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【悲報】現代ダンジョン時代、俺の職業がLv.1チンピラ【詰み】  作者: 道雪ちゃん


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ひより、撮影開始

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

「お待たせしました!!」


ロビーに響いたのは、快活だがどこか鋭い男の声だった。


仕立ての良いダークグレーのスーツを完璧に着こなした男――カメック亀井が、ひよりたちの前で深々と頭を下げる。


「『Quest Style』運営のカメック亀井です。前の仕事が押してしまい、闇王さんとマエストロさんをお待たせするなど……。申し訳ございません!」


「亀井さんですね! いえいえ、大して待ってないですし、新しくできた友人とお話しもできましたし。ね? 寧々ちゃん」


ひよりが隣の少女へ視線を向けると、彼女はもじもじと身をよじり、顔を耳まで赤くして答えた。


「……産まれてきて、一番幸せな時間でした……」


その呟きに、亀井が目を見開く。


「えっ! 『人形姫』さん!? ……以前コンタクトを取らせていただきました、カメック亀井です!」


「え? そんなことあったかなぁ……。ごめんなさい、興味のないことは覚えてなくて」


一転して無表情な顔で淡々と言い放つ寧々。


亀井は乾いた笑いを浮かべながら、額の汗を拭った。


名刺交換を済ませた一行は、亀井の案内で撮影準備へと移る。


「え、え……ひよたん、撮影なんですか……? み、観たいです……!」


寧々がおずおずと、けれど必死な様子で食い下がる。


「困ったな……。亀井さん、見学は大丈夫ですか?」


ひよりが尋ねると、亀井は商売人らしい鋭い目で寧々を見つめ、不敵に微笑んだ。


「もちろんです! あ、なんなら……人形姫さんもご一緒に撮影、なんてことは可能でしょうか?」


その瞬間、透の喉の奥から小さな、けれど確かな拒絶の音が漏れた。


(……チッ、余計なことを)


透は内心で苦い顔をする。


上野の人形姫については調査済みだが、その悪評や不安定な噂は「参謀」として無視できない。


ひよりに近づけたくないというのが本音だった。


「えっ、ねねは……。ねねなんか可愛くないし、写っても迷惑をかけるだけだし、Quest Styleの評判を落とすだけです……よ?」


自分を卑下し、人形の影に隠れようとする寧々。


だが、そこへ救いの手が差し伸べられる。


「そんなことないって! せっかく可愛いんだから、一緒に撮影しようよ。ね、透。いいでしょ?」


ひよりの全肯定の笑顔。その純粋な瞳に見つめられ、透もため息を飲み込むしかなかった。


「……あ、あぁ。亀井さんもひよりんもこう言っているんだ、どうかな?」


「……はい……っ」


寧々は顔を真っ赤にして、消え入りそうな声で返事をした。


撮影の舞台は、上野ダンジョン1層。


どことなく不気味な静寂に包まれた夜の市街地エリアだ。


崩れかけたビルと、錆びついた街灯。


ダンジョン特有の燐光がアスファルトを青白く照らし、新調した装備をより一層際立たせる。


まずは、ひよりのソロカット。


「鬼灯を抜いて、少し鋭い表情を……。そう、獲物を狙う『ボス』の顔で!」


亀井の指示に、ひよりは意を決して名刀『鬼灯【暁】』を抜いた。


だが、カメラを向けられるとどうしても照れが勝ってしまう。


「…………えへへ」


キメ顔をするつもりが、つい溢れてしまった無垢なニコニコ笑顔。


「いいですよ! あぁ、闇王さん、可愛い! いや、カッコいい……! そのギャップが最高だ!」


亀井は狂喜乱舞してシャッターを切る。


「ひよたん、可愛い……」


「寧々さんもわかる? ボス、本当にかわいいんすよねぇ」


「テツ、バカ。またボスに怒られるぞ」


仲間たちの和やかなやり取りを背に、次は透の番が来た。


透は一転してプロの風格だった。


『黒曜鳥のケープコート』を大胆に翻し、軽やかにステップを踏む。


 暗い街並みに舞うその姿は、毒を持ちながらも見る者を魅了してやまない一輪の徒花。


「以前、どこかでモデルをされていましたか?」


亀井が驚愕するほどの出来栄えに、ひよりたちはただただ見惚れるしかなかった。


そして、寧々の番。


「……む、無理……」


ひよりに見られていることを意識しすぎた彼女は、俯いたまま固まってしまった。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」


壊れたレコードのように謝罪を繰り返す彼女に、ひよりが明るく声をかける。


「寧々ちゃん! 俺たちを『人形』だと思って! カッコいいところ見せてよ」


(……人形……。ひよたんは、兎。あの大きい人は、狼。金髪の人は、犬。マエストロは、鳥……)


その瞬間、寧々の脳内が独自のパースで書き換えられた。


カッと顔を上げ、カメラを見つめる。


大きな『熊太郎』を抱き、首をわずかに傾げる無機質なポーズ。その瞳にハイライトはなく、まさに「動く人形」そのもののミステリアスな美しさが際立った。


「いい、いいですねぇ!!」


「寧々ちゃん、可愛いよ! いいね!」


ひよりの声に、寧々はフッと我に返ってまた赤面し、元の恥ずかしがりな女の子へと戻ってしまった。


撮影はクライマックスへ向かう。


「ここで、百傑の3名でお願いします!」


中央にひより、左右を透と寧々が固める。


凛とした知性のマエストロ、病的な美の人形姫。その二人に挟まれる、慈愛に満ちた闇王。


「すげぇ。カッコよすぎて鳥肌立ったっす……ね、アニキ?」


「あぁ。うちのボスと参謀は、最高だ」


涼の誇らしげな呟きと共に、撮影は「ひより組」の集合カットへと移る。


「よし、俺らの家族写真だな!」


ひよりの言葉に、透たちは顔を見合わせて笑った。


「闇王さん、それはこの後たっぷりと。……まずは、この市街地の十字路を中心に……」


亀井の指示で、ひよりを中央に据え、涼と鉄が左右で武器を構えて脇を固める。


ひよりの背中には、透がぴたりと寄り添う。


漆黒、影鋼、黒曜。


新装備の重厚な質感が、市街地の廃墟と混ざり合い、最高の一枚が刻まれた。


全ての撮影を終え、一行は地上階へと戻った。


「本日はありがとうございました! 写真の方はチェック用を後ほどお送りします。……家族写真も、別途仕上げますね。本当に、いいお写真でしたよ」


「ありがとうございます! 楽しみにしてます」


笑顔で去ろうとする亀井に、ひよりがふと思い出したように駆け寄った。


「亀井さん、一つだけ……」


「はい、何でしょう?」


「これは記事にはしないでほしいんですが……俺らには、まだまだ大切な家族がいるんです。いずれ、全員揃った家族写真もお願いします」


「――! ええ、もちろんです! その際はこちらこそ、ぜひ!」


亀井は目を見開き、そして力強く頷いた。


亀井を見送り、ひよりは改めて仲間たちと、そして少し離れてこちらを伺っている寧々を見た。


「さて……撮影も無事に終わったね。寧々ちゃん、この後、どうするの?」


ひよりがいつもの屈託のない笑顔で問いかける。その、あまりに無防備で優しい声。


(……あぁ、また始まった……。今回の相手は底が知れないのに)


透は内心で大きなため息を吐いた。


ひよりに他意はないのだろう。単なる気遣いか、あるいは「友達」になったばかりの相手を放っておけないだけなのか。


けれど、その「無自覚な優しさ」が、孤独を抱えた人間にとってどれほど毒に近い救いになるか、このお人好しは分かっていないのだ。


案の定、寧々の瞳に、再び妖しくも切実な「光」が灯った。


「ねね、は……ひよたんが、居ていいって言うなら……地の果てまで、ついていきたい……です……」


「あはは、地の果ては困るけど、せっかくだし少し攻略していこうか! 寧々ちゃんも一緒なら心強いしね」


こうして、新装備に身を包んだ「ひより組」と、上野の「人形姫」による、一秒先も予測不能な合同探索が幕を開けることとなった。

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ストーカーvsヤンデレのバトル不可避やん
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