ひより、見つかる
ゆるゆると書いてます。
変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。
深夜のオフィス。世田谷支所の主任・佐藤は、爪の手入れをしながらモニターを眺めていた。
そこに、ベテラン探索者の龍崎 剛が訪れる。
「佐藤主任、まだいたか。……例の『チンピラ』の件で話がある」
佐藤は顔を上げず、面倒そうに溜息をついた。
「龍崎さん、またその話? 掲示板の『聖母チンピラ』とかいうふざけたスレッドのことなら、もう見ましたよ。あんなの、暇な探索者たちが寄ってたかって面白がってるだけでしょ」
龍崎は昼にもセンターに出向き、佐藤に説明に行っていたのだ。
「……ただの噂じゃない。あのレベルアップの速さと、凛を屈服させた事実は異常だ。今すぐ庁(探索庁)に報告して、本人の身辺調査とスキルの詳細解析を行うべきだと言ってるんだ」
「龍崎さん」
佐藤は手を止めて、馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「しょせんは『チンピラ』ですよ? 意味の解らない害悪ジョブ。そんなの、政府が予算を使ってまで調査する価値なんてあるわけないじゃない。掲示板の憶測を真に受けて、私の仕事を増やさないでくれる? 私はもっと将来性のある、エリート職業のサポートで忙しいの」
「あの子がもし、既存のシステムを壊すような『バグ』だったらどうする」
「その時はその時よ。どうせ、せいぜい1層でゴブリン相手にするのが関の山でしょ。……あーあ、早くどっかで野垂れ死んでくれないかしら。そうすればこの妙な騒ぎも収まるのに」
龍崎は、目の前の女が決定的な「毒」を吐いたのを聞き、拳を握りしめた。
「……後悔するぞ。あの子が実績を作って上を目指し始めた時、あんたのキャリアは終わる。今のうちにバックアップして囲うべきだ。」
「はいはい、ご苦労様。おやすみなさい」
翌朝。佐藤が「死ねばいい」と吐き捨てたことなど露知らず、ひよりは朝日を浴びて輝いていた。
「よし、今日はレベル13を目指すぞ! ……なんだか、今日はいっぱい良いことがありそうな予感がするな!」
ひよりはオレンジのカーゴパンツのポケットに、母さんがくれた塩飴を詰め込んで、軽やかな足取りでダンジョンへ入っていく。
ひよりの後ろを、岩陰から凛がなびかせるリボンと共に追う。
そしてさらにその後ろ。 『世田谷に面白いユニーク職がいるらしいから、個人的にデータ取ってこい』ってあいつだろ?」
公的な「調査チーム」ではなく、「個人的な好奇心で動く、たちの悪い非番のエージェント(田中と鈴木)」が、ひよりへの接触を開始しようとしていた。
適切なルールも、警告も、バックアップもない。
最悪の条件下で、レベル13の「チンピラ」と「傲慢な大人」が邂逅しようとしていた。
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