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【悲報】現代ダンジョン時代、俺の職業がLv.1チンピラ【詰み】  作者: 道雪ちゃん


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15層への端緒と、愛の説教

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

 ブッチャー・オーガとの死闘を終えたひよりは、現在のステータスを確認し、深く溜息をついた。


 全身を襲う激しい痛みと倦怠感。


 特にオーガの巨躯を真っ向から受け止めた右腕は鈍く痺れ、頬には避ききれなかった斬撃の痕が刻まれている。


 それでも、今の自分なら次へ進めると、昂ぶる心が足を前へと進ませた。


 ひよりは重い足取りで、15層へと続く階段を下りていく。


 階段の先では、青白く、どこか優しげな光を放つ転移石が迎えてくれた。


 その輝きを視界に入れた瞬間、ひよりの肩からふっと力が抜ける。


「……はぁ。登録完了。……推奨レベルが全く足りてないし、ここからのレベリングは必須だよなぁ」


 登録を済ませながら、先ほど潜り抜けた14層の凄惨な道のりを思い出し、思わずげんなりとした溜息をつく。


 本来ならここで戻るべきだった。


 だが、目の前に伸びる未知の廊下が、ひよりの好奇心を微かにくすぐる。


「ちょっとだけ……本当に、ちょっとだけ覗くくらいなら、大丈夫だよね」


 誰に聞かせているわけでもないのに、脳裏に浮かぶ透への言い訳を口にしながら、ひよりは通路へと足を踏み入れた。


 目に映ったのは、薄暗く、煤けた大理石が敷き詰められた廊下だった。


 大きく豪華な屋敷のような印象を与えるその空間の両端には、誰のものかもわからない肖像画が等間隔に並んでいる。


 その視線が、音もなく動いて自分を追っているような錯覚に陥る。


 ひよりは周辺の状況を探るべく、無意識に【看破】を起動しようとした。


 だが。


「……え、使えない?」


 いつもなら脳内に流れ込んでくるはずの情報が、全く降りてこない。


 魔素の回路が、入り口の境界線でプツリと断たれているような感覚。


 焦ったひよりは、自分の側に仲間を置こうと、影に意識を向けた。


「【召集】」


 構成員を1人呼び、同時に指輪の力を使ってフウとライを呼ぼうとする。


 指輪が淡く輝き、目の前にいつものようにフウとライが姿を現した。


 だが、ひよりの影からは、誰一人として這い出してくることはなかった。


「…………」


 何も起きない影を見つめ、あわあわと慌てるひより。


 それを見て、顕現したばかりのフウとライが、不思議そうに首を傾げた。


「フウくん、ライくん、ごめん! 一度立て直すから戻って!」


 状況が飲み込めないままの2人を、ひよりは慌てて指輪へと戻した。


 ここは、スキルの使用すら許されない死地。


 ひよりはそれ以上の深入りを断念し、逃げるように転移石を起動して地上へと引き返した。



………



 神楽坂ダンジョンの地上階。


 転移門から現れたひよりを、受付の妃那がいつものように迎えようとした――が、その顔が瞬時に強張った。


「おかえりなさい! って、その傷!! 大丈夫ですか!?」


「ただいま……。14層を踏破してから、15層の入り口まで行ったんだけどね……」


「喜びたいところですが、心配でそれどころではありません!」


 妃那は仕事中という立場もあり、溢れそうな心配を押し殺しながらも、手元のスクリーンを操作して『14層踏破』の文字を映し出した。


 周囲からはどよめきと歓声が上がるが、ひよりの顔は晴れない。


「ありがとう……。14層のボスが結構強くてね。でもそれより、15層を覗いたんだけどかなり厄介でさ」


「何があったんですか?」


「……あの階層、たぶんスキルが使えない。肉体と経験だけで攻略するしかないんだと思う」


 妃那の表情がさらに深刻さを増す。


 それは探索者にとって、魔法やスキルという「翼」を奪われるに等しい宣告だった。


「……ってことは、今までと違うスタイルで、自分の力のみで討伐しないといけないんですね……」


「うん。ただでさえ推奨レベルには届いてないからね。これは透に相談して、遠征を続けてレベリングかな」


「そう……ですね。15層からは難易度が上がると聞いてましたが、まさかうちのダンジョンがこんなに難しいとは。……とりあえず、早く怪我の治療をしてください!」


「ごめんね! じゃあ……透に怒られてくるよ」


 ひよりは苦笑いを残し、最大の難所である「透の待つ拠点」へと向かった。



………



 玄関の扉を開けると、そこには優雅に、けれど凍りつくような「アルカイックスマイル」を浮かべた透が座っていた。


 彼女の視線が、ひよりの頬の傷と、痛みを庇うように固まった右腕に止まる。


「ひよりん、その頬の傷と庇ってる右腕……成果はどうだったんだい?」


 ひよりは反射的に、床へ正座した。


「ご、ごめんね……。ほら、やっぱり試したくなるじゃん……」


「透……。たしかにお怪我も心配だが、ボスも反省されてるんだ、もういいだろ」


 傍らに立つ涼が助け舟を出そうとするが、透の視線が鋭く彼を射抜く。


「涼兄は黙ってて! 私はどうだったと聞いているんだよ、ひよりん」


「……うん。鬼灯の火属性の効果範囲も広くなって、性能もすごくよくなったよ」


 そのやり取りを、背後で鉄がビクビクしながら見守っている。


 透は一度溜息をつくと、核心に踏み込んだ。


「それはよかった。で、どこまで潜った?」


「14……」


「は!? 組員は何人つけた?」


「えぇ……ソロ……」


「ぼ、ボス! それは……!」


 透と涼が同時に絶句し、揃って頭を抱えた。


「君は『安全第一』と常日頃から言ってるよね? その君がソロで突っ込んでどうする! フウもライもいたはずだろう!」


「ごめんなさい……。ちょっと一人でってことしか頭になくて。あ、そうだ! 15層のことなんだけどさ……」


「そんなところまでソロで行ったのかい!?」


「ボス……」


 鉄も情けない声を出すが、ひよりは姿勢を正して真剣な面持ちになった。


「ちょっと待って! これはみんなに相談したかったんだ。15層は、スキルが使えないんだよ」


 その言葉に、透の空気が一瞬で「参謀」のそれに切り替わった。


「……。まぁ、一旦話を聞こう。なんでわかった?」


「転移石を登録して、通路だけチェックしようと思って進んだんだ。情報を集めたかったから『看破』を使ったんだけど、使えなかった。それで『召集』で構成員と、指輪からフウくんとライくんを呼んだんだ」


「……だけど、構成員は呼び出せなかった、ということだね。フウとライは?」


「2人は指輪の効果だから、呼び出せたよ」


 透は顎に手を当て、即座に戦力を再計算する。


「なら、15層は涼兄と鉄、それに構成員たちは不参加。フウとライは参加。あとは、私か」


「透は影から生み出された存在じゃない。人間としての直参だから、きっと大丈夫だろうな」


 涼の言葉に、透も頷く。


「ええ。でも確かめてみないとね。……スキルが使えない。これは経験とステータスで殴るしかないんだ」


「挑戦するなら、しっかりレベリングした後だね」


「わかった。持ち帰ってくれた情報はありがとう。ただ、ソロで潜ったことについてはお説教だね」


 透がゆっくりと近づき、ひよりの前に屈んでその目を覗き込む。


「私たちの大切なボスがケガをしてるんだ。理解できるまで話そうね?」


「あ、はい……」


 ひよりの返事とともに、そこからたっぷりと時間をかけた、透による「愛の説教」が神楽坂の空に響き続けた。



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― 新着の感想 ―
14階で構成員出してそのまま15階行ったら消える感じ?
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