新宿三丁目、新しい装備
ゆるゆると書いてます。
変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。
「『Quest Style』のカメック亀井さんから返信が来たよ」
ひよりがスマホの画面を見つめながら呟くと、拠点に集まっていた面々の空気がわずかに跳ねた。
探索者はもちろん、インフルエンサーや探索者ではない一般人も閲覧しているトレンドメディア――カメック亀井からの返信には、ひよりと透のソロショット、そして「ひより組」としての集合写真をメインに据えたいという熱烈なオファーが綴られていた。
撮影日は今週末。舞台はひより組の予定に合わせた上野ダンジョンで、アポイント済みとのことだった。
「……なあ、透。今の装備も十分かっこいいんだけどさ。せっかく注目してもらえるんだし、ビシッと新調して行かない?」
ひよりが少し照れくさそうに提案すると、透は視線を端末からひよりへと移し、答えた。
「私は今の物でも十分気に入っているけれどね。でも、ひよりんがそう言うなら任せるわ。」
そのやり取りを背後で聞いていた涼たちにも、ひよりは視線を送る。
「涼と鉄はどう?」
「俺たちはこれで大丈夫です、頭。この刀と服が、俺の魂ですから」
涼が淡々と、しかし芯の通った声で答える。
その横で、鉄が「いいな……新しい装備……」と言いたげに、濡れた子犬のような目でひよりを見つめていた。
だが、涼に「な?(分かってるよな?)」と鋭い視線で詰められると、体を縮めてシュンと肩を落とした。
彼ら影の軍団にとって、武器と装備は生み出された時からの「魂の一部」だった。
「とりあえず、金曜日の大学終わりでみんなで見に行こう。透、悪いんだけど二人を新宿まで連れてきてくれる?」
「わかったよ。テッちゃんが迷子にならないように、丈夫な首輪をつけておくね」
「ならないよ!! 透ちゃん、俺をなんだと思ってるの!」
鉄の絶叫が響く中、一行はさっそくネットで装備のトレンドを調べ始めた。
しかし、死線を潜り抜けることには長けていても、Current映えする「ファッション」となると話は別だった。
「……すまない。ファッションの良し悪しは私の専門外だ……」
透が珍しく困り顔で白旗を上げる。
「俺もさっぱりだ。誰か詳しい人に相談できないかな」
ひよりが腕を組んで唸っていると、鉄がパッと顔を上げた。
「姐さんはどうっすか? オシャレだし、職員だから装備の知識もあるはずっすよ!」
「ああ、そうだね!ちょっと連絡してみるよ」
コール音が数回。
落ち着いた女性の声が流れた。
『もしもし……? ひよりさん、珍しいですね。何かありましたか?』
「いきなりごめんね、妃那さん。実は……」
週末の撮影の件、そして「百傑」として恥ずかしくない、かつ機能的な装備を探していることを説明すると、電話越しの妃那が少し楽しそうに笑う気配がした。
『なるほど、そういうことなら……新宿三丁目にある「L’Eminence」というお店がいいと思いますよ。少しお高めですけれど、今のひよりさんと透さんにピッタリだと思います。あそこなら、今の二人に相応しい最高の逸品が見つかりますよ』
「レミネンスだね。ありがとう、妃那さん! 本当に助かったよ」
『ふふ、いえ。ぜひ、新しい装備を見せてくださいね。楽しみにしています』
通話を終えたひよりは、新宿三丁目の地図を画面に表示させた。
歌舞伎町の喧騒から離れた、大人の街。
「よし、決まりだ。金曜日、新宿三丁目で待ち合わせだね」
ひよりの言葉に、透は静かに微笑み、鉄は(自分は買ってもらえないと分かっていても)どこかワクワクした様子で拳を鳴らした。
.........
12月某日。
冬の冷たい空気が街を包み込み始めた午後、ひよりは大学の講義を終え、涼、透、鉄の3人と新宿三丁目駅で合流した。
「みんな、お待たせ! じゃあ、行こうか」
ひよりの呼びかけに、一番に反応したのは鉄だった。
「ボス! ワクワクしますね! どんな装備が見つかるかなぁ」
「テツ、大人しくしろ。……申し訳ありません、ボス。こいつが道中ずっとはしゃいでおりまして」
涼が呆れたようにサングラスの奥で目を細めるが、ひよりはニコニコと首を振った。
「いいんだよ、涼。みんなでお出かけするのは俺も嬉しいしね」
そんな和やかな会話を楽しみながら、一行はナビを頼りに道を進む。
目的地は、妃那が教えてくれた『L’Eminence』。
目の前に現れたのは、ひよりたちが普段通っている新宿の雑多なショップとは一線を画す、静謐で高級感あふれる佇まいだった。
店内には、希少素材を贅沢に使った一点物の防具や、海外のハイブランドが「美と機能」を追求して制作した限定アイテムが、まるで美術品のようにディスプレイされている。
「……ねえ、透。場違いじゃないかな、ここ」
ひよりが思わず声を潜める。
「一応、私だって緊張しているんだ……。ボスのひよりんは堂々としていてくれよ」
知的な透でさえ少し肩を強張らせるほどの煌びやかな雰囲気。だが、そんな彼らに歩み寄ってきたスタッフの対応は、驚くほど丁寧だった。
「いらっしゃいませ。お求めの物がございましたらご用意いたします」
値踏みするような視線は一切ない。ひよりは意を決して、週末の『Quest Style』の撮影の件、そして「今のスタイルを崩さず、より実戦向きで格の高いものを」という要望を伝えた。
その横で、透がこっそりとスタッフに何かを耳打ちしていたが、ひよりには聞こえなかった。
「承知いたしました。では、こちらでお掛けになって少々お待ちください」
促されるまま、ふかふかのソファに腰掛ける3人。対照的に、鉄はキラキラと目を輝かせて店内を見て回っている。
「俺なんか、探索者じゃなかったらただの大学生だからさ。本当に緊張しちゃうよ」
「でも、こうして選んで持ってきてもらえるのはありがたいね。そこから選別していけばいいと思うし」
「そうだね。ドロップアイテムの売却も順調だし……今日は撮影用だけじゃなくて、今後の探索でもしっかり使い込みたいんだ。値段を気にせず、本当に良いものを買いたいな」
「こういうお店は値札が表に出ていないから、計算できないのが怖いのだけれど……。でも、ひよりんがそう言うなら、せっかくだから甘えさせてもらうよ」
少しして、スタッフがいくつかのアイテムを持って戻ってきた。
「お待たせいたしました。お客様には、現在のスーツスタイルを昇華させつつ、機能を極限まで高めたこちらをご用意いたしました。コート、シューズ、そして各種アクセサリーでございます」
ひよりへ提示されたのは、影鋼と魔狼の毛皮が鈍く光る一揃い。
「そして、こちらのお客様(透)には……こちらを。とてもお似合いになると思います。ご試着されますか?」
「……お願いします。ひよりんは、どうする?」
「俺も、お願いしようかな」
二人がそれぞれ試着室へ消えた後、残された涼と鉄は、静かに期待を膨らませていた。
「アニキ、ワクワクするっすね!」
「そうだな。神楽坂14層でのお怪我のこともあった。ここで値は張っても、しっかりとした良い物を装備しておいた方がいいだろう。特に……次は15層があるからな」
「っすね……」
涼の言葉に、鉄が神妙に頷く。ボスの身を案じる二人の前に、先に試着を終えたひよりが現れた。
二人はその姿を見た瞬間、思わずピンと背筋が伸びた。
漆黒の魔狼コートを羽織り、内側には影鋼の防刃スーツと大蜘蛛の魔糸シャツ。
足元には機能美の極致たる影鋼のコンバットローファー。
龍血石のタイピンがワンポイントで紅く輝き、魔蛛絹のネクタイと深魔鉄のラペルピンが、ひよりの持つ「若頭」としての格を完成させていた。
「どうかな……?」
「……とてもお似合いです!」
涼が感嘆の声を漏らせば、鉄は身を乗り出す。
「これにしましょうよ! ボス、絶対にこれがいいっす!」
「三上様、ご要望通りの機能と、撮影映えする質感を両立しております」
スタッフの言葉と仲間の反応に、ひよりは嬉しそうに微笑んだ。
「よし、決めた。……透はどうだろう。楽しみだね」
その時、もう一つの試着室のカーテンが開いた。
「お待たせ。……どうかな?」
そこに立っていたのは、いつもの参謀服ではない。
漆黒の黒曜鳥ケープを纏い、しなやかな影蜥蜴のドレスに身を包んだ、気高き一輪の花のような透だった。
魔糸のビスチェが細い腰のラインを強調し、真理のネックレスと魔銀のピアスが、彼女の知的な美しさを引き立てている。
「…………」
ひよりは言葉を失った。
見惚れる、という言葉すら生温い。
それは涼も、鉄も同じだった。
「ねえ。……何か言ってくれないと困るんだが」
透が少し頬を染めて視線を泳がせる。
「透、これにしよう。今すぐ買おう」
ひよりの即答に、涼が横からボソリと呟く。
「……黙っていれば、こんなに……」
「涼兄! それはどういうことかな?」
「透ちゃん……すごくきれいだよ」
鉄の素直な言葉に、透はパッと表情を明るくした。
「ありがとう、テッちゃん!」
普段、組員以外の人前では絶対にはしゃがない透が、ふわりとドレスの裾を翻して一回転してみせる。
その笑顔は、どんな高価な宝石よりも輝いていた。
会計は、思わず目玉が飛び出るような額だった。
けれど、ひよりは後悔など微塵もしていなかった。
仲間の安全のため、そして何より、このままでいいと言っていた透の、こんなに眩しい笑顔が見られたのだから。
「三上様、白鷺様。……ひより組の今後の探索を、これからも応援させていただきます」
不意にスタッフが深々と頭を下げた。
「えっ、お気づきだったんですか?」
「普段はこのようなお声がけは控えているのですが……。実はファンなもので、つい。申し訳ございません」
「いや、とてもありがたいです! だからこんなにピッタリの物を……。ぜひ、また来させていただきます」
「またお待ちしております」という見送りの声を背に、店を後にする一行。
外の空気は冷たかったが、胸のうちは熱かった。
「これで上野ダンジョンも、しっかり攻略と撮影が出来そうだね。よし、何かごはん食べて帰ろう!」
「賛成っす! 肉がいいっす、肉!」
「テツ、騒ぐなと言っただろう……」
四人は、週末の上野に向けて英気を養うべく、新宿三丁目の街へと消えていった。
■ 三上 ひより Lv.66 (職業:若頭)
HP: 656 / MP: 530
筋力: 325 / 器用: 350 / 耐久: 275
敏捷: 485 / 魔力: 0 / 知力: 345 / 運: 138
影の軍団: 副官・涼 / 参謀・透 / 直参・フウ、ライ、鉄
構成員(ランク:幹部構成員):100名(合計:106名)
【装備アイテム】
武器(銃):
魔銃・銀月 (朔)(筋力+8 / 器用+15)
武器(刀): 名刀・鬼灯 (暁)(筋力+22 / 器用+15 / 火属性付与大)
アウター: 漆黒の魔狼コート(耐久+20 / 敏捷+15 / 運+10)
体: 影鋼の防刃スーツ(耐久+25 / 敏捷+15 / 運+10)
インナー: 大蜘蛛の魔糸シャツ(耐久+15 / 筋力+10)
靴: 影鋼のコンバットローファー (敏捷+20 / 耐久+10 )
アクセ①: 龍血石のネクタイピン(知力+15 / 運+10)
アクセ②: 魔蛛絹のネクタイ(器用+20 / 魔力+5)
アクセ③: 深魔鉄のラペルピン(運+30)
実質ステータス(補正込)
筋力: 365 / 器用: 400 / 耐久: 345
敏捷: 535 / 魔力: 5 / 知力: 360 / 運: 208
スキル: 覇気 Lv.2 / 強欲 Lv.3 / 韋駄天 Lv.2 / メンチを切る Lv.8 / 言いがかり / 因縁をつける / 指切り / 看破 Lv.3 / 盃を交わす / ケツ持ち Lv.8 / 召集 / 散華ノ太刀 / 無音一刀 / 影差し / 絶縁 Lv.1 / 影渡り / ???
■ 白鷺 透(参謀 / 直参) Lv.66 (職業:大参謀)
HP: 300 / MP: 820
筋力: 35 / 器用: 475 / 耐久: 37
敏捷: 35 / 魔力: 487 / 知力: 507 / 運: 100
【装備アイテム】
武器: 魔銃・Alligator (知力+10 / 器用+10 / 魔力+10)
アウター: 黒曜鳥のケープコート(耐久+15 / 魔力+15 / 知力+10)
体: 影蜥蜴のドレス(耐久+20 / 魔力+10)
インナー: 魔糸のビスチェ(耐久+15 / 魔力+10)
靴: 影蜥蜴のブーツ (敏捷+10 / 魔力+10 )
アクセ①: 真理のネックレス(知力+25 / 器用+5)
アクセ②: 魔銀のブレスレット(魔力+20 / 知力+10)
アクセ③: 魔銀のピアス(器用+20 / 耐久+5)
実質ステータス(補正込)
筋力: 35 / 器用: 510 / 耐久: 92
敏捷: 45 / 魔力: 562 / 知力: 552 / 運: 100
スキル: 念波展開 / 戦局解析 / 全域共有 / 戦術転換 / 幻影連絡 / 魔導符解析 / 虚空観察 / 魔弾追尾 / 士気鼓舞
■ 涼(副長 / 直参) Lv.66 HP: 648 / MP: 553 筋力: 328 / 器用: 327 / 耐久: 298 敏捷: 317 / 魔力: 265 / 知力: 318 / 運: 90
スキル: 威圧 / かつあげ / メンチを切る / 精密魔弾 / 抜刀一閃 / 円陣 / 燕返し / 喝 / ???
■ フウ(遊撃 / 直参) Lv.66 HP: 506 / MP: 371 筋力: 293 / 器用: 455 / 耐久: 157 敏捷: 525 / 魔力: 227 / 知力: 147 / 運: 80
スキル: 残影歩法 / 風抜け / 裂風連爪 / 残月爪舞 / 風裂爪 / 乱気裂線 / 暴風 / 疾風天駆
■ ライ(盾矛 / 直参) Lv.66 HP: 1235 / MP: 255 筋力: 620 / 器用: 91 / 耐久: 693 敏捷: 72 / 魔力: 48 / 知力: 91 / 運: 71
スキル: 威圧の構え / 前進防壁 / 地割り / 帯雷の構え / 轟雷撃砕 / 破城 / 雷堅牢 / 轟声喝破
■ 鉄(守護 / 直参) Lv.66 HP: 794 / MP: 313 筋力: 446 / 器用: 350 / 耐久: 458 敏捷: 340 / 魔力: 58 / 知力: 83 / 運: 160
スキル: 威圧 / かつあげ / メンチを切る / 鉄壁の心得 / 身代わり / 誘い込み / 根性 / 双龍旋潰 / 怒り / 鉄心衝断
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