……ギャップ萌えか。
36:ガチ恋勢
一応リーダーには伝えてあるし、ミーティングもする予定。
でも可能性があるなら試さないともったいないもんね。
37:名無しの探索者
そうだな。あともう一歩なんだ。頑張れよ!
38:名無しの探索者
このスレはホームなんだ。お前(剣姫)も、もう家族だと思ってるよ。
39:ガチ恋勢
ありがとう、みんな。
色々言ってきた件については許してなかったけど、もう許してあげる。
40:名無しの探索者
ちょろいな。
41:名無しの探索者
勝訴。
42:ガチ恋勢
…………は?
43:名無しの探索者
ごめんなさい。
44:名無しの探索者
申し訳ございませんでしたぁぁぁ!!!!
45:名無しの考察勢
剣姫、申し訳ないんだがここに連絡をくれ。捨てアド貼っておく。
[メールアドレス]
46:ガチ恋勢
わかった。あとで連絡する!
47:名無しの探索者
俺もメールする!
48:名無しの探索者
ワイもしたろ!
49:名無しの考察勢
別にいいけど、面倒かけてきたやつら、後が怖いと思うぞ?
50:名無しの探索者
ヒェッ。
51:名無しの探索者
ヒェッ……。
52:名無しの探索者
ごめんなさい何もしません。
53:名無しの探索者
考察勢、得体が知れない分ガチで怖いんよな……。
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