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【悲報】現代ダンジョン時代、俺の職業がLv.1チンピラ【詰み】  作者: 道雪ちゃん


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それぞれの役割、久しぶりの失敗

ランキング入り、多くのPV数に驚きつつ、感謝しております。

今後ともこの作品をご愛読いただければ幸いです。

皆様、ありがとうございます。

 神楽坂ダンジョン、8層。


 ひよりが足を踏み入れるまで、この場所は神楽坂ユーザーにとって「未知」の領域だった。


 静まり返った通路を、ひより組の軍勢が規則正しい足音を立てて進む。


 その道中、副官・涼は、どうしても自身のあるじに尋ねたいことがあった。


 先ほどの戦闘で目にした、あの音もことわりも置き去りにした、神速の抜刀術のことだ。


「……ボス。先ほどの技、あれは一体……どのような理屈であのような速度を実現されているのでしょうか」


 涼の問いに、ひよりは歩みを止めることなく、事も無げに答えた。


「ああ、あれ? 昨日の探索でレベルが45まで上がったんだけど、新しく習得したんだ。……『無音一刀』っていうらしいよ」


 その名は、文字通り音を置き去りにする絶技。涼はその言葉を、己の魂に刻み込むように深く反芻した。


「自分も……いつか、鍛錬を積めば、あのような高みへと辿り着けるでしょうか。ボスの隣に立つ者として、あの力に手が届かないことが……不甲斐なくて」


 涼の言葉には、忠誠心ゆえの焦燥が混じっていた。


 それに対し、ひよりは足を止め、優しく微笑みながら彼の肩を叩いた。


「大丈夫だよ! 涼の抜刀術はもう十分すぎるほど凄いもん。……ちなみに、コツは敏捷と器用さだって。システム的には筋力はそんなにいらないみたいだよ」


 ひよりがステータスを確認したところ、敏捷こそひよりが勝っているが、器用さの数値に関しては、涼とひよりはほぼ互角なのだ。


「あとは感覚と想像、それに実戦の経験かな。俺だって、フウくんのあの舞うような三次元の攻撃や、ライくんの一撃必殺の重み、鉄壁の防御にはなれない。……でも涼は、すべてにおいて凄くバランスがいいよね。それは本当に羨ましいことなんだよ。基礎が完成されているからこそ、成長すればどんな技も習得できる可能性があるんだから」


「……っ、ありがとうございます。この涼、ボスの御言葉を胸に、さらなる研鑽を積む所存です」


 ひよりにかけられた、全幅の信頼を込めた言葉。それが、涼の胸に澱んでいた不安を、春の嵐のように一気に消し飛ばした。


 自分はまだ、ボスの力になれる。


 ボスの背中を預かる資格がある。


 その確信が、彼の忠誠心をさらに強固で、苛烈なものへと昇華させた。


 神楽坂の8層以降は、ひよりという異分子が訪れるまで、モンスターが飽和状態にある「処女地」だった。


 蓄積された魔素。


 それらが産み落とした魔物の経験値は、今、すべて「ひより組」が独占する形となっている。


(……これ、移動時間や世田谷の混雑を考えても、今の僕らには世田谷より効率がいいかもしれない)


 一般探索者の数倍、いや将来的には10倍に達するであろう経験値の取得効率。


 そして、軍団による徹底的な殲滅速度。


 強くなれる圧倒的な環境が目の前にあるのなら、それを使わない手はない。


 世田谷を諦めたわけではない。


 けれど、今のひよりには、以前のような「安全に帰れればいい」という臆病な自分ではなく、「もっと強くなって、どのダンジョンの最深部も更新してやりたい」という、静かな、しかしマグマのように燃えるような野心が芽生えていた。


 ひより組は、2チームに分け、サーチ・アンド・デストロイの徹底した行軍を繰り返し、8層、9層を瞬く間に蹂躙し、長い時間をかけて周回した。


 フロアボスを「作業」のように撃破し続けた結果、ひよりのレベルは47まで跳ね上がっていた。


 凄まじい爆速レベリングだった。


 そして、ついに辿り着いた節目の10層。


探索者の平均レベルが15前後である状況の中、ここまでたどり着くことができる者は一握りであった。


「やっと転移石だ……」


これで地上階からスムーズに移動できる。


レベルとしても、節目の(間違い)レベル。


ここからこの10層が主戦場になることにワクワクしていた。

 

 だが、同時にひよりは理解していた。ここからが、ダンジョンの「真の姿」であることを。


 10層を境に、モンスターの強さは階段を登るのではなく、跳ね上がる。15層、20層と進むにつれ、その脅威は倍々で膨れ上がるのだ。


 日本一の難関と呼ばれる『新宿ダンジョン』。


 そこでは、日本の守護神と謳われる「百傑」第1位・九条蓮ですら、厚い壁を突破できず17層を攻略したところで足踏みしているという。


 それほどまでに、10層以降の「深層」は、これまでの常識や理が通用しない、文字通りの別世界なのだ。


「さあ、ここからが本当の勝負だね。みんな、気を引き締めて行こう」


 ひよりはマジックバッグのベルトを締め直し、ひより組を引き連れて、未知なる暗闇の奥底へと力強く踏み出した。



.........



 神楽坂ダンジョン、10層。


 そこはこれまでの石造りの回廊とは一変し、壁や天井から絶えず粘り気のある液体が滴り落ちる、不気味な湿地帯のような大空洞だった。


 現れるモンスターのほとんどが、多種多様なスライム種。

 本来、物理主体のパーティーにとっては天敵とも言える相手だが、道中は「ひより組」の圧倒的な手数と暴力がそれを上回った。


「うわ、また来た! ライくん、まとめて叩き潰しちゃって!」


「オオオォォッ!!」


 ライが巨大な棍棒で核ごとスライムを粉砕し、フウが残像すら残さぬ速さで核を正確にハジき出す。


 多少の物理耐性があろうとも、ひより組の「異常なステータス」から放たれる質量攻撃は、中堅クラスのスライムを強引に圧殺し続けていた。


「とりあえずはなんとかなるね。……でも、なんか嫌な予感がするなぁ」


 ひよりがスーツの裾を気にしながら進んだ先。フロアの最奥で待ち構えていたのは、多種多様なスライム種の集団。


 そして、これまでの個体とは次元が違う、山のような巨躯――フロアボス『キング・メルトスライム』だった。


………


「よし、一気に決めるよ! 全員突撃!」


 ひよりの号令で、22名の組員が一斉に飛びかかる。


 だが、キング・スライムはその巨体に見合わぬ反応速度で全身を波打たせた。


「ガァァァッ!!」

 ライの渾身の棍棒フルスイングが、ボスの腹部にめり込む。――だが。


「……ぬ、抜けない!?」


 岩をも砕く棍棒は、底なしの泥沼に呑み込まれたかのように勢いを殺され、逆にその粘液に絡め取られてしまう。


「援護するよ! 『無音一刀』!」


 ひよりが閃光となってキングを真っ二つに切り裂く。

 ……しかし、手応えがない。核が中で移動し、切断された断面は、ひよりが刀を振り抜いた瞬間に磁石のように吸着し、一瞬で元通りに再生してしまった。


「ボス、ダメです! こいつ、物理ダメージをほぼ無効化します……!」


 涼が叫びながら魔銃マグナムを放つ。


 ズドンッ! と着弾した場所だけが、ようやく大きな穴を空けてスライムの体組織を蒸発させた。


「……やっぱり、魔力攻撃じゃないと決定打にならないんだね」


 ひよりは自分の手を見つめる。


 道中の雑魚は「力」で潰せた。


 だが、この巨大な「概念的な物理耐性」を誇るボスを前にして、ひより組の刃はただ空を切るばかり。


「おらぁぁ!!」


 ひよりが放った『覇気』でボスが一瞬怯むものの、道中の普通のスライム種ならまだしも、そもそも「脳」や「心」が希薄なスライム相手では、決定的な隙を作るには至らない。


「……みんな、一旦撤退! 」


 ひよりたちは転移石を使い地上へと帰還した。


 神楽坂10層。


 それは、ただ物理的に強いだけでは超えられない「システム上の壁」を、ひよりたちに突きつけた。


「……どうしよう、これはまずい」


 神楽坂のロビーのベンチ。


 ひよりは、愛用の防刃スーツに少しだけ付着したスライムの跡を恨めしそうに見つめていた。


 副官である涼だけ残して作戦会議。


「ボス、魔力が0でも扱える『魔銃』を装備しましょう。ボスの敏捷と運と器用さがあれば、あのスライムは消し飛ばせます」


「涼のそれ、いいよね。涼の魔銃マグナムは効いてたもんね。……よし、買い物に行こう! 道具で解決できるなら……でも、レベリングも必要だよね。今後はやっぱり魔法や魔力が必要になる」


 ひよりの目が、挫折ではなく、解決へのワクワクした欲望に輝く。


 レベル50へのレベリング、あのスライムをぶち抜くための新武装。


そうとわかれば先に買いに行こう。ここからなら新宿のショップが近いからよかった。


とりあえず妃那さんに話をしてくる。


涼を待たせて受付に向かうひより。



………



「三上さん、どうされましたか?今日はどうでしたか?」


「9層まで踏破できました!ただ……10層が面倒な相手で、今の俺たちだと手が出ないんです」


「9層!?更新おめでとうごさいます!ちなみに10層はどんな感じなんですか?」


「大きな空洞、湿り気のある洞窟って感じ。フロアボスはキングメルトスライムで、物理攻撃が全く効きませんでした。うちは魔法職はいないし、涼が魔銃マグナムを使えますけど、1人ではあの大きなスライム相手には火力不足で…」


「まさかこの神楽坂ダンジョンにそんなモンスターがいたなんて……」


「でも解決策は見つかりました!今日はこれでショップにいって帰りますけど、またレベリングしてから挑戦します!」


「また来てくれるんですね!ありがとうございます。今日はゆっくりお休みくださいね」


笑顔で手を振り受付を後にする。


ショップに向かう足取りは失敗とは裏腹に軽いものであった。

ブックマーク、リアクション、評価をしていただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
広域暴力団の構成員なら、拳銃(チャカ)だけでなく、機関銃や手榴弾、無反動砲まで持ってたりするので、「聖なる手榴弾(密輸)」とか「魔法の無反動砲(横流し品)」とか、ドロップしませんかね。
合藤零士さんが出てくると思ったけどまだ出ませんねw 修行なら何故とは言いませんけど福岡県が良いと思います。 ピストルはもちろんバズーカとか手榴弾も上手くなると思います。
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